「売上はあるのに、なぜか不安が消えない」
「忙しさは増すばかりで、手元に利益が残らない」

もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、一度立ち止まって考える必要があります。
あなたは普段、何を基準に会社の健康状態を判断していますか?

経営の成否を分けるのは、小手先のテクニックではなく、経営者自身の「マインド(心のあり方・判断の前提)」です。

本記事では、経営の現場で成果を上げ続けているリーダーたちに共通する要素を、独自の「経営者マインド診断」として体系化しました。まずは、あなたの経営者マインドが現在どのような状態にあるか、客観的にチェックしてみましょう。

1.あなたの「経営者としての器」を測る15のチェックリスト

経営におけるあらゆる問題の源泉は、経営者のマインドにあります。
以下の15項目は、健全な成長を続けるリーダーが共通して持っている思考の習慣です。直感で「Yes」か「No」で答えてみてください。

MANAGEMENT OS CHECK 経営者マインド15のチェックリスト

経営者としての不安の正体は、「何が欠けているか分からない」という不透明さにあります。
以下の15項目で、理想とされる「経営者としてのOS(理想のマインド)」をどれだけ実装できているか診断してみましょう。

1. 未来構想

未来を先取りする構想力

今日、緊急ではないが重要な「3年後のビジョン」について考える時間を、15分でも確保しましたか?

利益を生む投資家視点

経費を単に「削るもの」としてではなく、未来の利益を生むための「投資」として捉え判断できていますか?

過去を捨てる革新性

過去の成功体験に安住せず、それを疑い、あえて今、新しいリスクを取りに行っていますか?

2. 決断基準

不完全を許容するスピード決断

100%の情報が揃うのを待つのではなく、7割の確信が得られた段階で「即決」していますか?

止める勇気と撤退の英断

利益を圧迫している不採算事業や、形骸化した古い慣習を「やめる」とはっきり決断できていますか?

感情に流されない客観視

感情や周囲の顔色に流されず、常に「客観的な数字」を全ての判断の起点にしていますか?

3. 組織構築

任せて見守る忍耐力

自分でやった方が早い仕事であっても、部下の成長のためにあえて任せ、手を出さずに見守っていますか?

人を責めず仕組みを疑う視座

ミスが発生した際、個人の責任を追及する犯人探しではなく、「仕組みの不備」に目を向けて改善していますか?

魂を吹き込む求心力

会社の存在意義(パーパス)を、借り物の言葉ではなく自分の言葉で、社員に語り続けていますか?

4. 自己変革

全てを自分事にする自責思考

業績低迷などの要因を「景気」や「社員」のせいにせず、すべて自分の責任として捉えていますか?

常に学び続ける知的好奇心

自分の殻に閉じこもらず、異業種や最新の経営理論を学ぶ時間を、週に数時間は確保していますか?

組織を安定させる精神的支柱

不安や怒りに流されず、リーダーとして常に安定した「機嫌の良さ」を保てていますか?

5. 顧客と社会

現場の声を聞く謙虚さ

会議室に籠もらず、定期的に顧客の現場に足を運び、耳の痛い本音を直接聞いていますか?

社会とつながる大義の自覚

自社の事業が「誰を救うためのものか」という大義を、社員に対して具体的に示せていますか?

裸の王様にならない客観性

裸の王様にならないよう、自分の間違いを率直に指摘してくれる社外のメンターを持っていますか?

1-1.【診断結果】あなたの経営者マインドの現在地

「Yes」の数によって、現在のあなたのマインドバランスを可視化します。

● 12〜15個:【ビジョナリー・リーダー】
経営者としての高い視座と、健全なマインドが整っています。今の課題は、そのマインドをいかにして「次世代の幹部」に継承し、組織全体の文化に昇華させるかです。3章のアクションを組織の「共通言語」にするフェーズにあります。

● 7〜11個:【葛藤する実力派オーナー】
経営者としての自覚はあるものの、「過去の成功体験」や「現場への責任感」がブレーキになっています。特に「任せて見守る忍耐力」や「止める勇気」にNoがついた場合、そこがあなたの「器の限界」を突破する鍵になります。

● 0〜6個:【経験依存のトッププレイヤー】
経営者マインドというより、自身の経験と勘を武器に戦う「職人」に近い状態です。「自責思考」や「不完全を許容するスピード」が不足していませんか?今は良くても、いずれあなたのキャパシティが会社の成長を止めてしまいます。

成功し続ける経営者には共通する特徴があります。詳しくは下記もご覧ください。

2.なぜ、どれだけ頑張っても経営者マインドが「足りない」のか?

