年商10億は難しくない!
最初にすべき「利益・組織・仕組み」のつくり方

年商10億という数字はインパクトがあるため、どうしても成功の象徴のように扱われがちです。

しかし実際には、年商10億=経営が安定している、儲かっているとは限りません。

極端な例ですが、10億円で商品を仕入れて、10億で売っても「年商10億」。しかし、これでは利益は0円。全く儲かっていません。 強い利益構造を創ることが先であり、売上規模を拡大するのは、後でやるべきことです。 利益構造という土台が無ければ、売上規模を拡大しても企業は安定しません。

この記事では、年商10億円企業の壁や仕組み作りについて解説します

【無料ダウンロード】年商10億を目指す経営者が把握すべき「社長の仕事」とは?

売上は規模の指標であって、利益の指標ではないのです。

中小企業が本当に見るべきなのは、売上ではなく粗利がどれだけ積み上がっているか、利益構造がどれだけ強いかです。

しかし、これは「年商を無視していい」という意味ではありません。

重要なのは「利益を伴ったまま」拡大できるかどうかです。 多くの企業が拡大路線で躓くのは、規模が変われば「戦い方」も変えなければならないのに、同じやり方を続けてしまうからです

まずは各年商規模における経営のステージの違いを理解しておきましょう。

年商10億企業の特徴とは?年商1億、3億規模との見える景色の違い

「1億」「3億」「10億」それぞれのステージの違い

1億円規模の景色:社長の目がすべてに届く小規模経営

年商1億の企業は、社長がほぼ全ての機能を担っていることが多いです。

この段階は、組織というより「社長と数名のアシスタント」に近い状態です。 社長の営業力や技術力がそのまま売上になるため、管理コストもそこまでかかりません。

しかし、社長個人の馬力によって稼いでいるため、「自分が動かないと売上が止まる」というリスクを抱えつつ、さらなる成長もしづらいといった状況が続きがちです。

3億円規模の景色:組織が膨らみ「社長の限界」が見え始める

年商3億の企業になると、社員数が増え、業務が分散し、社長の目がすべて届かなくなり始めます。

この段階では「組織化」「仕組み化」が求められますが、まだ十分に整っていないことが多く、社長が現場と経営の両方を抱え込みやすくなります。多くの企業が伸び悩む理由もここにあります。

また食品系や製造なら、設備投資の金額が跳ね上がり、減価償却の影響も大きくなってきます。

10億円規模の景色:社長がいなくても回るように

年商10億の企業は、この社長依存から脱却しています。

現場の判断基準、販売の仕組み、数字管理、権限分担などが一定レベルまで整備され、社長が直接関わらなくても業務が回る状態になります。ここまで来ると、忙しさの質が変わり、社長の時間が会社の未来づくりに使えるようになります。

年商10億に到達する企業に共通しているのは、業務・数字・販売の仕組みが標準化されているという点です。

具体的には以下の状態が整っています。

  • 営業が属人的ではなく、再現性がある
  • 管理職が育ち、意思決定が分散している
  • 月次・原価・在庫などの数字がいつでも確認できる
  • 紹介・リピート・定期契約など、安定した売上基盤がある
  • 社長が不在でも日常業務が止まらない

社長がすべてを抱えている会社は、どれだけ優秀でも3億〜5億で限界が来ます。

10億を超える企業というのは、例外なく仕組みが会社を動かす段階に進んでいます。

経営の仕組み化」について、詳しくは下記もご覧ください。

よくある誤解:「年商10億は遠い世界」ではない

中小企業白書や帝国データバンクの統計では、年商10億企業は全体の約5〜7%

中小企業白書や帝国データバンクの統計では、年商10億企業は全体の約5〜7%

年商10億という数字は、多くの中小企業経営者にとって雲の上の存在のように感じられます。

しかし実際には、業種や地域を問わず、年商数億規模から10億へ成長する企業は確実に存在しており、その伸び方には一定のパターンがあります。

よくある特徴は以下の通りです。

  • 特殊なアイデアや尖った商品よりも、継続性のある事業が多い
  • 地域密着型企業でも到達しているケースが多い
  • 創業者が変わらなくても、組織化だけで成長曲線が変わる
  • 3〜7億の停滞期を乗り越えられるかが分岐点

