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経営戦略とは?
~優れた経営戦略を立てる3つの基本~
定義・種類・フレームワークをご紹介
代表取締役社長
「経営戦略とは?」
「社長として何をすべきなのか?」と自問したときに、多くの社長の頭に思い浮かぶのが「経営戦略」だと思います。
「経営戦略」の重要性は、多くの社長が理解しています。
しかしながら、「経営戦略とは何か?」「経営戦略は何を考えるべきか?」と質問された時に、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか?
本レポートは、数千社という経営と数千人の社長の現実と趨勢を見てきた私たちが、「経営戦略」についてまとめたものです。
「経営戦略」は内容は多岐に渡りますが、忙しい社長のために、なるべくシンプルにまとめました。一つの考えとして参考にして頂ければ幸いです。
経営戦略とは?
経営戦略の定義
「経営戦略」という言葉は、私たち経営者にとって最も使う頻度の高い言葉の一つです。しかし、「経営」という言葉と同じく、曖昧に使われていることが多いです。そして、それが多くの経営が失敗する原因にもなっています。
ですから、「経営戦略(英語ではManagement strategy)」という漠然と使っている言葉をハッキリと定義しておきましょう。しかしながら、学術的な網羅性を重要視し過ぎて長くて分かりにくい定義になってしまっても、実践者である私たち経営者には使いにくいです。簡潔な定義をしておきましょう。
経営戦略とは「勝ち方」です。
あなたの会社の勝ち方を決めていくということです。
また経営戦略は、下記の図のように「目的と手段」で考えると分かり易いです。
あなたの会社にも目指すべき方向(目的地)があると思います。
経営戦略は、その目的地に無事に到着するための「手段」や「方法」です。
企業やビジネスが市場の中で、成功するための手段や方法(=勝ち方)を考えることであり、それらを社内における最上位の方針として明確にすることが、経営戦略を立てるということです。
経営戦略の3つの方向性と重要性
経営戦略3つの方向性
戦略は、ある目的を目指して、それを実現させるために必要な方法や方針を決めることですから、その「目的」は重要です。
目的地を、どこに設定するかで戦略は変わります。
経営戦略を考えるとき、全ての会社で「3つの目的地」が考えられます。
<3つの目的地>
① 生き残ること
② 市場で優位な存在であり続けること
③ 自社が望む理想の状態になること
この①から③の間のどこかに、目的地はあるはずです。多くの資本を集め、リスクが高くても急成長を求められるベンチャー企業でない限り、最初に大切なのは、①の「生き残っていくこと」です。
ビジネスという世界は、成功すれば素晴らしい活動ですが、毎年、法人だけで10万社近くが廃業していくという厳しい世界でもあります。
何もしていないと、その10万社のうちの1社に簡単になってしまいます。
会社は、簡単に無くなるのです。
ですから、経営戦略の最初の方向性は「生き残り」であるべきです。
経営戦略入門だという方は、「生き残り」を考えましょう。
もちろん、②の「市場で優位な存在であり続けること」や③の「自社が望む理想の状態になること」も大切です。しかしながら、それらは生き残っているからこそ達成できることですから、①を経営戦略の方向性の基本として考えておくべきです。
私たちが数千社という会社と数千人という社長と接してきた中で強く感じることの一つは、多くの会社は「守りが弱い」ということです。
この守りの弱さが、10年以上継続する会社が少ない大きな原因の一つになっています。ですから、①の「生き残ること」は守備的で華やかではないですが、会社を継続させていくために社長が考え続けないといけないことだと理解して頂ければと思います。
無料レポート「生き残る会社をつくる”守り”の経営」も参考にしてみてください。
経営戦略の重要性
会社における全ての活動は、経営戦略をベースに行われます。
ですから、それが間違っていたら、多くのアクションが無駄になります。経営資源も無駄に使ってしまうことになります。
会社に関わる全ての人のアクションが間違った方向への努力で「それらが全て無駄になるとしたら?」 経営戦略を間違うと、その状態になるということです。
少しでも正解に近い戦略を立てられないと、会社は多くの失敗を繰り返した果てに、疲弊して資源を失い、廃業せざるを得なくなっていきます。
ですから、経営戦略は会社経営において、また「社長の仕事」としても、致命的に重要なのです。
