テストマーケティング 手法

テストマーケティングとは

テストマーケティングと聞くと、大企業ばかりが行っている施策という印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、インターネットが発達した現代では、小さな企業でも実践できる施策です。

そもそも、テストマーケティングとは、試験販売のことです。

新商品・サービスをリリース前にユーザーに利用してもらい、反応を見たり、事前にLTVをはかることなどが主な目的となります。

LTVとは、ライフタイムバリューを略したもので、あるお客さんが、取引を開始してから終了するまでの期間に、自社に対してどれだけ利益をもたらしたか、収益の総額を算出するための指標です。

また、WEB広告をテストマーケティングで打つことで、広告の費用対効果を知ることもできます。

事前に、小規模な投資でテストマーケティングを行うことで、軌道修正が可能となります。

予測が立てば、売れない商品の大量生産、それに伴う在庫超過といったリスク回避にも繋がります。

なぜテストマーケティングが必要なのか?

なぜテストマーケティングが必要なのか

テストマーケティングを行う大きな理由として「プロダクトマーケットフィット(PMF)」が挙げられます。プロダクトマーケットフィットとは、その言葉の通り「商品やサービスをお客様から購入され使われる状態を目指して試行錯誤すること」を言います。テストマーケティングを行うことでプロダクトがマーケットにフィットするか検証するのです。

また、テストマーケティングを行う利点は、事前に投資規模を決めることができるからです。次の四つの点に分けて利点を解説します。

客観的な判断材料

テストマーケティングでは、良いレビューやクレームなど生の声も聞こえてきます。

その結果は後の計画に影響し、客観的な改善策を打つことにつながります。

webのアクセス状況やページでの滞在時間などからでは、そもそもニーズがあるのかなどがわかります。また、商品として狙ったユーザーに響く形となっているのかどうかもテストマーケティングで客観的に判断することでできます。

また、テストマーケティングを通して得たデータは、机上の空論を打破します。鉛筆なめなめやExcelで書いただけの事業計画ほど、不確定要素が強い計画はありません。テストマーケティングで得たファクトベースで計画を立てた方がよりリアルになります。

リスク軽減

テストマーケティングの大きな利点は、小規模な投資で判断ができるところです。テストマーケティングをせずに、詳細までガチガチに計画して 、上手く販売成績が上がらなければ、問題点を洗い出し、軌道修正するのに時間がかかってしまいます。そうなってしまっては、取り返しがつきません。

そもそものニーズがあるのかどうかを、小規模に調べることで、大きな損失を防ぐことにつながります。

ターゲットの明確化

テストマーケティングを行うことで、明確なターゲットを決めることができます。例えば、商品がどの年齢層にウケるのかであったり、広告は顕在層、潜在層、コア層など、どの層までサービスや商品が受け入れられるかなど、大きな予算を割いて動く前に狙うべきターゲットを見つけることが可能です。

販売・生産計画を行うため

事前に、ターゲットの明確化ができれば、それを元に明確な販売・生産計画を立てることができます。ターゲットに対して、集客を行った際に、どれくらいの購入が見込まれるかを正確に把握しておくことで、在庫量を適切な量とする生産計画を立てることができるようになります。

テストマーケティングを行うことで、大きな投資を実行する際の、客観的で明確な指針を得ることができるのです。

テストマーケティングの手法

どのようにテストマーケティングをおこなうのか

オフライン

オフラインでのテストマーケティングは、大きい企業やすでに幅広い販売網をもっている企業が行うのが一般的です。

例えば、ヤクルトを売っている人がヤクルトと一緒にウォーターサーバーも販売するように、大きな販売網や顧客に接触する機会も持っている企業が、行える施策です。

大まかには次の3つの情報があります。

  • ポップアップストア
  • モニター調査
  • 会場調査

ポップアップストア

期間限定のショップを開設し、全国規模で販売するような商品を販売することで、店舗でのモニタリングができます。地域を限定して小規模で行い、時期は本番に近い必要があり、近いほど精度が上がるといわれています。

モニター調査

新商品のサンプルを使ってもらいフィードバックを収集する方法です。化粧品やサプリなどでよく使われている調査方法です。

アンケートやインタビューを使って、モニターからフィードバックを得ることができます。

商品への生の声を多く集めることができる手段となります。

会場調査

調査対象を指定の会場に集めて、アンケートやインタビューでヒアリングする手法です。

一回で同時に多くの反応を集められるので、企業にとっては、非常に効率のいい集め方となります。さらに、インタビュー形式ならば、より細かいフィードバックを得ることも可能です。

ここでは、オフラインのテストマーケティングの方法を紹介しました。どの手法でも、数百人~数千人に行う必要があるので、オフラインでは大規模になりがちだといえるでしょう。

オンライン

オンラインでのテストマーケティングは、テストセールスに近いものです。既に、売り出している商品だけでなく、まだ売り出していない商品も、インターネット上で試し売りする事ができます。次の3つの方法があります。

