経営をしていく際に、重要な「投資とリターン」という考え方があります。
より良い事業継続を考えると、投資において、お金を投資して、それ以上のお金が戻ってくるという視点以外の「投資視点」を経営者は持つ必要があります。

経営者が考えるべき「投資視点」のひとつにインパクト投資というものがあります。

最近、インパクト投資という言葉をよく聞くけれど、どんなものなのかがわからないと思っている方も多いのではないでしょうか。

今回は経営者が知っておくべき投資視点のひとつ「インパクト投資とは何か」について説明します。また、インパクト投資と似ているESG投資との違いや具体例についても紹介しますので、最後までぜひご覧ください。

インパクト投資とは

インパクト投資とは


インパクト投資とは、財務的なリターンだけではなく社会的な評価リターンも生み出すことを目指す投資行動のことです。

これまでの投資では、リスクとリターンの2軸が主流でした。これに加えてインパクトの軸も含めるのがインパクト投資です。

インパクトとは、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的な貢献価値のことを指します。

インパクト投資を構成する4つの要素

具体的にどのようなものがインパクト投資にあたるかというと、以下の4つの要素を満たしているものです。

1. 社会や環境の課題解決の貢献を意図している投資であること
2. 社会的なリターンだけでなく、財務的なリターンも同時に目指している投資であること
3. 社会の役に立つ多様な価値や効用のアセットバランスを検討した投資であること
4. 自社や自社の未来価値にインパクト評価をもたらす投資であること

4つ目の「インパクト評価」は聞いたことがあるという方は少ないかもしれません。投資活動によって社会的及び環境的変化及び効用がどれくらい生じたのかを定量的・定性的に把握・評価することです。

インパクト投資とESG投資の違い

インパクト投資とESG投資の違い


インパクト投資もESG投資も、財務的・社会的リターンを求め、社会的にも環境的にもポジティブな変化及び効用を目指すことにおいては、類似しています。

これらの違いは大きく分けて2つあります。

ひとつは意図があるかどうかということ。インパクト投資においては、社会や環境の課題解決への貢献を意図して変化や効用を具体的に目指す内容が盛り込まれます。しかし、ESG投資においては考慮をして良いとされる投資範囲に留まりがちです。そもそもESG投資とは、形態・態度・ガバナンスのあり方を考慮した投資のこと。ESG投資は「考慮」ですがインパクト投資は「意図」して変化・効用を目指す内容となります。

2つ目は目的です。ESG投資の主な目的は長期的なリスクの削減と企業価値の最大化です。一方で、インパクト投資は社会や環境の課題解決による企業価値の向上と事業活動への連動が目的。

インパクト投資とESG投資は結果だけ見れば似て見えることもあるかもしれませんが、そもそもの目的の部分から違うということです。

日本で行われたインパクト投資の具体例

少しずつですが、日本でもインパクト投資に取り組む企業が増えてきました。例えば第一生命保険株式会社では、複数の部署が協業してインパクト投資を行う体制ができており、複数のアセットクラスでインパクト投資に取り組んでいます。

また、株式会社CureAppでは、医療分野をはじめとした、さまざまな分野の課題解決を目指すため、インパクト投資を行っています。

インパクト投資は拡大していく?

インパクト投資は拡大していく?


インパクト投資への関心と注目度は年々高まりを見せています。経営における取り組みとして価値があるのか?結論から申し上げると、これからインパクト投資はさらに拡大していくと予想され、経営者の経営力評価にも大きく影響しそうです。

そもそもSDGsなどの影響もあり、インパクト投資のような社会課題の解決は追い風傾向です。それだけでなく社会変革推進財団の「インパクト投資の国内外の最新動向」によると、世界でのインパクト投資の市場規模は2017年から2022年の間に約10倍になっています。

加えて、2021年度の国内のインパクト投資残高は1兆3,204億円、市場の最大推測値は5兆3,300億円にもなると予想されています。

以上のことから、これから先インパクト投資はさらに拡大していくと考えられます。

まとめ

今回はインパクト投資について取り上げました。インパクト投資は「社会や環境の課題解決を意図していること」「社会的、財務的なリターンを目指していること」「多様な効果的アセットバランスで実施されること」「インパクト評価を行えること」の4つが基本的な要素を考えて実施することが大切です。

経済の注目キーワードとしても急上昇している「インパクト投資」はこれから先、増々拡大していくことが予想されてます。経営においてインパクト投資を自社の未来価値アップに役立てられるよう検討していくことが、まずは必要でしょう。


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