優れた経営戦略を立てるために必要な3つの基本
経営戦略は、誰でも立案することはできます。
単なる勘でも、思いつきでも、できます。
しかし「それが正しい戦略なのか?」「有効な戦略なのか?」というと話は全く変わってきます。
経営戦略は未来を作っていくために「こうやったら上手くいくだろう」という「仮説」でもあり、残念ながら100%正しい戦略は存在し得ませんが、私たち経営者は少しでも有効な戦略を立案する必要があります。
それが会社の命運を握っているからです。
有効な経営戦略を立てられるようになるためには、下記の3つのことが必要です。
【優れた経営戦略を立てるために必要な3つの基本】
(1)経営を知っていること
(2)実行と検証
(3)定石を知ること
これらを一つずつ見ていきましょう。
(1)経営を知っていること
経営における戦略を立てるわけですから、経営のことを知らないで効果的な戦略を立てられるハズがありません。
そう言われると「それは当たり前」だと感じると思いますが、現実は違います。
実は、驚くほど多くの経営者は、経営のことを知りません。経営のことを真剣に学ぼうとしません。そして、当たり前のように失敗していきます。
有効な経営戦略を立案していくことは、「社長の仕事」として最も重要な仕事の一つですが、そもそも経営を知らないと、有効な経営戦略など立てることはできないのです。
ですから、「経営を知っていること」「経営を学ぶこと」は、あなたが失敗するのを避けるために必要なことです。
ここで注意していただきたいのは「経営戦略のフレームワーク」をたくさん学べばいいというわけではないということです。経営戦略のフレームワークは戦略を立てる上では効率的で役に立ちます。しかし、「経営を知る」というは現場の行動を含めた企業活動を知ることです。
経営の全体像を簡単に理解して頂けるように、「経営の要素と構造」を、無料レポート「 経営とは何か? 」〜 経営の要素と構造 〜で説明していますので、参考にしてみてください。
(2)実行と検証
経営戦略は未来を作っていくための「仮説」ですから、最初から100%正しい戦略を立てられることは現実的ではありません。
あなたの会社が勝ち続けるための方程式は、そんなに簡単には手に入りません。
試行錯誤を繰り返しながら、微調整を繰り返す必要があります。
特に軌道に乗る前は、ピボットと呼ばれる「調整」を繰り返す場合がほとんどです。
もちろん、掲げた戦略を簡単に諦めるようではダメですが、十分にアクションをしてみて、それでも成果が出ないようであれば、しっかり検証をした後に、戦略の練り直しをしていくことが必要です。
そうやって、実際のアクションと検証と微調整を繰り返して、正しい戦略に近づいていきます。
このあたりのことは、経営者にとっては、とても重要なことなので、詳しく説明します。
(3)定石を知ること
会社の「勝ち方」には定石があります。
囲碁や将棋の天才たちも、まずは、この定石(定跡)から学びます。
『定石』とは、囲碁の世界で「昔から研究されてきて最善とされる、決まった石の打ち方」を言います。将棋の世界でも同じ読み方ですが、『定跡』として「昔から研究されてきて最善とされる、決まった指し方」のことを言います。
これらが転じて「物事をするときの、昔から研究されてきて最上とされる方法・手順」のことを『定石』と言うようになりました。
ビジネスの世界も、これだけ世界中で実践が行われている活動なわけですから、『定石』はあります。
しかし、ビジネスの定石を知っていて、ビジネスを始める社長は少ないです。
当然、有効な戦略を立てられずに、失敗していってしまいます。
それらを知らずに失敗していくのは、本当に勿体ないことだと心を痛めることが多いです。しかし、なかなか、その現状は変わりません。
多くの社長が、あまりにも「ビジネスの定石」や「経営のことを知らない」ことに驚かされ続けてきているので、なぜ「社長がなぜ学ばずに失敗していくか?」の原因を研究し続けてきました。
それらの研究成果は、本レポートとはテーマが少しズレてしまいますが、経営を進める上で理解しておくと長期的に有益なので、無料レポート【なぜ社長は「経営を学ばない」まま失敗していくのか? 〜10の原因とメカニズム〜】を読んで参考にしてみてください。
定石とは、多くの人が挑戦して、血と汗を流しながら努力を繰り返して、失敗の山を築きながら得た「勝ち方の王道」のようなものです。
次章で多くの会社に適応する定石を見ていきましょう。
失敗する会社が知らない「定石」
「敵を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
