2015年より4マス媒体
(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)
の広告費は前年割れ続けており、
相対的に影響力が弱まってきています。
一方、ネット広告の成長率は年10%~20%で、
2019年の広告費はテレビの広告費を
上回るまでに成長しました。
しかし、皆さんの中には
「ネット広告って具体的に何?」、
「ネット広告の仕組みがわからない」
と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はネット広告の仕組みから特徴、
種類や重要な効果指標までわかりやすく解説していきます。
是非参考にしてください。
ネット広告の仕組み
まず、私たちがブラウザで
各ウェブサイトにアクセスすると、
ブラウザはウェブサーバー
(ページを表示するために必要な情報を格納している場所)
に対して「ページを表示して」とリクエストを送ります。
それを受けたウェブサーバーが
ブラウザに対してHTMLファイル
(ページを表示するために必要な情報)
を送信することで、
私たちはページ内のコンテンツを
見ることができるわけです。
この時、ページ内に広告枠がある場合は、
アドサーバーと呼ばれる
広告を管理しているサーバーに対しても
「広告を表示して」とリクエストが送られます。
それを受けたアドサーバーが
ブラウザに対して広告を配信することで、
広告がページ上に表示されるという仕組みです。
前述のウェブサーバーはアドサーバーに対して、
ページのコンテンツを表示させる役割であることから
コンテンツサーバーと呼ばれることもあります。
ネット広告の特徴
①低コストで始められる
テレビCMや新聞広告を出稿するためには、
何百、何千万はたまた何億円とコストがかかってきます。
しかし、ネット広告では
あらかじめ予算を設定することができます。
課金方法はいくつかありますが、
後述の「アフィリエイト広告」の場合は
「成果報酬型課金」が多く用いられます。
成功報酬型とは、事前に広告主が設定した成果
(「その広告を通じてその商品の購入に至った」など)
に対してのみ課金されるので、
想定外の費用が発生することはありません。
限られた予算からでもスタートできるのが特徴です。
②リアルタイムデータを取得できる
マス4媒体の場合、
実際に何人が視聴したのかを正確に知ることは困難です。
しかし、ネット広告では
「どれだけのユーザーがその広告を見たか」
「そのうちの何人がその広告をクリックしたか」
などをリアルタイムで確認することができます。
もし想定していた人数がクリックしていなかった場合、
すぐに修正を加えて改善することもできます。
③詳細なターゲティングができる
私たちがブラウザを訪問した時、
Cookieと呼ばれる私たちの情報
(IDやパスワード、訪問回数など)
がブラウザ内に保存されます。
ネット広告はそのCookieを利用することで、
各個人に最適な広告を表示できます。
その人の性別や年代、
閲覧しているページから関心ごとを推定して
ターゲティングができるわけです。
これにより、より効率的な広告出稿が可能となります。
ネット広告の種類
ここからはいくつかのネット広告をご紹介します。
今回紹介する広告だけが全てではないので
「更に詳しく知りたい!」という方は、
他の記事を参照しながら理解を深めていってください。
1. リスティング広告
リスティング広告とは検索結果の上部に、
ユーザーが検索したキーワードに連動して掲載される広告です。
この特徴から「検索連動型広告」とも呼ばれます。
課金は「クリック課金制(CPC)」用いられており、
ユーザーがその広告をクリックするたびに広告主に課金される仕組みです。
掲載順位はオークション形式で、
自身で設定する「入札単価」と
キーワードとの関連性やランディングページの品質など
「広告の品質」の掛け合わせによって順位が決定されます。
■リスティング広告メリット■
✓誰でも簡単に始めることができ、お金をかければ検索結果上位に広告が表示される
✓1,000円程度からでも始められる
■リスティング広告デメリット■
✓広告費を投下し続けないと、掲載され続けない
✓「広告」だと認識され、ユーザーが関心を向けない可能性がある
2. SEO(Search Engine Optimization)
SEOはネット広告ではありませんが、
リスティング広告と度々比較されます。
SEOは「検索エンジン最適化」と訳され、
自サイトが検索結果の上位に表示されるよう
サイトを最適化していくことです。
リスティング広告が有料であることから
「有料検索」と呼ばれるのに対し、
SEOは「自然検索」
(検索結果にリスティング広告以降表示されるもの)
と呼ばれることもあります。
”自然”検索なので、リスティング広告のように
費用がかからないのが特徴です。
掲載順位は検索エンジンのアルゴリズム決定され、
Googleであれば専門性、権威性、信頼性を最重要視されます。
具体的に言うと、
「ユーザーに有益なコンテンツを提供しているか」
「ページスピードは早いか」
「外部サイトから被リンクされている数が多いか」などが挙げられます。
■SEOのメリット■
✓一度検索結果上位に表示されれば、維持コストほぼゼロでユーザーにリーチできる
✓広告ではないので、ユーザーのクリック率が広告よりも高い
■SEOのデメリット■
✓成果まで時間を要し、競合がいればさらにハードルが上がる
✓検索エンジンのアルゴリズムに左右される(コントロールが効きにくい)
3. アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは成果報酬型です。
