この記事でわかること
・生産性向上が企業に求められている理由
・日本はなぜ生産性が向上しないのか
・生産性向上に取り組む企業のメリット
・生産性向上と採用の密接な関係性
・生産性の高い人材を雇うための採用基準とは

この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。

今回のテーマは「生産性向上」(記事のアーカイブはこちら)。 

人口の減少や企業・サービスの競争激化、AIの発達など、様々な要因から今、企業には生産性向上が求められています。そもそも生産性向上とは、業務効率化との違いは何なのか。そして生産性向上に取り組むメリットとは何なのか、詳しく解説していきます。

登場人物プロフィール

【インタビュアー】MEGUMI

とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。

今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。

【専門家】嶋津良智先生

日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。

  • 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
  • リーダーズアカデミー 学長
  • 早稲田大学エクステンションセンター講師
  • 他、経歴・著書多数

<プロフィールはこちら>

生産性向上とは
「企業が効率よく利益を上げられるようにすること」
「限られた人員・限られた資源で大きな成果を生み出すこと」
「インプットに対するアウトプットの比率を増やすこと」
などとネットで書かれています。

嶋津さんが定義する「生産性向上」とはどのようなものでしょうか。

生産性向上が求められる時代背景

生産性向上とは、1人あたりのパフォーマンスをあげること。10人で100の仕事をやっていたのを、110の仕事ができるようにすることを、生産性向上と言います。

業務効率化との違いは何でしょうか?

業務効率化とは、時間効率を上げること。100の成果をあげるために10時間かかっていたのを、8時間にするというのが、業務効率ですね。生産性向上はパフォーマンスが軸、業務効率化は時間が軸であるという違いがあります。

企業は、なぜ今「生産性向上」を求められているのでしょうか。

少子高齢化による働き手の不足が今後も加速していく中で、成果をあげていかなければ企業は生き残れないと言うことが明白に見えています。そういった環境で今より高い成果をあげるために、生産性向上が求められているのだと思います。

公益財団法人日本生産性本部生産性総合研究センターがまとめたレポートによれば、日本の生産性は諸外国に比べて低いことがわかっており、2019 年の日本の 1 人当たり労働生産性(就業者 1 人当たり付加価値)は、81,183ドル(824 万円)で、OECD加盟37カ国中26位です。なぜ日本の生産性は低い傾向にあるのでしょうか?

色々な要因があるのでしょうが、僕が感じるのは、無目的で働いている人が多すぎる、ということです。お金や生活のため、いわゆる「ライスワーク」をしている人が多い。でも冷静に考えてみてください。お金のため、生活のために働かない人がいるでしょうか。生活のために働くのはある意味当たり前で、そうではなく、その企業で働く目的や目標を持って働けるようになった時、モチベーションが上がり、生産性が向上するのだと感じています。

目的意識がなければ、同じ時間の中でよりパフォーマンスをあげようとは思えないですもんね。それは時代によって変化しているものなのでしょうか。

今会社でリーダー(マネジメント層)と言われる人たちのボリュームゾーンである40-50代は、誰もが求める目的のために働けていました。例えば偉くなりたい、良い車に乗りたい、マイホームを持ちたい、海外旅行に行きたい、とか。だから会社や上司が明確な目的を持って働けるようにマネジメントしなくても、各々がその目的に向かって働ける世代だったんです。

確かに、そういったわかりやすい憧れというのはなくなって、どんどん多様化してきましたね。

そうですよね。ですから、働く社員1人1人に明確な目的を持って働いてもらうような仕組みを、つまり環境マネジメントをしていかないともう働きたいという人が集まらない時代になっていると思います。

生産性を向上するとどんなメリットがある?

生産性向上を行うと、企業や社員にはどのようなメリットがあるでしょうか。

少ない労力で成果が出せるようになれば、企業は収益が上がります。そうすれば株主の満足度も高まりますし、社員への還元率も高まるので、給料を上げられて社員の満足度も高められる。働く時間も減らせます。さらに、増えた収益をサービスや商品力の向上に充てれば、質の良いサービス・商品を提供でき、顧客にも喜んでもらえます。

株主・社員・顧客の満足度を上げられるのですね。嶋津さんがリーダーズアカデミーで教えられている企業の中で、生産性向上に成功した企業の事例はありますか?

採用の方法を変えたことで、生産性向上に成功した企業があります。

どのように採用の方法を変えたのでしょうか。

元々その企業は中小企業のため、なかなかコストをかけられず、良い人材が採用できずにいました。面接をして、「良い人」ではなく「問題がない人」を選んでいたんです。そこで僕から、採用方法を変えるようにお伝えしました。例えば1人を雇う時、25万円の月給を払うと仮定したら、約2倍のコストがかかります。もし3ヶ月間、「失敗したな」と思いながら雇用を続けたら、150万円のコストがかかるわけです。

決して安くないコストですよね。しかもパフォーマンスを出してくれなければ、生産性は下がるばかりです。

だったら、150万円をかけて採用広告費を増やして、「この人に来てもらいたい」と思える人を採用した方が、絶対に生産性は向上します。その企業の社長は、採用方法を変更してから、「入社後のゴタゴタがなくなり、生産性が向上した」と言っていましたよ。

生産性の高い人材を雇うための採用基準

採用も生産性向上と大きく関係してくるのですね。生産性の高い人材を雇うために、企業はどのような人を採用すべきでしょうか?

会社が採用すべきは、理念が共有できて結果を出せる人です。では、自社の理念を共有できる人とはどんな人なのか。結果を出せる人は、どのような能力を持った人なのか。そういった視点に基づいて考えてみると、面接でどんな質問をすれば良いか見えてくるはずです。

経営理念については、以前お話をお伺いしましたね。(https://www.leaders.ac/creating-an-organization-30

そういった基準を設けずに、なんとなく優秀そうな人や、問題がなさそうな人を採用してしまうと生産性が向上せず、企業にとっても雇用された人にとってもミスマッチが起こります。生産性向上は、採用面接の質問項目の設計から始まっているのです。

次回は生産性向上のために、企業が行うべきステップについてお伺いしていきます。

この章のポイント
・生産性向上とは1人あたりのパフォーマンスをあげること
・少子高齢化が進む現代で、働き手が減る中でも成果をあげていかなければ企業は生き残れない
・働く目的や目標を持って働けるようになった時、モチベーションが上がり、生産性が向上する
・生産性が向上すると、企業の収益が上がる
・企業の収益が上がると、株主・社員・顧客の満足度を上げられる
・採用の手法を変えると生産性が向上する
・会社が採用すべきは、理念が共有できて結果を出せる人

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