ナポレオンも座右の書にしていたと言われる兵法を書いた「孫氏」の言葉です。戦(いくさ)を行う上では、「敵の状況を知ること」と「客観的に自分たちのことを知ること」が極めて重要なことであるということです。
原理原則的に正しいことなので、スポーツなどを筆頭に様々な活動で使われる「定石」でもあります。それはビジネスでも同じです。
戦略を考える上で、最も有名な言葉の一つである孫氏の言葉には「続き」があります。
「彼(敵)を知らずして、己を知れば、一たび勝ちて、一たび負く。彼を知らず、己を知らざれば戦うごとに必ず敗る」
「敵の状態を知って、味方の状態も客観的に把握していれば、百回戦っても危険が無い。しかし、敵の状態を知らず、味方の状態を客観的に把握していれば、勝ったり負けたりし、敵の状態を知らず、味方の状態も客観的に把握できていなければ、戦うたびに必ず危険になる。」という意味です。
ですから、戦略を立てる時の基本中の基本であり、最初にすべきことは「己を知る」ということです。
「己を知り、敵を知れる」ことが理想ですが、ビジネスにおける敵(競合や市場、あなたを取り巻く環境)は把握することが簡単ではないので、まず自社を客観的に知ることが重要です。
冷静に自社を見つめたとき、良い点や強みも出てくると思いますが、集約して言えることが一つあります。
それは「99.7%の会社は、弱者である」という事実です。
そういう弱者が勝っていくための戦略が「弱者戦略」です。
ほんとうに様々な種類の経営戦略が世の中にはありますが、ほとんどの会社がとるべき戦略こそが「弱者戦略」です。
経営戦略としての「弱者戦略」
「弱者である」と言われると、心地良くはないと思います。実際、多くの社長は、個人としては強者だと思います。有能な人が多いです。仕事もできるし、自分で経営を始めるまでは成功してきた人が多いです。
しかし、私たちの「会社」は違うということです。
数十億円に相当する大きな資本や唯一無二の独自の強みを持った会社でない限り、自分を弱者として位置付けておいて間違いはありません。
この「弱者である」という自己認識をベースに戦略を立てないと、間違った戦略を立てて、間違った努力を繰り返すことになってしまうのです。
ですから、世の中に存在する多くの会社は「弱者戦略」を戦略の土台にしておかないといけません。
「弱者戦略」は「生き残り戦略」と言うこともできます。資本や経営資源に乏しい中小企業が、厳しい市場の中で強く生き残っていくために何をすべきなのか?の指針となってくれます。
動物の世界を見ても、弱者である小さな動物たちが、厳しい環境を生き残っていくために、実に素晴らしい戦略を持って生きています。植物の世界でも、雑草などの弱者植物は、それぞれの種で生き残る戦略を持っています。
それらはすべて「弱者戦略」です。
長くなってしまうので言及しませんが、それらの戦略は実に面白く、私たち中小企業がとても参考になることばかりです。
弱者戦略を、もう少し詳しく見てみましょう。
進めていく時には、下記の<4つの段階>があります。
【弱者戦略の4段階】
助走) 弱者であることを自覚する
Hop) 「選択と集中」戦略
Step) ドミナント戦略/一番化戦略/カテゴリーキラー戦略
Jump) 一点突破多面展開戦略
陸上競技の「3段跳び」をイメージしてもらうと分かりやすいです。
助走)弱者であることを自覚する
戦略を考える時に、最初にすべきことは「自分を知る」ことでした。そして、多くの会社は市場や取り巻く環境の中では弱者であるということです。自社が弱者であるという自覚をすることには抵抗があるかもしれませんが、この客観的な認識がなければ、全ての戦略の軸がブレてしまうので、まず、弱者であるという自覚が、とても大事です。
強者になっていくために、「弱者の自覚」を持ちましょう。
Hop)「選択と集中」戦略
自分たちが弱者であるという自覚ができれば、すべきことは明確になってきます。リソース(経営に使える資源:お金や人材や技術など)が限られているわけですから、それらの限られた資源を有効に活用しようとすれば、広い領域ではなく狭い領域に絞って、そこに資源を集中投下することが効果的です。
自分たちが優位性を持つことが出来そうな狭い領域を「選択」し、そこに資源を「集中」させることが、経営戦略の軸になっていくということです。
Step)ドミナント戦略/1番化戦略/カテゴリーキラー戦略
Hopの「選択と集中」を行い、小さな市場でも良いので1番を目指していきます。
なぜ、1番を目指すのかというと、人は2番以下を記憶しにくいからです。日本で1番高い山は富士山ですが、2番目は? 日本で1番大きな湖は琵琶湖ですが、2番目は? 日本で1番大きな都道府県は北海道ですが、2番目は?