他の広告は認知を目的としたものが多いのに対し、
アフィリエイト広告は広告主が設定する成果
(商品の購入や資料請求、会員登録など)を目的とします。
仕組みは、広告主に代わって
アフィリエイターと呼ばれる人たちが
自身が運営するメディアに広告を掲載します。
そのメディアに訪問したユーザーが
アフィリエイト広告を通じて
広告主が設定した成果を達成した場合に
アフィリエイターに報酬が発生する流れです。
一般的に、広告主とアフィリエイターとの間に
ASPと呼ばれる事業者が仲介に入ります。
広告主がASPに広告を出稿し、
アフィリエイターがASPにある広告の中で
紹介しやすい広告を選択する構造です。
■アフィリエイト広告のメリット■
✓明確な成果に対して費用がかかるので、費用対効果が高い
✓アフィリエイターへの報酬額は事前に決まっているので費用をコントロールしやすい
■アフィリエイト広告のデメリット■
✓アフィリエイターに選ばれない限り、広告が掲載されない
✓自社が望まないサイトに広告が掲載される恐れがある
4. アドネットワーク
アドネットワークとは、
莫大な量の広告枠が集まった広告配信ネットワークです。
広告主はアドネットワークに入札することで
多数のWebサイトに一括で広告を配信できます。
掲載順位は設定した入札価格による
オークションで決定され、
課金は「クリック課金制(CPC)」や
「CPM(1000インプレッション単位の課金)」が用いられます。
代表的なアドネットワークに
「GDN(Google ディスプレイネットワーク)」や
「YDN(Yahoo! ディスプレイアドネットワーク)」があります。
■アドネットワークのメリット■
✓多数のサイトに掲載してくれるので、掲載依頼の時間を省ける
✓多くの露出量が見込める
■アドネットワークのデメリット■
✓ブランドイメージを損ねるサイトに掲載される恐れがある
✓純広告(直接販売)で売れ残った枠に掲載されることが多いので、魅力的な広告枠が少ない
5. SNS広告
SNS広告とは
FacebookやTwitterといったSNS上で配信する広告です。
各SNSが持つ特性
(Facebookは実名制、Twitterは拡散性など)
を活用して広告を配信することができます。
掲載順位は基本的に入札単価や
広告の品質の掛け合わせによって決定されます。
■SNS広告のメリット■
✓ユーザー情報や行動履歴が集まっているので詳細なターゲティングができる
✓シェア(共有)などの2次拡散が期待できる
■SNS広告のデメリット■
✓各SNS毎にユーザー属性が異なるので商品によってはマッチしない可能性がある
✓コンテンツと並べて見られるため、目を引くものではないと素通りされてしまう
ネット広告の重要指標
ここではネット広告において
頻繁に用いられる重要な指標をご紹介します。
この他にも多くの用語あるので
気になった方はぜひお調べください。
IMP(Impression): 広告が表示された数
CPM(Cost Per Mille):1,000IMPあたりの広告費用(広告費用÷IMP×1,000)
CL(Clicks):広告がクリックされた回数
CTR(Click Through Rate):表示された広告に対してクリックされた割合(CL÷IMP)
CPC(Cost Per Click):クリック1回あたりの費用(広告費用÷CL)
CV(Conversion):資料請求や商品の購入など広告で達成したい最終成果
CVR(Conversion Rate):クリックされた広告に対してCVした割合(CV÷クリック数)
CPA(Cost Per Acquisition):CV1回あたりの費用(広告費用÷CV数)
CPI(Cost Per Install):1インストールあたりの費用(広告費用÷インストール数)
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ネット広告市場の今後の動き
ネット広告の強みはターゲティングができることでしたが、
今後この強みを利用できない可能性があります。
2020年6月23日にAppleが
iOS14ではIDFA(各デバイスのID)取得を
オプトイン方式に変更することを発表しました(開始時期は2021年以降)。
IDFA取得を拒否されれば、
IDFAを元にターゲティングしていた広告は配信できなくなります。
また、Googleも2022年頃には
「3rd party cookieを廃止する」と発表しており、
今後のネット広告市場は雲行きが怪しいです。
日々最新情報をキャッチアップしていくことが
今後意思決定をする上で重要になってくるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ネット広告は4マス広告にはない特徴をもっており、
うまく活用することができれば広告の幅も広がることでしょう。
今回ご紹介したネット広告以外にも様々な種類があります。
自社にとって最適なネット広告を見極め、
是非活用していってください。
【ライター】
下境田 直也
株式会社 Urth 代表取締役
大学では経営学を専攻。2018年の1年間はアメリカオレゴン州へ留学。帰国後の2019年には、文部科学省が運営するアントレプレナー育成事業の一環であるGapFundProjectにおいて最高評価および支援金を受け、代表取締役として起業。現在は、フリーランス活動を支援する事業を軸に会社活動を行っている。
【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師
大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。