この記事でわかること
・社員が自制心を持って働くために、出社とリモートワークのどちらが良いのか
・1人1人の社員に適した環境を見つけるためには
・仕事相手が感情的になりやすい場合、どう接するべきか
・部下に対して指導する時に使える思考法
この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。今回は「自制心」の第4回目となります(記事のアーカイブはこちら)。
前回は感情をマネジメントし、「自制心」を身につけるためのコツを伺っていきました。今回は自分自身だけでなく、仕事相手や部下などが「自制心」を持って働く組織をどう作るかについて、一緒に考えていきましょう。
登場人物プロフィール
【インタビュアー】MEGUMI
とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。
今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。
【専門家】嶋津良智先生
日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。
- 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
- リーダーズアカデミー 学長
- 早稲田大学エクステンションセンター講師
- 他、経歴・著書多数
前回は自分の「自制心」を身につけるためのコツを伺いましたが、経営者としてはいかに組織が「自制心」を持てるようになるかも気になります。
テレワークが推進されたことで、より課題感を持つ経営者は増えていますね。
重要なのは、出社するか・リモートワークかではない
出社時間の短縮や、子育てなど様々な生活スタイルへの対応を踏まえると、リモートワーク推進の必要性は感じるのですが、やはり社員が「自制心」を持ってしっかり働いてくれているかは気になってしまいます。
あるデータによると、企業の7割は社員・部下を出社させたいと答えているのに対し、社員の7割はリモートワークを継続したいと答えているんです。企業の経営層・マネジメント側と社員側で大きなズレが発生しています。
でも大切なのは、出社させるか・リモートワークをさせるかではありません。企業の目的は、社員1人1人の最高のパフォーマンスを引き出すことです。
確かに。つい全社で出社かリモートワークか、という2択の議論になっていました。本質的ではないですね。
その通りです。社員にはそれぞれの特性があり、出社した方が効率的に仕事できる人もいれば、リモートワークの方が効率的だという人もいます。出社した方がパフォーマンスが上がるなら出社させるべきだし、リモートワークの方がパフォーマンスが上がるならリモートワークにするべきです。重要なのはどちらにするのかではなく、社員1人1人にとってどちらが良いのかを、本人もマネジメント側もいち早く知ることです。
社員が最高のパフォーマンスを出せる環境がどこかを知るということですね。
はい。とは言え人間は弱いもの。誰も見ていなかったらサボってしまうものです。そういった時は、前回自分をマネジメントする方法としてお伝えしたのと同じように、朝会をやって社員の日報や目標をシェアする時間を作ったり、1日のどこかのタイミングで定期報告をしてもらったり、仕組みで工夫すると良いでしょう。
部下だけに報告させると監視されている感が出てしまいそうなので、経営層もシェアすると良さそうですね。自分自身のマネジメントにもなりますし。
良いですね!監視されていると感じると、誰でも萎縮してしまったり、マイナスな感情になってしまったりするものです。それは出社していても同じですね。全ては良いパフォーマンスを発揮してもらうために、という基準で考えてみてください。
1人1人の社員に適した環境を知るには?
1人1人のパフォーマンスが出せる環境がどこかを知るためにはどうしたら良いでしょうか?
まずは1人1人と話して、どんなタイプなのかを知ること。1on1などの時間を設けるのも良いです。
本人はリモートワークを望んでいるけれど、パフォーマンスが出せるのは出社、といった場合はどうしたら良いでしょうか。
例えば1ヶ月リモートワークを試してみて、設定した目標に達することができなかったら出社する、という約束にしてみてはいかがでしょう?リモートワークを続けたかったら、結果を出すはずです。
それでリモートワークでパフォーマンスが出せるようになればそれで良いですもんね。
その通りです。もし目標が達成できなければ、出社を認めざるを得なくなります。
「自制心」が身についていない仕事相手との接し方とは
社員はもちろん、仕事相手が「自制心」を持っているかどうかも、組織においては重要だと思います。感情的になりやすい、例えばすぐに怒ってくる仕事相手なんかはとても厄介です。とは言え仕事相手なので指摘するというわけにもいかず…こういう時のコツはありますか?
まず大前提として、他人は変えられません。でも、自分を変えることはできます。MEGUMIさんは今、「自制心」を持てていない相手の“感情”にフォーカスしていませんか?
していますね…。相手が怒っていることに対して意識が向いています。
相手の感情にフォーカスすると、こちら側まで巻き込まれてしまいます。怒られたことに意識が向くと、自分自身も否定された気分になってしまう。でも相手はMEGUMIさんという人間を否定しているのではなく、何か意見や仕事の内容に対して否定をしているわけですよね。
なるほど。確かに相手が感情的だと、“なんでそんな怒るんだろう”と悲しく思えてきて、気づくと自分も感情的になっています。
巻き込まれていますよね。MEGUMIさんまで感情的になる必要はないのですよ。怒っている“こと”が何かを考え、それに対して誠実に対応すれば良いだけです。「人」と「こと」を分けるということです。
行動や事柄、仕事内容など、「こと」にフォーカスするんですね。
はい。これは部下に対して指導する時にも使える思考法です。部下が何かミスをした時に、「あなたが悪いんじゃない。あなたのやったことが悪いんだ」と伝える。その「人」がミスをしたから怒っているのではなく、その人がやった「こと」に対して問題だと捉えていることを伝えるんです。
なるほど!これが伝わると部下も無駄に嫌な気持ちにならずに済みますね。「自分のだらしなさがいけないんだ」と責めてしまって、上司としては「そういうことじゃないのに…」と悩んで、お互いに不幸になっていた気がします。
そうですよね。「人」ではなく「こと」が問題なのだと理解してもらえたら、今後他の人も同じミスをしないよう、一緒にどう仕組みを変えるべきかを考えることができます。そうすれば組織にとっても将来のミスやトラブルを防いでいける。「人」と「こと」を分けると、自制心を持った組織に育っていけますよ。
「自制心」を持った組織に育てていけるよう、仕組みを見直したいと思います。ありがとうございました!
この章のポイント
・企業の目的は、出社するかリモートワークをするかではなく、社員1人1人の最高のパフォーマンスを引き出すこと
・1人1人が適した環境で働けるよう、1人1人のタイプを知る
・「自制心」を持てていない相手の“感情”にフォーカスしない
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