人は、1番は覚えていますが、2番は覚えていないのです。
これはビジネスの世界でも同じで、顧客は1番しか覚えていないのです。
情報が氾濫する現代では、この傾向は、ますます強くなってきています。
顧客が消費者・ユーザーとして利用する商品・サービスのカテゴリー自体の数も急激に増えているのも、この傾向を強くしています。そして、カテゴリーの中で2番以下の商品・サービスは記憶の奥底で眠ってしまうのです。
私たちの商品が売れていくためには、顧客の想起率が重要だということです。想起率とは、顧客が自社を思い出してくれる確率のことです。例えば、あなたが飲食店を経営していたとすると、近隣の住民が「お腹が空いた」時に、どれくらいの割合で「あなたの店を頭に想起するのか?」ということです。その頻度によって売上が上下します。
ですから、カテゴリーの中で1番になることを目指すべきなのです。
このような背景から生まれたのが「1番化戦略」や「ドミナント戦略」や「カテゴリーキラー戦略」です。どの戦略も、1番になるために、自分たちが提供する市場の範囲を小さくしたり、限られた小さなカテゴリーにすることで、その中で1番になっていくことを目指した戦略です。
Jump)一点突破多面展開戦略
Stepの1番化戦略に成功したら、規模を拡大します。
もちろん、そのまま地域の1番店のまま生き残るのも悪くありません。それも戦略の一つと言えます。
しかしながら、会社は、ある程度の規模があるほど安定したりします。使える予算も増えて、より地盤を固めていくこともできます。年商3,000万円の会社の1%は30万円ですが、年商3億円の会社の1%は300万です。同じ1%で出来ることが、かなり変わってきます。
ですから、生き残りを第一に考えた場合でも、ある程度までの拡大は有効なのです。
例えば、飲食店であれば、Stepで地域1番店になったら、同じような世帯層を持つ隣町に2号店を出します。ここで気をつけないといけないのは、同じオペレーションで経営できるような店にするということです。
よくある失敗は、全く違う飲食店を始めてしまうことです。同じ地域で一番店になれる見込みのあるカテゴリーであれば、まだ良いですが、違った地域に、違ったカテゴリーの店で勝負するのは、成功する可能性が低いです。「定石」ではないです。
この段階は「コピー」の段階です。
Stepで1点突破して成功したことを繰り返して拡大していくことが、最も勝つ確率が高いのです。1店目をコピーして3〜5店まで広げることが出来たら、経営者としての収入も増え、会社もかなり安定してきます。
さらに、拡大したければ、全国展開していくとか、フランチャイズにする方法もあります。
弱者戦略を、助走 → Hop → Step → Jumpの順で見てきました。定石として、これらの順番を戦略の基本として持っておくと良いです。
もちろん、囲碁や将棋にも多くの定石があるように、ビジネスの世界にも多くの定石がありますから、それらを学んでいくことは、自分たちを楽にしてくれます。試行錯誤で失敗するのを少なくしてくれるのですから、ありがたいことです。
この「弱者戦略の4つの段階」が定石で、戦略の背骨のようなものです。ここを間違うと、なかなか勝てなくなってしまうので、まずは基本として押さえておきましょう。
6つの「部分戦略」から考える
いきなり会社全体の方向性を決められるような戦略は、なかなか出てこないものです。
ですから「部分から」考えていくこともお薦めしています。
経営の要素と構造から考えると「経営の12分野」のように、経営全体を12の部分に分けることができます。ですから、それらの一つ一つで戦略を考えていくのがベストですが、もう少し簡単に集約して6つの部分にして考えてみましょう。
【6つの部分戦略】
① 商品戦略
② 顧客ターゲット戦略(顧客セグメント戦略)
③ 営業戦略
④ 競合戦略
⑤ 採用育成戦略
⑥ 価格戦略
それぞれを簡潔に解説していきます。
① 商品戦略
あなたの会社が「どんな価値を提供するのか?」「どんなニーズを満たすのか?」を考えて、商品・サービスの方向性を明確にします。