1章のリストで「No」がついた項目は、あなたが現在陥っている「思考の停滞」を示しています。
ここで言う停滞とは、決して「怠けている」ことではありません。むしろ、「プレイヤーとしての古い成功体験に縛られ、経営者としての脱皮が止まってしまっている」という、非常に真面目な経営者ほど陥りやすい状態を指します。

2-1.「決断」が足りないあなたは、正解を求めて「現状維持」を選んでしまいがち

「未来構想」や「決断基準」に課題がある方は、無意識に「完璧な正解」を求めて判断を先送りしています。
リストにある「不完全を許容するスピード決断」ができないのは、失敗を恐れているからです。

しかし、経営における情報の100%充足は永遠に来ません。慎重に検討を重ねているつもりでも、その間に「過去を捨てる革新性」を失い、チャンスを逃すことは、実質的に「現状維持=衰退」という重大な決断を毎日下しているのと同じです。「決めないこと」自体が、最大のリスクになっている事実に気づく必要があります。

2-2.「組織」が作れないあなたは、優秀さゆえに「部下の仕事」を奪ってしまいがち

「組織構築」に課題がある方は、皮肉にも「あなた自身が優秀すぎること」が組織の成長を止めるボトルネックになっています。
「任せて見守る忍耐力」を持てず、部下の仕事に手を出してしまうのは、あなたの現場能力が高いからです。

しかし、社長が正解を出し続ける限り、社員は「社長が何とかしてくれる」と学習し、思考を停止させます。社長が最も仕事ができる状態は、組織にとって「明日社長が倒れたら終わる」という最悪のリスクです。人を責める前に、自分の有能さが社員の成長機会を奪っていないか、問い直すべきです。

2-3.「変化」が足りないあなたは、孤独を美化して「裸の王様」になってしまいがち

「自己変革」や「顧客と社会」に課題がある場合、孤独に耐えることを経営者の宿命だと履き違え、自分のマインドを外部の刺激から遮断してしまっています。
「裸の王様にならない客観性」や「現場の声を聞く謙虚さ」を失うと、自分の視座は固定化されます。孤独を美学にするのをやめ、あえて「耳の痛い異論」を取り入れない限り、経営者としての器(マインド)は、昨日と同じサイズのまま固まってしまいます。

その他、経営者が陥りがちな課題と改善策については、下記もご覧ください。

3.不足しているマインドを補い、経営者としての「器」を広げる3つの具体策

Screenshot

「明日からマインドを変えよう」と念じるだけでは不十分です。
1章で不足していた要素を補い、2章の罠から抜け出すために、具体的な「行動のルーティン」を導入しましょう。

3.1 決断の質をスピードに変える「7割決断ルール」

1章の「決断基準」のマインドを鍛えるために、「情報が7割揃った時点で必ずGoかNoの決断を下す」というルールを自分に課してください。

完璧を捨てることで、経営者に必要な「不完全を許容するスピード」が養われます。まずは明日、保留にしている案件を1つ選び、7割の判断材料で「決めて」しまいましょう。その決断の積み重ねだけが、数字に基づく客観的な判断力を磨きます。

3.2 余白を作りマインドを刷新する「月曜朝30分の廃棄習慣」

「組織構築」や「未来構想」のマインドを補うには、物理的な「時間の余白」が必要です。
毎週月曜の朝一番に30分間だけ、「もし今日からこの業務を始めていなかったとしたら、今からこれに投資するか?」を自問する「廃棄会議」をカレンダーに予約してください。

そこで見つかった「自分がやらなくていい作業」や「形骸化した慣習」を1つ捨てる。この繰り返しが、「止める勇気」を養い、経営者の視座を維持する余白を作ります。

3.3 器を広げ大義を再確認する「現場との対話・傾聴ルーティン」

「顧客と社会」や「自己変革」のマインドを取り戻すために、あえて「耳の痛い話を聞く会」を設けてください。

週に一度、現場の社員や主要な顧客と1対1で対話する時間を持ち、「私の判断で現場に悪影響が出ていることはないか?」と直接問いかけます。「全てを自分事にする自責思考」を持ち、自分の間違いを認める勇気を持つこと。それが、マインドを「独りよがりの信念」から「社会に求められる器」へと変容させる決定的な一歩になります。

経営者としての「器」を広げるためには、経営を学び続ける必要があります。詳しくは下記もご覧ください。

まとめ:経営者マインドは、今日から作れる

経営者マインドは、限られた天才だけが持つ特別な才能ではありません。
それは、日々の迷いの中で「何を選択し、何を捨てるか」という思考の訓練によって作られる後天的なものです。

1章のチェックリストで「No」が多かったことを嘆く必要はありません。それは、あなたの伸びしろが明確になったという「希望のリスト」です。

さあ、まずは3章で紹介したアクションの中から、「今の自分が最も避けていたもの」を1つだけ選んでください。
そして明日、会社に着いたら一番最初にそれを実行してください。その一歩が、あなたの経営者としての景色を変え、会社の未来を劇的に変える引き金になるはずです。

黒田訓英

監修 / 黒田訓英

株式会社ビジネスバンク 取締役

早稲田大学 商学部 講師

経済産業大臣登録 中小企業診断士

日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)

日本証券アナリスト協会認定CMA

日本ディープラーニング協会認定 AIジェネラリスト/AIエンジニア

JDLA認定AIジェネラリスト/AIエンジニア

ライター / 保坂 太陽

株式会社ビジネスバンク プレジデントアカデミー編集部

株式会社ビジネスバンク
プレジデントアカデミー編集部

起業家インタビューEntrepreneur事業部 事業責任者

起業家インタビューEntrepreneur事業部
事業責任者

早稲田大学 商学部 井上達彦 研究室