
「社員が指示待ちばかりで、自分で考えて動いてくれない」
「組織が大きくなるにつれ、自分の想いが現場に伝わらなくなってきた」
多くの経営者が、従業員数が10名、30名と増えるステージでこのような「組織の壁」に直面します。その解決策として語られるのが「経営理念」の作新ですが、世の中の多くの理念は、残念ながら「飾ってあるだけのきれいごと」に終わっています。
なぜ、あなたの言葉は社員に響かないのか。どうすれば、社長の迷いを消し、組織の全判断を揃える「武器」としての理念を作れるのか。
この記事では、社員の心に響き、現場を動かすための「本物の経営理念」の作り方を詳しく解説します。
1.経営理念とは

経営理念とは、一言で言えば「その会社が存在する理由≓存在意義(Mission)」であり、経営者が迷ったときに立ち返る「究極の判断基準」です。
混同されやすい概念として「ビジョン」や「バリュー」などがありますが、これらは時間軸が異なります。ビジョンは「未来の到達点(どうなりたいか)」、バリューは「日々の姿勢(どう動くか)」の行動指針であるのに対し、経営理念は過去・現在・未来を貫く「不変の価値観」です。
「ミッション・ビジョン・バリューの違い」について、詳しくは下記もご覧ください。
1. 良い経営理念とは
良い経営理念には、共通した特徴があります。それは「心に響く言葉があること」と「ストーリーがあること」です。
1-1. 心に響く言葉がある
良い経営理念は、読んだ人の感情に何らかの反応を起こします。
それは感動である必要はありませんが、多少不格好でも、経営者自身の価値観や人生観がにじみ出ている言葉は、不思議と人の心に残ります。
経営理念は文章の巧さではなく、どれだけ本音が込められているかによって評価されるものなのです。
1-2. ストーリーがある
良い経営理念には、必ずそこに至るまでの背景があります。
なぜその考えに至ったのか、どんな経験や出来事があったのかといった物語が存在しています。
人は理念そのものだけでなく、「その理念が生まれた理由」に共感します。
なぜこの事業を始めたのか、過去にどんな違和感や怒り、悔しさを感じたのか。そうしたストーリーがあることで、理念は単なる言葉から意味のある物語へと変わります。
「心に響く経営理念」について、詳しくは下記をご覧ください。
2. ダメな経営理念とは
一方で、形だけ整えられた「ダメな理念」には、以下のような特徴があります。
2-1. 経営者の「覚悟」や「意志」が感じられない
社会貢献や顧客第一といった言葉自体は否定されるものではありませんが、「なぜ自分たちがそれをやるのか」が語られていなければ、ただの一般論になってしまいます。
そこに経営者自身の「覚悟」や「意志」が感じられなければ、社員の心は動かず、行動を変えることはできません。
2-2. 抽象的すぎる(具体的な行動・判断に繋がらない)
解釈が人によって分かれるほど抽象的な言葉は、現場での判断基準になり得ません。
「迷ったときにどちらの道を選ぶべきか」が示されていない言葉は、理念としての機能を果たしません。
2-3. 会社の背景や歴史が含まれていない
その会社がどのような苦難を乗り越え、どのような想いで設立されたのかという「文脈」がない言葉は、記号に過ぎません。
歴史という裏付けがない言葉は、組織のアイデンティティにはなり得ないのです。
「ダメな経営理念の特徴」について、詳しくは下記をご覧ください。
3.良い経営理念作るための5ステップ

それでは、実際にどのようにして「良い経営理念」を作ればよいのでしょうか。周囲を巻き込みながら、顧客の心を動かし、磨き上げるための5つのステップを紹介します。
① 良い理念を見てイメージを膨らませる

良い経営理念を作るのであれば、どのように表現すればいいのか、一から手探りで始めるのは難しいです。まずは他社の実例を参考にして理想の経営理念のイメージを固めることから始めましょう。例えば、下記などがあります。
例)株式会社サンリオ「みんななかよく」
②経営者自身の考え・歴史を書き出す

次に、自身の原体験を棚卸しします。「なぜ独立したのか?」「過去の仕事で最高に嬉しかった瞬間は?」「逆に、絶対に許せないと思ったことは何か?」を書き出します。大事なのは、その中から共通する価値観や歴史を抽出することです。自分自身の泥臭い経験の中にこそ、本物の言葉が眠っています。
③自社の存在意義を抽出する

「なぜ自分の会社でなければいけないのか?」という問いに向き合いましょう。最初は長くなりがちですが、最終的には誰もが理解できるよう「20字以内」に凝縮することが大切です。「自社が存在することで、誰がどう幸せになっているか」という解像度を高めた存在意義を抽出しましょう。
④自分自身の言葉で口にする