② 顧客ターゲット戦略(顧客セグメント戦略)
「どんな人に、あなたの商品・サービスを提供したいのか?」「どんな人に、提供すべきか?」を具体的に考えて明確にします。
③ 営業戦略
どんなに良い商品・サービスでも、それが売れない限り、顧客にとっても、会社にとっても何のメリットもありません。
ですから「どうやって購入してもらうか?」を考えることは致命的に大切なことです。「こうやって販売すれば上手くいくはずだ」という戦略を明確にしていきます。
④ 競合戦略(差別化戦略)
市場の中で、同じカテゴリーの商品・サービスを私たちだけが提供していれば理想ですが、現実は違います。競合が存在します。今、競合が存在しなくとも、あなたのビジネスが上手くいっていることが分かれば、すぐに参入者(競合)が現れます。残念ながら、それを止めることは出来ません。
競合が存在して、相対価値が低下すると、売上規模も収益性も下がっていきます。ですから、競合との違いを常に意識して「違いを作っていく(差別化)戦略」が大切になります。
⑤ 採用育成戦略
経営は「人が、人のために行う、人の活動」です。ですから「人」は最も大切な要素の一つです。会社の強さも、結局は「人」が作ります。その中心にいるのは経営者ですが、「どういうチームを持っているか?」で経営の成否は格段に変わってきます。
ですから、人の採用と育成は会社経営に大きな影響を与えます。「どういうチームを持ちたいのか?」そのためには「どんな人が必要なのか?」「どうやって採用すればいいのか?」を考えて明確にしていきましょう。
⑥ 価格戦略
価格はビジネス上の戦略を考えていく上で、最も影響力のあるファクターの一つです。本来は商品戦略の中に入るべきことでもありますが、単独で考えた方が良いくらい影響力を持っています。
価格を考える方法は色々とあって、私たちも複数の方法を教えていますが、まずお願いしたいのは「価格に関して徹底的に考えて欲しい」ということです。相場などを見て「何となく」簡単に決めてしまう人が多いですが、価格は、あなたの会社に大きな影響を及ぼすので、真剣に考えたほうがいいです。
価格一つで、利益率や社員の疲弊度などが変わります。「どれくらいの価格を目指すべきなのか?」を徹底的に考えましょう。
コストリーダーシップ戦略は「低価格で多くの顧客を獲得していく」戦略ですが、中小企業では体力的に難しいです。むしろ「ちょっと高いけど、選ばれる」というような価格がお薦めです。
領域は狭いが、その分野であれば深い見識と技術やサービスがある高付加価値で高価格な状態にしていけると、小さくとも安定した経営を継続できる可能性が高くなります。
これら「6つの部分戦略」を考えていくと、自社にとって「中心とすべき点」が見えてくることが多いです。
「6つの部分戦略」は、それぞれが重要でもありますが、会社によって、最も重要視する中心点は違って良いですし、違うものです。
商品を中心点にする会社も多いですし、採用育成を中心点にする会社も多いです。どの部分戦略を中心点にするかは、経営者としての特徴や会社の独自性によって変わるべきです。
あなたが大切だと思う部分を中心点にして、それらを経営戦略として考えてみてください。
代表的な6つの種類の経営戦略と5つの経営戦略分析フレームワーク
世の中には数多くの種類の経営戦略が溢れています。
たくさんの種類の経営戦略本も出版されています。
ここでは、代表的な経営戦略や経営戦略分析をご紹介します。
経営戦略①『差別化戦略』
差別化戦略は、幅広いターゲットを対象とし、「他の企業が持たない特徴」を生かすことにより、業界で特異な地位を占める戦略です。
ブランドを活かした差別化を実施する企業が多いです。
経営戦略②『コストリーダーシップ戦略』
コストリーダーシップ戦略は、特定のターゲットを決めずに、幅広いターゲットを対象に「低価格」を武器として業界の主導権を握る戦略です。
徹底した原価削減を行うことで平均並みの製品や商品を低価格で販売し、「安く売っても儲かる」仕組みを作ります。
経営戦略③『集中戦略』
