この記事でわかること
・自制心がある人とない人の特徴
・誘惑に負けそうな瞬間は、誰にでもある
・アンガーマネジメントで勘違いされがちな「怒る」と「叱る」の違い
この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。今回のテーマは「自制心」について(記事のアーカイブはこちら)。
テレワークが推進され、SNSや情報も溢れている今、どのように自制心を持って仕事に向き合うかは、仕事の効率化に大きく関わるようになりました。怒りの感情をコントロールするアンガーマネジメントも注目を集めるキーワードとなってきています。そんな「自制心」について伺っていきます。
登場人物プロフィール
【インタビュアー】MEGUMI
とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。
今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。
【専門家】嶋津良智先生
日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。
- 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
- リーダーズアカデミー 学長
- 早稲田大学エクステンションセンター講師
- 他、経歴・著書多数
ここ最近だと特にリモートワークが多く、会社ではなく自宅で仕事をする機会が増えました。誰も見ていないからとついついサボってしまうこともあるし、同様に部下もそうなっていないか、リーダーとして不安になる部分でもあると思います。個々にオーナーシップを持たせるような会社も増えている中で、「自制心」が必要とされている時代になっているように感じます。
経営者の方からも、社員の「自制心」育成についてはよくご相談を受けるテーマですね。
自制心とは、自分自身を客観視する力
「自制心」についてインターネットで検索してみると、自制心がない人の特徴として
・感情のコントロールができない
・物事が継続できない
・誘惑に負ける
などが挙げられているようです。
まず、自制心がある人とない人の特徴とは、どんなことでしょうか?
自制心がない人の特徴の1つは、「自分自身を客観視できない人」というのがあると思いますね。
自分自身を客観視、ですか?
はい。自分が今、こういうことをしたら周りはどう思うのだろうか、こういうことを言ったら俯瞰して見ている自分はどう感じるのだろうか。両親が今やっていることを見たり聞いたりしたらどう考えるだろうか。
人の目を気にするというような意味ではないんですけれども、僕なりの言い方をすると、自分で自分のことを客観視する力がないということが自制心のない人の特徴のような気がしますね。
なるほど。確かに自制心を忘れてしまっている瞬間は、客観視できていない時ですね。
例えば、テレワーク中に「もう嫌だなサボっちゃえ」と思った時に、ちょっと待てよと立ち止まる。サボっている自分を見たら、同僚はどう感じるんだろうか。そういう風に客観的に考えられない人は、自分の感情や欲望のままに流されてしまいます。
耳が痛いです…。気づいたらSNSを見ていたり、別のことに気を取られたりしていて、しばらくして我に帰るんですよね…。
誘惑が頭に浮かんだことではなく、どう誘惑をコントロールするかが重要
でもそういった瞬間は、誰にでもありますよ。
本当ですか?嶋津さんにも?
もちろんです。きっとビル・ゲイツにもイーロン・マスクにもあるでしょうね。でもそこで自制心を持って自分を律することができるかどうかが重要なんです。
サボりたくなるのが問題なのではなく、サボりたいと思った後にどう行動できるかがポイントなんですね。
その通りです。誘惑をマネジメントして、自制心を取り戻せるか。例えば普通の人が10回のうち7回誘惑に流されるとして、3回しか流されない人間が、効率的に仕事ができて、優秀だと言われるんです。その割合の違いですよ。そこは自制心が何かを知っているかどうか、それをコントロールする方法を知っているかの違いでもあります。この辺りは、次回以降に学んでいきましょう。
よろしくお願いします!経営者側としては、いかに社員に自制心を身につけてもらうかも気になるところです。全4回の中でたっぷり伺っていければと思います。
「怒る」のはただの感情の暴力
テレワークでいかに誘惑や感情に負けないか?といったことも「自制心」だと言えると思いますが、対コミュニケーションというところでは、アンガーマネジメントも自制心の一種だと思います。
“なんでできないんだ”というもどかしさがあったり、自分はそうやって怒られることで成長してきたと思い込んでいる上司が指導のつもりだったりして、怒りをぶつけてしまう。すると部下はパワハラに感じて嫌な思いをしたり、圧力をかけられたと感じてしまったり…といったケースはよく見られますが、どういったことが要因なのでしょうか?
こういった事態を改善するためには、「自制心」をどう身につけたら良いですか?
これは「怒る」と「叱る」をしっかり区別するということがポイントですね。怒るというのは自分軸で考えられた感情の暴力であって、全く指導ではありません。怒りの感情を押し付けているだけです。
一方で、「叱る」ことには怒りという感情の暴力は必要としません。例えばMEGUMIさんが何かミスをした時に、「何をやってるんだ!」と怒りの感情をぶつけなくても、「今こういう風にやったことでこういう問題が起こったけれど、そういう結果を招くと想像してた?今後はどうしたら良いと思う?」と伝えれば、伝えたいことは伝わりますよね。
確かに。伝わる上に、自分でもどうやったら良かったのか、考える視点をもらえますね。ミスをした時は、ミスをした側も「どうしよう」「自分はだめだ」と自制心を失ってしまいがちなので、そうやって冷静に叱ってもらうと叱られた側も客観的な視点を取り戻せるように感じました。
良い気づきですね。今の若い人は怒られたくない、なんて言われますが、若手の社員の方に、上司に何を望むか?というアンケートで必ず出てくるのが、「良くないことをやったらちゃんと叱ってほしい」ということ。どんな世代でも、ミスをしたら直したいし、成長したい。
リーダーはそういった若手を育てなければ、会社の成長は断たれてしまいます。自分の方が経験が多いからこそ、伝えられることもあるはず。叱らないのではなく、怒りと叱りを区別して、しっかり叱る。これが今のリーダーに求められていることです。
ありがとうございます。次回は「自制心を鍛える」ということについて伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。
この章のポイント
・自制心とは、自分自身を客観視する力
・自分の言動を、周りの人間や両親がどう思うかを想像する
・誘惑に負けることは誰にでもある。どうコントロールするかが重要
・怒りと叱りは別物として区別する
・怒らずに、叱ることがリーダーに求められている
嶋津式の組織マネジメントをもっと学びたい方へ
インタビューでは語りきれなかったより詳しい内容を網羅した、オンライン動画コンテンツを無料で提供しています。嶋津式の組織マネジメントをもっと学んでみたいという方は、ぜひ合わせてご覧ください。