  • 検索広告
  • SNSでのバナー広告
  • クラウドファンディング

検索広告

広告 テストマーケティング

検索広告は、GoogleやYahooで検索した際に表示される広告のことです。

※以下写真参照

検索広告の仕組みとして、ユーザーが検索した際に、検索結果として広告が表示されるため、情報取得モチベーションが高い方に情報を届けることができます。広告の最低出稿額はなく1円から掲載可能で、課金形態は広告のクリック課金となります。そのため広告が表示されるだけではお金はかかりません。また、設定したキーワード、実際にユーザーが検索した検索語句、表示された広告文、検索デバイス、時間帯、曜日など、あらゆる指標のデータを取得することができます。

その中でも特に「実際の検索語句」はユーザーのリアルタイムのニーズそのものであるため、ユーザーアンケート情報よりも自然な1次情報ともとらえることができます。ターゲットにしている層を見つけ、その人たちが検索しそうなワードの検索ボリュームを確認するだけで、ニーズがそもそもあるかなどの確認もできます。実際にテストマーケティングすることで、検索の量はあるのに、興味を持ってくれていないのか、そもそも検索されていないのかなどがわかります。

SNS広告やディスプレイ広告

ヤフー広告 テストマーケティングFacebook広告 テストマーケティング

SNS広告やディスプレイ広告でテストマーケティングをすることもできます。SNS広告やディスプレイ広告は次の写真のようなものです。

このような広告は、検索広告と違ってニーズが顕在化していない(=検索という行動に至らない)ユーザーに対して訴求する際に有効です。

ですので、まだ類似サービスが世にない場合や、新しいビジネスモデルなど、希少性の高いサービスのテストマーケティングを行う場合は有効に機能します。

クラウドファンディング

また、クラウドファンディングでもテストマーケティングは可能です。

クラウドファンディングとは、サービスや商品の魅力を伝え、商品開発段階で資金を調達する方法です。お金を集めることで、商品を一緒に作り上げるような体験を投資した人は感じることができます。この資金の集まり方で、そもそも商品がターゲットとしている層に求められているのかといった情報がわかります。

また、クラウドファンディングの場合、支援者から資金を集めておこなうので、長期的な企画となることに注意しましょう。

小さな会社のテストマーケティングはオンラインでやろう!

オンライン テストマーケティング

オフラインでのテストマーケティングは、すでに幅広い販売網を持っているような企業が行うことができる、比較的大規模な施策です。

その一方で、オンラインでのテストマーケティングは、少額の投資で始められ、商品力を確かめられる施策ですので、スモールスタートでのテストマーケティングはオンラインで行うのがお勧めです。

オンラインでのテストマーケティングはどうやるの?

オンラインでのテストマーケティングの手法を、ご紹介します。まず、オンラインでのテストマーケティングのゴールは、広告の費用対効果を知ることや商品自体に需要があるどうかを調べることです。それらを調べるために、オンインでのテストマーケティングでは、次の手順で行います。

  1. 課題を明確にする
  2. 顧客層を分析する
  3. 具体的な打ち手と想定結果をプランニングする
  4. WEB広告を配信し、その結果を把握する
  5. 広告結果を元に分析し、次の施策につなげる

この5つの手順で、調べたい指標を得ることができます。

ここからはそれぞれの手順をより詳しく見ていきます。

1.課題を明確にする

オンラインでのテストマーケティングをする際にまず気をつけるのは、どのような課題があり、何を解決するためにテストマーケティングをするのかという目的を明確にすることです。

例えば、テストマーケティングを利用する目的としては「継続的なお客さん」すなわち、特売時やテレビに取り上げられたとき、話題になっている時のみで購入するお客さんではなく、日常的に購入してくれるお客さんをみつける事が上げられます。

2.顧客層を分析する

マスメディアでの広告や露出によって、一時的な売り上げは出ても継続客がなかなか増えないといった状況の商品の場合、つぎのようにテストマーケティングを進めます。

まず、商品の分析をし、顧客層などの特徴をみつけます。

その上で、顧客層を、コア層、顕在層、準顕在層、潜在層の四段階に分類します。

次に、ターゲットの層の検索方法を分析します。たとえば、webの検索方法でも、各ターゲット層で次のような違いが出てきます。

商品名が”シャリシャリイチゴ”というイチゴシャーベットの場合

【各ターゲット層の検索キーワード例】

コア層:商品名、店名(イチゴシャリシャリ等)

顕在層:露出したメディア名+商品カテゴリー(メディア名+イチゴシャーベット等)

準顕在層:商品カテゴリー(イチゴシャーベット、フルーツ+シャーベット等)

潜在層:さらに大きな枠での商品カテゴリー(シャーベット、フルーツ+飲み物等)