集中戦略は、「特定の地域や消費者などに経営資源を集中させること」により、コストリーダーシップまたは差別化を推し進める戦略です。
中小企業やベンチャー企業など小さな会社でも大企業に対抗できるようになります。
経営戦略④『多角化戦略』
多角化戦略とは、自社の経営資源を「新しい製品・サービス」「新しい市場」の組み合わせによる新しい分野へ投入することで、事業の拡張を目指す戦略の一つです。
多角化戦略は、生産技術と市場の2軸から「水平型多角化戦略」、「垂直型多角化戦略」、「集中型多角化戦略」、「コングロマリット型多角化」の4つに分類されます。
また、多角化戦略自体は、顧客(既存顧客・新規顧客)と技術(既存技術・新規技術)の組み合わせで分類された4つの戦略パターンの中の1つです。
それぞれ「市場浸透戦略」、「市場開拓戦略」、「製品開発戦略」、「多角化戦略」という名がついています。
経営戦略⑤『グローバル戦略』
グローバル戦略とは、国内だけでなく海外にも視野を向けビジネスを展開していくための戦略のことです。
世界を一つの市場ととらえ、世界の国々にある共通した需要に向け、多くの顧客にサービスや商品を提供しようと考えるものがグローバル戦略です。
経営戦略⑥『リソース・ベースド・ビュー』
リソース・ベースド・ビューとは、企業ごとに異質で、複製に多額の費用がかかる経営資源(リソース)を活用することによって、
企業は競争優位を獲得することができるという、経営資源に基づく戦略論です。
経営戦略分析①『PEST分析(マクロ環境分析)』
PEST分析とは、マクロ環境分析をおこなう経営戦略フレームワークです。
PEST分析のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったものです。
経営戦略分析②『ファイブフォース分析』
「ファイブフォース分析」は『競争の戦略』のマイケル・ポーターが提唱した業界分析手法です。
「供給業者の交渉力」、「買い手の交渉力」、「既存企業間の競争」、「新規参入の脅威」、「代替財の脅威」の5つの要因が業界全体の収益性を決めるというものです。
5つの要因から見て、競争が厳しいほど業界の収益性は低く、魅力のない業界ということになります。
最近は5つの要因に加えて「補完財業者との協調」という要因が加わった「シックスフォース分析」や「ファイブフォース+ワン分析」などとも言われております。
経営戦略分析③『3C分析』
3C分析とは、経営環境分析のフレームワークです。
3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、経営環境を抜け漏れなく把握できます。
経営戦略分析④『バリューチェーン分析』
「バリューチェーン分析」とは、「バリューチェーン」を各活動ごとに切り分けて分析するためのフレームワークです。
バリューチェーンとは、原材料を調達してから商品やサービスが顧客に届くまでに企業が行う活動の連鎖(チェーン)を、
モノの連鎖(サプライチェーン/物流)だけではなく、価値の連鎖(バリューチェーン)として捉えたものになります。
個別の活動ごとに分析することで、どの工程で高い付加価値が生み出されているのか、またはどの工程に問題があるのかを明確に把握できます。
また、各活動について詳しく分析し、自社の強みと弱みを明確に分類できます。
経営戦略分析⑤『7S』
7Sとは、企業には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があるととらえ、それら7つの資源をもとに個々の企業に最適な事業戦略を考えることができるフレームワーク。
7つの資源から組織の現状と組織の戦略(組織が望む状態)とのギャップを診断できます。
7Sはそれぞれ「戦略(Strategy)」、「機構(Structure)」、「システム(System)」、「スタッフ(Staff)」、「経営スタイル(Style)」、「経営スキル(Skills)」、「上位目標(Superordinate Goals/Shared Value)」で構成されています。