コンサルタントや他人の言葉を借りるのをやめ、自分が日常的に使っている「しっくりくる表現」に落とし込みます。洗練されている必要はありません。経営者がその言葉を発した時に、熱がこもるかどうかがすべてです。まずは鏡の前で、あるいは信頼できる相手に口に出して伝えてみてください。
⑤ 仮説検証を繰り返す

完成した理念をまずは現場の判断基準として使ってみます。「この理念に沿えば、このクレームにはどう対応すべきか?」と問いかけ、実務にそぐわない場合は言葉を微調整します。運用しながら磨き上げるのが正しい作り方です。理念は使っていく中でこそ、出来上がらないものなのです。
成功し続ける経営者は、良い経営理念を作れること以外にも共通点があります。詳しくは下記もご覧ください。
4.5ステップをもとに、実際に作成してみよう!
それでは、実際の現場ではのようにして「良い経営理念」を作られているのでしょうか。株式会社Schooの例を参考に、5つのステップにのっとりながら見ていきましょう!。

「世の中から卒業をなくす」 – 株式会社Schoo
✅①良い理念を見てイメージを膨らませる
教育業界の多くが「合格」や「スキル習得」をゴールにする中で、あえて「卒業をなくす」という逆説的な表現を用いています。これは、既存の常識を疑い、他社とは一線を画すイメージを固めた結果です。
✅②経営者の考え、歴史を書き出す。
代表の森健志郎氏は、かつて情報過多な社会の中で「何を学べばいいのか分からない」「学びたいのに環境がない」という人々の不安や、自身がクリエイティブな仕事に携わる中で感じた「学び続けることの楽しさ」を深く見つめてきました。
特に、大学を卒業した瞬間に学びが止まってしまう社会の構造に対する強い違和感が、彼の原体験にありました。「一生、知的好奇心に蓋をせず、誰もが先生であり生徒である場所を作りたい」という切実な願いが、理念の種となったのです。
✅③存在意義を抽出する
Schooの存在意義は単なるeラーニングサイトに留まりません。10年後、20年後、あらゆる世代の人がインターネットを通じて双方向で対話し、学び合うことで、社会全体の課題解決能力が向上している状態。つまり、「学びが娯楽のように日常に溶け込み、全人類が一生学び続ける社会」の実現こそがSchooの存在意義なのです。それを突き詰めた結果、「世の中から卒業をなくす」という、13文字の極めて強力な言葉に集約されました。
✅④自分自身の言葉にする
「生涯学習の推進」という硬い言葉ではなく、森氏が選び取ったのは「世の中から卒業をなくす」という、極めてシンプルで熱量の高い言葉でした。
この言葉は、社内のあらゆる意思決定に影響を与えています。例えば、動画を「視聴する」ではなく「登校する」と呼び、ユーザーを「学生」と呼ぶ。これは単なる演出ではなく、理念を自分たちの言葉として使い倒している証拠です。
✅⑤仮説検証を繰り返す
Schooは、この理念を掲げて終わりにはしませんでした。サービス内のUI、ユーザーとのコミュニケーション、さらには社員の採用基準に至るまで、あらゆる場面でこの理念を「使い」続けました。さらに、ミッションは変えず、ビジョンをリニューアルし(2024年)、理念体系をアップデートしています。常に社会や顧客を巻き込み、フィードバックを受けながら、理念を事業の隅々にまで浸透させ、磨き上げていったのです。
「経営理念作成チェックシート」のダウンロードはこちらから。
「経営理念」は、経営の1つの要素です。その他の「経営を構成する要素と構造」について、詳しくは下記もご覧ください。
6.まとめ

経営理念とは、経営者が一人で抱える不安や迷いを解消し、組織全員が同じ方向を向くための最強の経営インフラです。きれいにまとめる必要はありません。あなたの本音、あなたの歴史を言葉に乗せてください。そうして生まれた理念こそが、社員の心を動かし、強い組織を作る原動力となります。
まずは、ノートを広げてあなたの「譲れない思い」を書き出すことから始めてみませんか。
監修 / 黒田訓英
株式会社ビジネスバンク 取締役
早稲田大学 商学部 講師
経済産業大臣登録 中小企業診断士
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本証券アナリスト協会認定CMA
日本ディープラーニング協会認定 AIジェネラリスト/AIエンジニア
JDLA認定AIジェネラリスト/AIエンジニア
ライター / 島田 航汰
株式会社ビジネスバンク プレジデントアカデミー編集部
株式会社ビジネスバンク
プレジデントアカデミー編集部
起業家インタビューEntrepreneur事業部 事業責任者
起業家インタビューEntrepreneur事業部
事業責任者
早稲田大学 商学部 井上達彦 研究室





