起業を考えたときに、まずやらなくてはならないことがあります。
それは、「商売を好きになる」ことです。
「起業しようというのだから、そんなことは当然でしょ」と思うかもしれません。しかし、何千人もの起業者を見てきてわかった意外な事実があります。それは、かなりの人が商売に対するマイナスのイメージを持ったまま起業するということです。
起業するということは営利でビジネスを行うことであり、それを継続するためには儲けなければなりません。
その最も重要な部分に、肯定的になれないまま起業してしまう人が多いのです。人間は「これは正しい」と心から思えないことには一生懸命になれません。
心のどこかで商売を「卑しいもの」だと感じているならば、それは、アクセルを踏みながら同時にブレーキを踏んでいるようなものです。そのため、持っている力を生かし切れずに失敗してしまうケースがよくあるのです。
もし、あなたが商売に対して少しでもマイナス感情を抱いているのならば、そこにある「刷り込み」に気づいてください。
テレビドラマでは社長は悪く描かれることが多いですし、時代劇では悪代官の裏に必ずさらに悪い商人がいて「お前もワルよのう」などと言われています。
こうして、私たちは幼い頃から商売をすることが卑しいことのように思い込まされてきたのです。
私自身も学生時代までは「経営者はどこかずるい人なのだろう」という考えを捨てきれずにいました。
ところが、大学卒業後、会計事務所に就職し、たくさんの経営者と接するようになって、それがまったくの誤解であることがわかりました。経営者の多くは、社会のために頑張っていて、逆に犠牲になっているくらいに見えたからです。
しかし、それがなかなか世の中の主流な考えにならないのは、経営者のほうが圧倒的に数が少ないからでしょう。社会の文脈は多数派によってつくられており、相変わらず商売は色眼鏡で見られています。
もし起業したいのなら、まず、あなた自身がその色眼鏡を外す必要があります。
経営者というものについて、何かしら「悪」の印象を持っているのならば、それを早く捨てることです。
たとえ今、勤めている会社がいわゆるブラック企業であったとしても、経営者に対する固定された見方からは自由になっておきましょう。
というのも、会社員でいるときに、経営者に対して「搾取されている」と感じていると、その構図から抜け出せず、自分が経営者になったときに自分でも知らず知らずのうちに搾取する側になってしまうことが多いからです。
そして、「やっぱり自分のやっている商売は卑しいんだ」という想いが心のどこかに残るという悪循環にはまります。
あなたが起業するということは、社会に貢献する事業を始めるということ。そして、その対価を堂々と受け取ることです。ですから、悪いことなどまったくありません。まず、その軸をしっかり持ってください。
▶Point|ビジネスに対する色眼鏡を外してみよう