収支を合わせる必要があるという点では共通していても、「お金を使う」ことに関しては、個人と会社の経営者とではまったく違ってきます。
たとえば、自動販売機でペットボトルのお茶を買うとき。あなた個人としてなら「消費」です。「喉が渇いたからお茶でも飲みたい」でなんの問題もありません。
しかし、経営者として買うなら、お茶1本でも「投資」でなければなりません。
会社のお金として使うときは、1円でも消費はありません。すべて投資です。
「お客さんが来るから買うけど、このお茶で仕事にどんなリターンを得られるか」を考えなくてはならないということです。
お金だけでなく、時間や自分のエネルギーなどを投資してリターンを得るのが経営活動ですから、ビジネスを成功させるには投資のセンスを磨くことがとても大事になってきます。
普段から「どんなリターンがあるのかな?」と考えながらお金を使うようにしていくと、時間やエネルギーに関しても投資がうまくなっていきます。
ところが、たいていの人は、「価格に見合うか見合わないか」を深く考えずに、適当にお金を使っています。しかし、経営者になるにはそれではダメで、どんな小さなものでも、買う前には「値踏み」が必要です。
「値踏み」とは適正な価格と価値であるかを見極めること。
価値を値踏みするクセは、商品を提供する側になったときにも重要な意味を持ちます。「お客さんからしたら、この商品は価格に値するか」がわかるからです。
もちろん、「見合うと思って買ったのに見合わなかった」という失敗もあります。リターンが返ってこなかっら、そこには二度とお金を使わなければいい。「見合わなかったな」という経験を得ることも大切です。
いずれにしても検証が必要で、検証をしないでいると、リターンを得られないばかりか、得られなかったことから学ぶことすらできません。
私は幼少時代を関西で過ごし、関東の大学に進みました。「大阪のおばちゃん」に代表されるように、関西人は常にリターンを考えながらお金を使っています。そうした環境で幼少期を過ごせたのは、経営者としてラッキーだったと思っています。
私は、かなり豊かになるまで、スターバックスのコーヒーは、来客には出しても自分で飲むために買ったことがありませんでした。美味しいコーヒーを飲みたければ自分で入れたほうが安く済むと思ったからです。
でも、その分、リターンがあると思えるところにはお金を使ってきました。
20代の頃、私は高い家賃を払って都心の一等地にマンションを借りていました。おしゃれに暮らしたかったわけではなく、会社の近くに住みたかったからです。
往復2時間近く満員電車の中で何もしないでいるより、その2時間で生産性の高いことができると思ったからです。
あなたの場合も同様です。たとえば、タクシー代が会社から出なくても、自腹で乗ったほうが、リターンが得られることもあるでしょう。ムダなお金を使う必要はありませんが、リターンがあると見込んだら大胆に投資する感覚も必要です。
▶︎Point|すべての支出において「リターンは何か?」と考えよう