これら様々な経営戦略を自社で有効に活用するためには、下記の順序が必要です。
(1)基本的な経営戦略を知る
↓
(2)自社に適応できるか考える
↓
(3)最適な戦略を選択する
たくさん知ってしまうと「逆に迷うのでは?」と感じるかもしれません。実際、多くの既知の経営戦略で迷ってしまっている人もいます。
しかし、何も知らないで迷っているより、知っていて迷っている方が、かなり良い状態であることは間違いありません。
また「社長の仕事」の基本中の基本である「経営を知る」を実践するだけで、新しく知った戦略が「自社に適切なものなのか?」の判断も圧倒的に簡単になります。
最後に頼れる経営戦略
多くの戦略論がありますが、その土台にあるような経営戦略があります。
私自身もシリアルアントレプレナー(連続起業家)として、何もない0からビジネスを何度も立ち上げてきて感じるのは「最初は正解が分からない」ということです。
特に、新しいビジネスの起業時は「正解が分からない」「勝ち方が分からない」「おぼろげな方向しか分からない」という状態です。そんな状態で頼れるのが、この戦略です。
社長の行動原則の柱とも言えると思いますが、経営者が目的を達成するための「手段」や「自社の勝ち方」という観点から考えると広い意味で「戦略」と呼んで良いと考えていますし、これ以上の経営戦略はないとも感じています。
戦略は「まだ分からない未来を、どうやって現実にしてくか」という手段の話なので、仮説に過ぎません。
ですから、絶対に正しい戦略というのは無いのです。
一つだけあるとすれば、この戦略だと考えています。
迷ったら、よく分からなかったら、頼っていい戦略です。
実際、多くの優秀な経営者は、この戦略を土台にしています。迷ったり上手くいかなかったりすれば、基本に立ち返って、この戦略を愚直に実行します。
それが「実行と検証を繰り返して、自社の勝ち方を見出していく」ということです。
経営戦略としての「PDCAサイクル」
経営戦略を考える上で、「仮説/実行/検証」を繰り返していくことの重要性は、最近の経営の世界では、かなり見直されてきています。
その流れの大きな要因は、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しくなってしまい、それに伴って、戦略的な正解が変わっていってしまうからです。
例えば、IT系の開発の世界でも、ウォーターフォールという計画的に進めていく手法から、アジャイルという「仮説/実行/検証」を短いスパンで繰り返していく手法に変化してきています。
また、「仮説/実行/検証」を「PDCAサイクル」として、積極的に取り入れている会社も増えています。
PDCAとは、下記の略です。
Plan(計画/仮説)
Do(実行)
Check(評価/検証)
Action(改善)
PDCAを何度も繰り返していくと、どこかの時点で【正解】が分かるようになります。
「あっ、このビジネスでは、こうやって、こうやって、こうやればいいんだ」っていう【正解】が分かるようになります。
それが分かるようになるまでは、試行錯誤して、微調整を繰り返していくしかないのです。
ルート2でも紹介したように世の中には数多くの経営戦略が溢れています。たくさんの種類の本も出版されています。このように数ある戦略論の中から、たった一つだけ経営戦略を挙げなさいと言われたら「仮説検証を繰り返していくこと」を挙げます。
実際、たくさんの会社のお手伝いをしますが、どんなに成功している会社でも、最初から上手くいくわけではありません。必ず仮説検証を繰り返しています。「最初に立てた戦略が当たらない」ことは普通なのです。
ベンチャーやスタートアップの世界では「ピボット」と言われているのですが、検証の結果、仮説が間違っていたと判断したら、ガラッと仮説を変えることは、よくあります。そして、この「ピボット」が成功の鍵と言われることも増えてきました。
PDCAを回して、少しずつ方法を変え(ピボットし)ながら進んでいって、ある時、ガラッと成果が出るポイントが訪れるということです。それによって一気に成功に近づいていきます。