ポイントは、「優秀さ」や「センス」よりも、会社としての仕組みをどこまで整えられるかにかかっている、ということです

「10億は遠い世界」という認識自体が、次のステージに進むチャンスを奪ってしまいます。

数字としては大きく見えても、構造的には積み上げていけば到達できるレベルなのです。

【データで見る】年商10億円企業のリアル

仕組み化が進んだ結果、会社の「数字」と「体制」は概ね以下のような水準に落ち着きます。

従業員数:30〜50名
社長1人では到底管理しきれない人数です。そのため、「部長」「課長」といった中間管理職が機能し始め、組織図(ピラミッド構造)が明確になります。
※中小企業庁の統計をベースに算出

役員報酬:2,000万〜3,000万円
意外かもしれませんが、億万長者のような取り方はしません。税制面の効率や、会社の内部留保(次の投資資金)を優先するため、多くの創業社長はこのレンジに設定し、経費を上手く活用しながら豊かなライフスタイルを送るケースが一般的です。

手取りイメージ:年収1,200万〜1,800万円程度
社会保険料や税金が引かれた後の個人の可処分所得です。個人の贅沢よりも、法人として資産(不動産や運用益)を積み上げるフェーズに入ります。

成功し続ける社長には共通の特徴があります。詳しくは下記をご覧ください。

年商10億を突破するための経営の壁

年商5〜7億を超えたあたりから、多くの企業で伸び悩みが生まれます。それは市場の限界ではなく、利益構造そのものが10億の器になっていないために起こる現象です。まずは目先の売上ではなく、堅牢な利益構造を作るよう戦略を立てていきましょう。

ここからは、統計や現場でも共通して見られる「10億の壁」を整理していきます。

社長の壁:現場も経営も自分が見てしまい、意思決定がボトルネックになる

売上3〜5億までは、社長が現場も営業も管理も見て回れば、ある程度うまく会社は機能します。

しかし売上が7億、8億と伸びると

  • 社長への確認待ち・承認待ちで、業務が頻繁に止まる
  • 「社長しか分からない」案件やトラブルが多く、休日も電話が鳴り止まない
  • 重要な経営判断をすべき時間になっても、現場の細かい決済に追われている
  • 社長が体調を崩すと、途端に売上が下がる

結果、判断スピードが落ち、会社全体が社長待ちで止まる状態になります。

社長の負荷が高いこと自体が問題なのではなく、「社長が動かないと会社が動かない構造」になっていることが問題です

この壁を越えられる会社は、管理職を育て、権限移譲し、「社長の判断が不要でも回る状態」を設計しています。

組織の壁:社員が増えるほど伝達ミスと品質ばらつきが起こる

従業員を雇い始め、社員が15〜20名を超えると、これまで存在しなかった問題が一気に目に見える形で発生します。

  • 同じ指示を出しても、人によって解釈が異なり成果物がバラバラになる
  • 現場の小さなトラブルやクレームが、深刻化するまで社長に報告されない
  • 部署間で情報共有が途切れ、「聞いていない」という揉め事が増える
  • お客様から「担当者によって言っていることが違う」とお叱りを受ける

これは会社の成長とともに必ず起こる現象で、個人技の限界とも言えます。10億企業はここで、マニュアル化・KPI化・標準化・業務フロー整備を一気に進めます

売上目標を達成するために単に人を増やすことだけに注力していると、仕組みがない限り、人が増えるほど生産性が落ちていくでしょう。

資金の壁:売上が伸びているのに、運転資金が先行してキャッシュが足りなくなる

売り上げ規模が伸びるほど、売上より先に「お金」が必要になります。

  • 決算書上は過去最高益なのに、通帳の残高がまったく増えていない
  • 大型案件を受注した直後に、外注費や仕入れの支払いで資金ショートの恐怖を感じる
  • 借入金の返済額が増え、利益が出てもそのまま返済に消えていく
  • 税金の支払いやボーナス時期になると、毎回資金繰りに奔走している


売上10億ラインの企業でよく起こるのが、「黒字なのにキャッシュが足りない」という現象です

特に高単価な製造物などを取り扱う場合、売掛金・在庫・仕入のタイムラグにより、運転資金が先に増えるからです。

がむしゃらに製品を売るだけではなく「キャッシュフロー管理」や「仕入と在庫の最適化」「投資計画の精緻化」などの徹底が重要になってきます。

販売の壁:既存チャネルが頭打ちになり、新しい成長の柱が必要になる

売上3〜5億までは、いくつかの顧客基盤やチャネルで成長できます。

しかし10億の突破には、既存の成長軸だけでは足りなくなります。

よくあるケースは、

  • 創業以来のメイン顧客からの発注量が頭打ちになり、これ以上の伸びしろがない
  • 既存エリアや店舗数が飽和し、これまでのような出店効果が出ない
  • 紹介や口コミ頼みの集客だけでは、目標とする売上数字に届かなくなる
  • 競合他社が増え、価格競争に巻き込まれて利益率が下がり始める

