チームとしての生産性を最大化させるために必要なものの一つとして、企業の文化づくりが挙げられます。企業文化とは、組織のビジョン・価値観・慣行から現れる「その企業らしさ」のことを指し、社内だけでなく社外にも伝わる重要なイメージです。就職や転職を考える人々の中には、企業文化が自分自身に合ったものかどうかという点を重視する人もいます。

企業文化が明言化されていなければ、その企業が何を目指し、何を重要視しているかを知ることは難しくなります。しかし、無形である「文化」というものを作り上げることに苦労する方は少なくないのではないでしょうか。そんな時に作っておくと非常に便利なのが、その組織のあるべき姿や社員の姿を言語化し、明確にした「クレド」です。

今回は、楽天、リッツ・カールトン、ジョンソン・エンド・ジョンソンの事例を交えつつ会社の理念を伝えるために有効なクレドの機能を3つご紹介します。

1.企業のゴールをより明確にする

クレド(英:creed)は「信条」「志」という意味で、あるべき組織像や人間像を言語化したものです。クレドと混同されがちなものとして「企業理念(ミッション・ビジョン )」がありますが、企業理念が目的地だとすると、クレドはチームが進むべき道を示すコンパスで、理念を達成するために必要な社員の行動規範などを示したものになります。

例えば、楽天の企業理念は「インターネットを通じて、人々と社会を“エンパワーメント”する」です。このように、企業理念が示すものは比較的抽象的であることが多いですが、その理念を達成するために企業がとるべき行動を明確に表したものがクレドになります。楽天は、「成功のコンセプト」として以下の5項目のクレドを掲げています。

楽天 クレド

2.他社との差別化をする

クレドは、企業がどのような戦略を持っているかを社内外で明らかにし、他社との差別化を図るための手段にもなります
 例えば、高級品を提供する企業としてのブランドを確立したい場合は、クレドで「品質の高さを追求する」と示すことで高級なイメージを明確にすることができます。一方、低価格な商品を売りにする企業の場合は「常に安心価格を約束します」とクレドで示すことができるでしょう。クレドを使うことで、多くの競合企業が存在する中でも、自社が持つバリューを明確に示すことができます

リッツカールトン クレド

これは、世界的に有名なザ・リッツ・カールトンホテルのクレドです。顧客満足を最優先に考えられているこのクレドは、創業された1983年ごろから長年利用されてきました。「世界最高のサービスを提供する」と名高いリッツの伝統や文化は、このクレドによって作り上げてきたものであると言えるのではないでしょうか。

リッツのクレドはコンパクトなカード型になっており、スタッフは常備していつでも読めるようにしているそうです。このようにカードの形にして、社員が常にクレドを確認できるような状態しておくことも、企業文化を社内に浸透させるための手段として有効です。

3.社員のモチベーションを向上させる

クレドは、社員のマインドセットやモチベーションの向上にも役立ちます。企業の中には朝礼でクレドを社員全員で読み上げるというケースもありますが、これにより社員は「組織の一員である」という一体感を持つことができ、社員一人ひとりがチームに貢献するために積極的に行動することにもつながります。

また、社員が意思決定を行う場面においても、クレドは「こうすべき」というアクションを示す重要な役割を果たします

ジョンソンエンドジョンソン クレド

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド「我が信条」では、企業が責任を負うべき4つの存在(顧客・社員・社会・株主)について示されています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは定期的に「クレド・チャレンジ・ミーティング」が行われ、社員がクレドに関して議論を行い、文言を追加・削除しているそうです。それにより、クレドを企業に根付いた時代に合うクレド作りが試みられているそうです。

加えて、このようなミーティングは、社員が自社のクレドと向き合い「自社をより良くするためにどうすべきか?」を考える重要な機会にもなります。

社員と話し合いをしながら一つ一つの文言を作り上げていくことも、企業文化に根付いたクレドを作るためには必要であると言えます。

4.注意!「現実離れ」したクレドは作らない

クレドを作成する際に気をつけるべき点として、実際に企業が行っている活動内容と全く異なった文言を盛り込んではいけないという点があります。

注意 クレド

「企業をこうしたい」という思いが強すぎると、実践が難しかったり、実際の企業が持つイメージとはかけ離れた行動理念を入れてしまいがちです。

しかし、実際に社員が実践に移せないクレドには何の意味もありませんし、「この企業は〇〇と謳っているのに、実際は××をしている=嘘をついている」と悪いイメージを与えてしまう可能性さえあります。

逆に、経営者が若干の違和感を感じるような内容であっても社員の一体感や積極性を高めることができるものであれば、そのクレド作りは成功と言えます。

クレド作りは「企業がどこに進むべきか」「社員はどうあるべきか」という、組織における根本的な点を見直す重要な機会となります。
企業文化を浸透させる一つの手段として、社員と共にクレド作りに取り組んでみてはいかがでしょうか

クレドの作り方や使い方について、より詳しく学びたい方は、プレジデントアカデミーをご確認ください。

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