ですから、このPDCAというのは、実は、とても大事な戦略と言えますし、変化が激しくなっている現代において「最後に頼れる戦略」なのだと考えています。
経営戦略もコモディティー化する
もう一つ、この「仮説と検証」を続けることが、とても大事だなと考える理由は、世の中に出てくる方法論(戦略や戦術)は、時間の経過と共に陳腐化するということです。
私も経営の世界に携わって、結構、長いです。子供の頃から、両親の会社に取締役として携わってきて経営が日常にある中で育ち、会計事務所やコンサルティング会社で数多くの経営に関わり、自分でも起業して複数の会社を経営し続けているので、かなり長い間、経営には関わってきているのですが「ほぼ全ての戦略とか戦術はコモディティー化していく」と感じています。
(コモディティーとは「他で簡単に代替できることが可能な価値」という意味で、顧客から見た時に選択肢が多いような商品であり、会社にとっては相対価値が低い商品のことを意味しています)
ちょっと考えてみてください。常にアンテナを張って勉強されている方なら分かる人が多いと思いますが、10年前に「こんなことが経営の世界で流行りました」ということって、「今は、もう誰も話題にしない」ということが多くないでしょうか?
たった数年前に、大騒ぎして、すごくもてはやされた戦略や戦術でも、「今は、もう誰もやっていないよね」という経験をしたことのある人は多いと思います。
そうやって世に出てくる戦略論は、流行った時点では大事だったりはするのですが、みんなが同じようにやり始めると差異がなくなっていきます。
商品と同じで、良い戦略は多くの人が真似をします。良い方法を真似するのは、ルート2で紹介した通り、勝っていくための強い方法の一つです。最も簡単で、最も効果が高い方法と言えます。ですから、多くの人が真似をします。
特に同業他社が同じ戦略を取れば、戦略上の優位性は無くなっていきます。
相対価値が低下していくので、戦略/戦術としての効果が劣化していくということです。私たち経営者は、それを覚悟しておかないといけません。
ですから、ものすごく本質的なことしか最後には残らない。残り続けることは出来ないと、私は考えています。
そのように考えていくと「仮説と検証を繰り返すこと」は絶対に無くならない戦略であり、私たち経営者が経営戦略の基本中の基本として、常に持っておくべき「最後に頼れる経営戦略」と言えるのです。
まとめ
社長である私たちが常に意識している「経営戦略」について、その定義からはじめて、ここまで一緒に考えてきました。
多くの種類の経営戦略論が生まれ続けて、本や雑誌を賑やかします。
学ぶ必要性を理解している社長ほど、それらを目にして「一体、何をすべきなのか?」と翻弄され、悩んでいます。
もちろん、それぞれの戦略には理があって有効でもあると思うのですが、情報の洪水に流されるように、様々な経営戦略論に翻弄されても、良い経営はできなくなってしまいます。
強い会社は「基本」を持つことです。
成功し続けている経営者ほど、基本的なことを大切にしています。
ですから、まず、中小企業が強く生き残っていくための戦略の基本中の基本である「弱者戦略」を戦略の定石として考えてみてください。
そして「6つの部分戦略」を検討することで、あなたの会社の戦略の中心点を見つけ出して、あなたの会社に適した経営戦略を立てていきましょう。
最終的には、どんな戦略もコモディティー化して相対価値が低下していく可能性がありますから、シンプルな戦略を土台に持っておくことをお薦めしています。
それが、「最後に頼れる経営戦略」です。
「仮説を立て、実行して、検証して、微調整をしていく」サイクルを回していくことが、あなたの会社独自の経営戦略を見出していくのに、とても大事です。
経営者は実践者であり、魔法のような方法を探している夢想家ではないので、実直な方法を土台にすべきです。経営戦略上におけるそれが「最後に頼れる戦略」です。ですから、「経営戦略の土台」として忘れないで頂ければと思います。
あなたの会社が力強い戦略を持ち、長く成功し続けるのを願っています!