今や最先端企業の一つであるAmazon。しかし、Amazonもいきなり大きくなったわけではなく、理由があります。今回は、Amazonのビジネスモデルから、Amazonが世界最先端企業になった理由を考えました。大企業でしかできない成功の秘訣ではなく、中小企業でも活かせる成功の秘訣を考えましたので、ぜひ参考にしてみてください。
紙ナプキンから生まれたシンプルなAmazonのビジネスモデル
まずは、Amazonのビジネスモデルを紹介します。
Amazonはこのビジネスモデルを中心に、良いサイクルを回したことで、世界最先端企業になったと考えられます。このシンプルなビジネスモデルには2つのサイクルが組み込まれています。
Amazonのビジネスモデルの根幹の「成長モデル」
最初に紹介するのは、Amazonのビジネスモデルの根幹ともいえる「成長モデル」です。まずは、中心の4つ「セレクション(品揃え)」「カスタマーエクスペリエンス(顧客の経験価値)」「トラフィック(来訪者数)」「セラー(販売者)」に注目して下さい。
これはビジネスの基本とも言えるモデルでしょう。「セレクション(品揃え)」を増やして、顧客に多くの選択肢を与えることで、顧客が自分にあった商品を(ほとんど限りなく)自由に選べることで、顧客満足度があがります。
そうすると「カスタマーエクスペリエンス(顧客の経験価値)」が高まり、同時に「トラフィック(来訪者数)」が増えます。トラフィック(来訪者数)が増えることで、Amazonに人が集まります。人が集まることは、市場が大きくなることとほとんど同意義なので、そこに「セラー(販売者)」が集まります。
セラー(販売者)が増えると、また「セレクション(品揃え)」が増え、「カスタマーエクスペリエンス(顧客の経験価値)」が高まり・・・という構造になっています。
Amazonが力を入れている「再成長モデル」
成長モデルだけでは、事業は成長しません。事業を指数関数的に伸ばすためには「効率化」が大切です。効率化を行うための戦略が「ローコストストラクチャー(低コスト体質)」と「ロープライス(低価格)」です。
「ローコストストラクチャー(低コスト体質)」は成長モデルでサービスが成長すれば、規模の経済により、1件あたりのコストが低くなるというもの。
一方「ロープライス(低価格)」は競合によって生み出されるものです。Amazonは1つの商品でも複数のセラー(販売者)がいることが多くあります。競合がいることにより、価格の値引きや、低下に繋がります。
ローコストストラクチャー(低コスト体質)、ロープライス(低価格)を実現することにより、カスタマーエクスペリエンス(顧客の経験価値)が更に高まります。
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Amazonが成功した3つの秘訣
次に、上記で紹介したビジネスモデルをもとに、Amazonが成功した3つの秘訣を紹介します。この3つを真似することで必ず成功するわけではありませんが、参考にすることで、事業が大きな成長を遂げるでしょう。
顧客第一主義
顧客第一主義を簡単に言うと「競合の事は考えずに、顧客のニーズや利益だけを追求してサービスを作る」こと。上記で紹介したビジネスモデルがまさにこの「顧客第一主義」を表しています。
通常であれば、競合のことを徹底的にリサーチし、競合が持っていない強みや、競合が把握しきれていないニーズを満たすことを事業に組み込みます。しかし、Amazonでは競合のことは考えずに、顧客のことだけを考えて事業をつくっています。
例えば、1種類の商品でも多くの商品があること(例.枕だけでも数十種類ある)、注文した翌日には商品が届くこと。このような、消費者にとって便利なサービスは消費者のニーズを徹底的に考え抜いた結果、生まれたものでしょう。
上記のビジネスモデルは一度回転すれば、回り続けますが、成長モデルも再成長モデルも「顧客満足」を通過します。これこそがまさに顧客第一主義を表しています。
消費者ニーズへの完璧とも言える対応
ベゾス氏は「低価格」「豊富な品揃え」「迅速な配達」の3つが消費者の重要なニーズと長年言い続けています。「このニーズは今も未来も変わらない」とも言っているのです。
サービスがどんなに発達しても消費者はさらなるニーズを満たしてもらおうとします。例えば、新海誠監督の「君の名は。」2020年11月23日現在、歴代興行収入第5位の大ヒット映画ですが、次の作品の「天気の子」のクオリティは「君の名は。」以上だと期待した人は多いのではないでしょうか。
また、タッチ決済で早く決済できるようになった現在では、前の人が現金で支払うために、財布から小銭を数えるのに時間がかかることに苛立ってしまったりすることもあるはず。
面白い作品を観たら、次はもっと面白い作品が観たい。素早く決済できるようになったから、それまでの決済が遅く感じ、イライラする。
このように、消費者はニーズを満たしてもらうと、さらなるニーズを満たしてもらおうとします。Amazonはそのさらなるニーズを満たすために、停滞せずに日々進化しています。
低価格でいうと、多くの会社や個人が出品できるようにすることで、価格競争を生み出しています。豊富な品揃えは販売者が増えて、市場が大きくなるにつれ、より豊富になっていきます。迅速な配達は通販で一つのネックだった「注文してから、配達までに時間がかかる」ことを払拭し、注文した翌日には商品が届くことを実現させました。
大きなビジョンを達成するためのPDCA
ビジネスで大切なことの一つは「大胆なビジョンを立てること」です。会社の方向性によっては、小さなビジョンを立てることも大切になりますが、グローバルに進出することを考えるときには大切です。
もちろん、このビジョンを達成するために、行動する必要がありますが、Amazonではビジョンを達成するために、PDCAを回しています。それも、大胆なビジョンを達成するような「高速PDCA」です。
1ヶ月後、1週間後などのPDCAではなく、今日何をするかのPDCAサイクルをまわしています。ネットを使ったサービスだと、何人がサイトに訪れたか、クリックしたか、購入したかなどの情報がすぐにわかります。その情報をもとに、サイトのデザインなどを変えているのです。
「大胆なビジョン」という大きなものと「その日何をするのか」という小さなものは、一見、かけ離れているように思いますが「千里の道も一歩から」ということわざがあるように、どんなに大きなビジョンを掲げたとしても、小さな一歩が大切です。Amazonは着実にそしてより早い一歩で進むために高速PDCAを回しています。
まとめ
Amazonのビジネスモデルのことを「滑車モデル」とも呼びます。これは、ビジネスモデル
が滑車のように回っているため、そう呼ばれています。滑車モデルの特徴としては、一度ビジネスが回ったら、滑車のように周り続けやすいこと、シンプルな構造であることが挙げられるでしょう。
みなさんも、ビジネスモデルは難しく考えすぎずに、できるだけシンプルに、そしてビジョンを大胆に設定し、そのビジョンを達成するための方法を考えてみてはどうでしょうか。
【ライター】
佐藤みちたけ
大分出身のライター。起業のワークショップなどを通じて、学校教育に違和感を覚え、高校を中退。その後上京し、17歳の若さでライターとして生計を立てる。現在では、様々な企業や団体でインタビュー記事の執筆や、Webメディアの運営などを行なっている。
【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師
大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。