ここで「第2の成長エンジン(新規事業や新チャネル)」を作れるか、あるいは既存事業の付加価値を高めて単価を上げられるか。ビジネスモデルの再構築が迫られます。

自社にとっての年商10億の壁はどこにあるのか?明確にするためにも「経営の全体像を把握する」必要があります。詳しくは下記をご覧ください。

年商10億を狙うなまずは仕組み化から

多くの経営者が「年商10億達成!」というスローガンを掲げ、気合と根性で売上を積み上げようとします。

先ほど紹介した「社長・組織・資金・販売」の4つの壁。これらは別々の問題に見えますが、実は根っこは全て繋がっています。 原因はたった一つ。「人の能力(特に社長の勘と馬力)に依存した経営」をしているからです。

だからこそ、壁ごとに別々の対策をする必要はありません。以下の仕組みを導入してください。これらが機能することで、4つの壁はドミノ倒しのように一気に解決へと向かいます。


業務の「標準化」システム(脱・属人化)

「優秀な人しかできない仕事」を「誰でも80点でできる仕事」に変える仕組みです。マニュアル化、業務フローの整備、権限移譲のルールの策定がこれに当たります。

社長の壁を壊す: 現場の判断基準ができるため、社長への「確認待ち」が減ります。

組織の壁を壊す: 「人による品質のバラつき」がなくなり、採用した新人が即戦力化します。

販売の壁を壊す: 営業トークや提案書が型化され、トップセールスに頼らず売上が作れます。

2. 数字の「コックピット」システム(脱・感覚経営)

「通帳を見て残高を確認する」レベルを卒業し、月次決算、原価管理、KPI(重要業績評価指標)をリアルタイムで可視化する仕組みです。

資金の壁を壊す: 未来の資金繰りが見えるため、黒字倒産を防ぎ、投資のアクセルを適正に踏めます。

社長の壁を壊す: 「どうしようか」と迷う時間が消え、「数字がこうだから、こうする」という即断即決が可能になります。

3. 収益の「ストック」システム(脱・自転車操業)

毎回ゼロから売上を作るのではなく、リピート、定期契約、紹介制度など、売上が積み上がる(蓄積する)ビジネスモデルへの転換です。

販売の壁を壊す: 既存チャネルが頭打ちになっても、顧客資産(LTV)が積み上がるため成長が止まりません。

資金の壁を壊す: 毎月のベース収入が確定するため、資金繰りの予測精度が劇的に向上します。

組織の壁を壊す: 突発的な繁忙期や閑散期が減り、社員が疲弊しない計画的な業務配分が可能になります。

年商10億の壁を突破するには、「経営を学び続け、アップデートし続けること」も必要です。詳しくは下記をご覧ください。

年商10億は「目的」ではなく、正しい仕組み化の結果!

年商10億円は、決して「遠い別世界の数字」ではありません。 正しい手順で組織と事業を積み上げていけば、どのような業種であっても到達可能な通過点です。

しかし、ここまでお伝えしてきた通り、単に「規模」だけを追いかけるのは危険です。 利益構造が脆弱なまま売上だけを10億にしても、待っているのは資金繰りと組織崩壊の危機だけだからです。だからこそ、まずは中身(利益)に着目してください。

「年商10億」という数字は、仕組み化と利益構造の強化を成し遂げた企業だけに与えられる、確かな成長の証です。 まずは足元の利益構造を見直し、盤石な土台を作ること。その延長線上にこそ、健全で強い10億円企業という未来が待っています。

黒田訓英

監修 / 黒田訓英

株式会社ビジネスバンク 取締役

早稲田大学 商学部 講師

経済産業大臣登録 中小企業診断士

日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)

日本証券アナリスト協会認定CMA

日本ディープラーニング協会認定 AIジェネラリスト/AIエンジニア

JDLA認定AIジェネラリスト/AIエンジニア

ライター / 國本 亘基

株式会社ビジネスバンク プレジデントアカデミー編集部

株式会社ビジネスバンク
プレジデントアカデミー編集部

起業家インタビューEntrepreneur事業部 事業責任者

起業家インタビューEntrepreneur事業部
事業責任者

早稲田大学 商学部 井上達彦 研究室