この記事でわかること
・自社に合った評価制度を選ぶ方法
・ティール組織やノーレイティング評価について
・社員が納得する評価制度を設けるために意識すべきこと

この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。

今回のテーマは「評価制度」(記事のアーカイブはこちら)。 

評価制度には様々な種類がありますが、どれが一番適切なのでしょうか。評価制度の種類と選び方について考えていきましょう。

登場人物プロフィール

【インタビュアー】MEGUMI

とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。

今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。

【専門家】嶋津良智先生

日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。

  • 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
  • リーダーズアカデミー 学長
  • 早稲田大学エクステンションセンター講師
  • 他、経歴・著書多数

<プロフィールはこちら>

前回は、評価制度の目的と重要性についてお話を伺いました。
評価制度には、MBO(目標管理制度)、OKR(目標と成果指標)、360度評価、コンピテンシー評価、ノーレイティングなどがあると言われています。多様な価値観、働き方が増えている昨今、どのような評価制度を選べば良いのでしょうか。

評価制度の正しい選び方とは?

様々な評価制度がありますが、良い・悪いではなく、自社に合った評価制度を導入する必要があります。そのためには、経営を全体で俯瞰して見てみなければいけません。企業というのは、経営理念があり、経営理念を追求するための戦略があり、戦略を実行するための組織があり、組織を円滑に回すための仕事があり、仕事に携わる人がいます。人の評価を決める際も、この経営の全体像をまず理解しましょう。

社員を評価するのも、企業が掲げる経営理念を達成するために必要なことですね。

そうです。ですから、例えば和を尊ぶという経営観がある企業が求める人材は、協調性の高い人材ですよね。なのに成果主義的な評価制度を取り入れてしまうと、非常に不適合です。一方で、自律と責任感を重視する企業の場合は、競争性の高い人材が求められますし、成果主義的な評価制度が上手く機能します。

成果主義的な評価制度が良い・悪いではなく、企業が求める理念や人材に合う評価制度かどうかが大切なんですね。

その通りです!そもそも入り口の採用戦略も企業が求めるビジョンを達成するために、どんな能力を持った人材を採用するかを元に決めるものです。ですから出口の評価制度も、それを正しく評価できるものでなければいけません。

全てに一貫性を持って意思決定をしていかなければいけないんですね。

例えば「優秀そうだからとりあえず採用しておこう」とか「最近こういう教育が流行っているからやってみよう」とか「クラウドでできる評価制度が便利そうだから導入してみよう」とか、その場しのぎ・場当たり的な経営をしていると、社員に対しても説明ができませんよね。なぜその人材を採用し、なぜその教育研修を行い、なぜその人事評価制度を導入したのか。経営の全体を見て経営していれば、全て説明がつきます。

そうすれば、社員たちにとっても納得感のある評価制度になりますね。

管理職のないティール組織は理想的?

最近ではアメリカ企業を中心に、ヒエラルキーを設けないティール組織や、評価制度においてランクづけを行わないノーレイティングも広まってきているようです。

もちろんそれで成功している企業もありますが、Googleではティール組織を導入したところ、社員からマネジメント・意思決定してくれるリーダーが必要だという声が挙がり、管理職を復活させました。企業文化を伝えていくためにも、リーダーが必要だという結論に至ったようです。コロナ禍でテレワークも一気に促進されましたが、現在では一定数出社を求める企業も多いですよね。

やはりリーダーがきっちりメンバーを管理していくというのはある程度組織に必要なのでしょうか。

僕はそう思いますね。そもそも、経営と社員というのは相反する関係にあるんです。経営は最小のコストで、最大の利益を上げたい。一方社員は、最小の労力で最大の給料をもらいたいですよね。そんな中で、1つの思いを共有してやっていく環境を作らなければいけません。

だからこそ、企業理念が必要であり、企業理念に沿った教育や評価が必要なんですね。

全ての数字を数値化し、評価の基準を明確にする

僕は今まで様々なコンサルティング会社に評価制度の作成を依頼してきましたが、一番良かったと感じたのは社員が10名程度の会社を運営している時に僕自身が作ったものでした。

どういった点が良かったのでしょうか。

やはり現場を理解している僕が作ったので、現場に即しているものだったのだと思います。また、意識したのが評価の基準の明確さです。リーダーになったら数値化できない仕事はないという信念を持つべきです。例えば総務や事務の仕事は数字の目標がないから数値化できない仕事だと言われますが、それは経営者の怠慢だと思います。

数値化すれば、評価も明確ですね。どのように数値化していけば良いのでしょうか?

まず「状態目標」を定めます。この部署ではどういう状態を作り上げたら100点なのかを明確にするんです。100点の「状態目標」が決まれば、これが欠けたら90点、これが欠けたら70点、逆にこういった状態が加わったら120点と、状態をどんどん数値化していきます。

なるほど。まずは部署全体の「状態目標」と「状態」を数値化していくんですね。

その上で、Aさんはこういう役割で、こういう状態を作り上げたら100点と、部署を構成する社員たちに役割を割り振っていきます。そうすれば、社員たちの仕事を数値化することができますよね。

社員にとっても自分の役割が明確ですし、何を頑張れば評価されるかが分かりやすいです。

管理職の人たちに自分の部署が何を達成したら100点なのか書き出すように言うと、意外に曖昧な人が多いです。まずは部署全体、そこから1人1人の役割を分解して評価に落とし込んでいく。全員が100点を取れば部署全体も100点になるはずです。

前回の評価制度の目的と重要性についてお話を伺った際にも、評価をフィードバックする上司が重要だというお話がありましたが、やはり評価制度ではいかに評価する上司が評価軸を明確にするかがポイントなのですね。

この章のポイント
・評価制度に良い悪いはなく、自社に合う評価制度を選ぶ
・評価制度は企業理念と求める人材に紐づいていなければならない
・経営と社員は相反する関係にある
・数値化できない仕事はない
・部署の「状態目標」に合わせて成果を数値化し、明確な評価基準を持つ

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