この記事でわかること
・仕事を任せる前に行う8つのステップ
・仕事を任せたのに、上司がつい口出ししてしまうケースを防ぐ方法
・部下を育てながら、任せた仕事の成功率を高めるポイント
・「責任は俺が取る」はなぜ間違っているのか
この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画…「仕事の任せ方編」の第3回目となっています(記事のアーカイブはこちら)。
仕事を任せるメリットや部下に任せるべき仕事についてご紹介してきました。今回は、実際に部下に仕事を任せるにあたって、上司がやっておくべき8つのステップを紐解いていきます。
登場人物プロフィール
【インタビュアー】MEGUMI
とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。
今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。
【専門家】嶋津良智先生
日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。
- 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
- リーダーズアカデミー 学長
- 早稲田大学エクステンションセンター講師
- 他、経歴・著書多数
前回は、上司の究極の仕事は自分の仕事をなくすことであると学びました。私もつい自分でやってしまうことが多く、もっと部下に任せていきたいと思います。
良いですね。でも、いきなり任せてはダメですよ。仕事は、任せる前で8割決まると言えるほど、準備が大切です。今回は、仕事を任せる前の8つのステップをご紹介します。
誰に任せるかを決める
8つもステップがあるんですか?
そうです。仕事を任せてからよりも、任せる前の方が圧倒的に大切で、仕事の成功を左右すると言っても過言ではありません。
まず1つ目に、誰に任せるかを決める。適任者は誰か、誰に任せるのが一番良いパフォーマンスを引き出せるのかを考えます。前回お伝えした通り、その人の強みが生きる仕事を任せていくことがポイントです。
任せ方を検討する
次に、任せ方を検討します。こちらも前回お話ししましたが、丸々委任するのか、コーチングしながらやっていくのか。
本人のスキルが達していない場合は、コーチングしながらやることも検討に入れる必要がありますね。
そうです。全ての権限や責任を渡すことだけが、「仕事を任せる」ということではありません。
目的の明確化
任せる人・任せ方が決まったら、いよいよ仕事の内容についてですね。
はい。まずは仕事の目的を明確化しましょう。なぜこの仕事が必要なのか、なぜこの仕事をあなたにお願いするのか。
なぜその人に任せたいのかを明らかにすることが、部下・上司共にメリットであること、疑問に思った場合は部下も遠慮せずに確認すべきであることを第1回で伺いました。
その通りです!
目標の明確化
目的が明確化されたら、目標の明確化に移ります。いつまでに、何を、どれくらい、どうやってほしいのか。業務内容をお互いにしっかり擦り合わせて渡すということが重要です。
ここをしっかり決めておかないと、後から「ここまでやって欲しかったのに」と齟齬が生まれやすくなりますよね。
そうなんです。仕事を任せたのに上司がつい口出ししてしまうケースはこのすり合わせが甘いことが多いです。仕事の内容と、求める成果を定義づけておけば、認識齟齬は生まれにくいです。
うーん、そう言われると、いかに自分がすり合わせ不足か分かりますね。仕事の主な内容は伝えていても、求める成果までしっかり定義づけていることは少ないです。部下に対して「このレベルまでやって欲しかったのに…」と思うのは、私のすり合わせ不足だなと気づきました。
それに、目標・ゴールイメージが共有できていないと、任された側の部下としても、なんでも上司に聞かないと物事が進まなくなってしまいます。ゴールイメージの共有ができていると、我々はここに向かおうとしているのだから、こういうふうにやった方がもっと早くできるかな、とか、こういうふうにやった方がもっとお客さんの役に立つんじゃないか、とか自分で考えて、自分で動くことができるようになります。
自主性とか自立心とかをしっかり引き出していくためにも、ゴールイメージを共有するということは、仕事を任せる前にやっておいた方がいいと思いますよね。
トラブルを予測、事前にアドバイスする
5つ目のステップは、予想されるトラブルに関するアドバイスをしっかりするということ。致命傷にならないものは指摘せずにあえて本人にミスをさせて勉強させるという方法もあるんですけれど、致命傷になるものはやっぱり上司、先輩として前もってしっかりアドバイスしておいてあげましょう。
トラブルを予測するというのは、経験者である先輩ができることですね。
全てのプロセスを手取り足取り教えるのではなく、ゴールイメージと、そこで起こりうるトラブルへのアドバイスを伝える。ポイントを抑えれば、部下を育てながら、任せた仕事の成功率を高めることができますね。
説明責任について話し合う
なるほど。とても勉強になります!
6つ目のステップは、説明責任について。要するに報連相の内容とタイミングをしっかり擦り合わせておくということです。確認の手順・内容・スケジュールをしっかり決める。
どこまでは部下が自分で決めて、どこまでは上司と確認をしながら進めないといけないのかをすり合わせておくんです。
適宜タイミングを見て報連相してね、なんて言いがちですが、ここもしっかりと決めておくことが大切ですね。
そうですね。説明責任について互いに理解できていないと、後からトラブルが起きて、「なんでもっと早く言わなかったの?」と言ってしまうこともあり得ます。これは互いに不幸です。
おっしゃる通りですね…。
結果責任を部下に渡す
しっかり結果責任を渡すことも重要です。「責任は俺が取るから」なんてセリフをよく聞きますが、これは体裁の良い言葉であって、本当にそれが部下のためになっていないことも多いです。
責任を取ってあげることが上司の仕事だと考えている人も多いと思いますが。
しっかり持たせるべき責任と結果は渡すということが必要です。なぜかと言うと、成長というのは、自分で決断をして責任を取ることだから。決断と責任がセットで成長に繋がるので、責任を取らなかったら成長は半分しか手に入らない。責任を持たせるということも、成長のためには重要なんです。
なるほど。確かに責任を持つということは、それだけ部下を認めている証拠でもありますね。任された側の部下も、責任を持つからこそ、必ずやり遂げようと奮闘する気がします。
権限を渡す
最後に、権限を渡すということですね。仕事だけ任せて権限は渡さなかったら、逆にやる気を奪い取ることになってしまいかねません。
権限は渡す。だからその分、責任も渡す。ここは上司も覚悟を持って向き合う必要がありそうです。
この章のポイント
・一番良いパフォーマンスを引き出せる適任者を決める
・丸々委任するのか、コーチングしながらやっていくのかを決める
・仕事の目的を明確化する
・目標・ゴールイメージをすり合わせる
・予想されるトラブルに関してアドバイスする
・報連相の内容とタイミングを決める
・責任と結果を部下に渡す
・権限も渡す
嶋津式の組織マネジメントをもっと学びたい方へ
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