3.WEB広告を打ち、CV(コンバージョン)を見る

顧客層の分類が出来たら、次はweb広告(検索連動型広告)を打って、各ターゲットごとに300件ずつアクセス数を集めます。

大体300件ほど集めると、CV数(コンバージョン数)が見えるので、ここで広告の費用体効果を見ることができます。

広告の費用対効果がわかれば、後は売り上げとの比較をして、継続的なお客さんを獲得するためにどのターゲットにどれくらいの広告をするかを決めることができます。

BtoB商材のテストマーケティングで気を付ける事

BtoBでは、そもそも世の中の人がweb上で求めているものなのかどうかをチェックする必要があります。そのために、サービスや商品に関連する検索ボリュームを調べます。

これをすることで、そもそもweb上で顧客を獲得できるのかが分かります。

また、BtoBのサービスの場合、一つのサービスで全てのことが解決できるように見せてしまい、かえってどの特徴も強調できていないといった問題が起こりがちです。

そのため、ターゲットに打ち出したい強みを整えることが必要になります。打ち出したい強みを整えることで、ターゲットに伝わりやすくなり、web上でのテストマーケティングや販売にも効果が出てきます。

また、想定しているペルソナ、ニーズがあると思われるユーザーに情報が届いているのに、問い合わせにつながらない場合は、商品自体を見直す必要もあります。テストマーケティングをすることで、商品力を測り、大規模な投資をする前に、事前にチェックをすることでリスクを回避することもできます。

テストマーケティング自体のやり方はtoCの時と同様です。

例えば、WEBサイト制作会社を考えてみましょう。今回、新機能のテストマーケティングをしたいとしましょう。

このサービス名は”easy&speedy WEBcreate”と言います。商品特徴は「簡単に早くwebページができる」という機能の場合、次のように分類ができます。

コア層:企業名、サービス名

顕在層:狙ったニーズ+商品カテゴリー(簡単、きれい+サイト制作)

準顕在層:商品カテゴリー(サイト制作)

潜在層:さらに大きな枠での商品カテゴリー(サイト,ランディングページ等)

分類をしたら、次はweb広告を打って、各ターゲットごとに300件ずつアクセス数を集めます。

大体300件ほど集めると、CV(コンバージョン)がわかるので、商品力の評価も可能となります。

初めて行う人へのアドバイス

テストマーケティングを初めて行う人へのアドバイスを記載します。次の3点がそのアドバイスです。

  • 目的を明確に
  • 予算をしっかり決める
  • クリック先に何を置くかよく考える
  • LPは長いことがよいのがほとんど

ここからは、それぞれを細かく見ていきます。

まず、テストマーケティングをする際は、まず目的を明確にすることが重要です。

自社の商品がどういった状態で、なんのためのテストマーケティングをするのかによって調べることが変化します。

まず、既存のネットマーケティングでは売り上げが出ていて、さらに売り上げをのばしたいのが前提となります。そこから、広告費用をきめるためにテストマーケティングをするなど、明確な目的があることで、テストマーケティング内で行うことが決まります。

予算をしっかり決める

テストマーケティングでの予算は、市場とクリック数から計算しましょう。ターゲットの分類を行い、それぞれの層にそのような検索ワードでweb広告を届けるかが決まりと必要な費用が出てきます。

クリック先に関して

web広告やバナー、SNSでの広告など、様々なツールで宣伝はできますが、クリックした後はどのようなページに飛ばすのが良いでしょうか。基本的には、LPが多いです。市場感の把握では、Facebookでリード獲得広告を出して、そこでの資料請求数をチェックすることも可能です。

LPの長さに関して

長いものや短いものなど、様々ありどれが良いかを明確に出すことが難しいですが、LPの長さは何を基準に決めるのが良いのでしょうか。

一般的なサービスは、長いLPで良いそうです。1ページで情報が伝わるものは、すでにあるサービスの代替サービスで、すでにあるサービスの課題もターゲットに明確になっているもののみです、日本ではゲーム市場くらいだそうです。


今回は、テストマーケティングを行うに当たっての具体的なやり方や効果を特集しました。

一見難しそうな、テストマーケティングもインターネットの普及に伴い、比較的安価に非常に有益な情報を集めることができることがわかります。

今回の記事を参考に、テストマーケティングを実際の経営に取り入れていってみてはいかがでしょうか?


【ライター】
田中 大貴
株式会社 Urth 代表取締役CEO

大学では、建築学を専門としながら、2018年4月からは早稲田大学で「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を受講。 その後、文科省edgeNextプログラムの一つである、早稲田大学GapFundProjectにおいて2019年度の最高評価および支援を受け、起業。 早稲田大学建築学科では、株式会社エコロジー計画とともに、コンサートホール、宿泊所の設計、建設に取り組んだ。現在は、「〇×建築」をテーマにwebサービスの開発、営業から、建築の設計及び建設物の運営に関するコンサルタントまで幅広い事業を行う。


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