ネルソン・マンデラ氏に学ぶ、成功するリーダーに必要な10の条件 | |
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投稿日: 2013/12/16 | カテゴリー: 人間力・思考力 |
はじめに
歴史上、たくさんのリーダーが時代を担い、世界に変革を起こして来ました。2013年12月6日に訃報が伝えられたネルソン・マンデラ氏も、そんな“世界を変えた”伝説のリーダーの一人です。今回はそんなマンデラ氏が人生を通して貫いた15の行動哲学から、リーダーに必要な10の条件をお届けします。
INDEX
0.ネルソン・マンデラ氏とは?
1.勇敢に見える行動をとれ
2.常に冷静沈着であれ
3.先陣を切れ
4.背後から指揮をとれ
5.原理原則と戦術を区別せよ
6.相手の良い面を見い出せ
7.しかるべきときにしかるべく「ノー」と言え
8.長期的な視野を持て
9.「負けて勝つ」勇気を持て
10.すべての角度からものを見よ
0. ネルソン・マンデラ氏とは?
マンデラ氏の歩んだ人生はまさに波瀾万丈なものでした。1952年、南アフリカの初の黒人法律事務所を設立。その後、弁護士として成功を収めます。順風満帆な人生かと思えた矢先、1961年に「民族の槍」という軍事組織を作り司令官に就任。アパルトヘイト制度(黒人と白人を差別する制度)の撤廃に向けた運動を始めます。1962年、その活動により国家反逆罪に問われて逮捕。終身刑を言い渡され、ロベン島という孤島の刑務所に収監されます。
その後、刑務所で過ごした時間は、なんと27年間。絶望的な環境の中でも光を見失わず、マンデラ氏は可能性を信じて自分の信念に生き続けます。1979年、収監中にインドの「ネルー賞※1」を受賞、1988年には欧州議会の「サハロフ賞※2」を受賞するなど、海外からの注目を集めます。
※1 世界の人々の間で、国際理解、親善と友好の促進への顕著な貢献のために贈られる賞
※2 人権と思想の自由を守るために献身的な活動をしてきた個人や団体をたたえる賞
1989年、政府との秘密裏の交渉の果てに、当時の大統領フレデリック・デクラークと黒人として初の会談を実現。1990年に釈放されます。収監からは27年の月日が流れていました。釈放後はデクラーク大統領と共にアパルトヘイト制度撤廃に向けて南アフリカを導き、1993年にはノーベル平和賞を受賞。
1994年には南アフリカ初の民主主義選挙によって大統領に就任します。その後も差別撤廃、格差是正、経済対策など、南アフリカの民族統一と成長に人力した人物。自分の信念を貫き、人種を超えて人々を導くリーダーシップを発揮したマンデラはまさに現代の「英雄」と呼ぶにふさわしい人物です。
それでは、そんなマンデラ氏から、リーダーに必要な10の条件をお届けします。
1.勇敢に見える行動をとれ
勇気とは、天性の資質でも学習して得るものでもない。ましてや、勇敢になるための方法論など存在するはずもありません。勇気とは、自らの意思によって選択するものです。勇敢さは、選ばれた者だけが持つ資質ではありません。試練の大小はあるものの、人間は皆それぞれの立場で何かしらの試練と直面しています。
勇気とは、恐れを知らないということではありません。「抱いた恐れを克服していく意思を持つ」ことこそが勇気なのです。恐れを感じないというのは愚かな証拠。勇敢さとは恐れに負けないことを言います。
はったりでも良い。勇敢に物事に立ち向かってください。その行動こそが勇気の証になるのです。
日々続く困難な状況下において、恐怖心に負けることなく不安に苛まれながらも確固たる自己を失わない。こうした勇敢さこそ、私たちが行動で示していくべき勇敢さであり、私たちにはそれができる。私たちに求められているのは、こうした日々の勇気ある行動なのです。
2.常に冷静沈着であれ
「急いではならない。
まずはじめに、物事を深く考えて分析しなさい。行動するのはそのあとだ」
冷静さを欠くということは、物事に対するコントロールを失うことであり、それはすなわち、事態収束から遠のいてしまうことを意味します。緊張度の高い状況においてこそ「冷静さ」は欠かせません。難しい問題が発生したときこそ、拙速(せっそく)にならずあらゆる可能性を考慮に入れて、冷静沈着に向き合う。そして、熟考の末に答えにたどり着く。リーダーは、そういう姿を見せるべきです。
危機にあっても禅僧のように落ち着いており、自分の周りだけは時間がゆったりと流れる。それが理想のリーダーの姿です。ときに「落ち着いている人」という表現が「退屈な人」という意味につながることがありますが、お調子者で感情に波がある人間よりも、退屈でも安定している人間のほうがリーダーとして優れています。たとえ退屈だとしても、透明で信頼できる人間であることのほうが大事なこと。人々の信頼を勝ち取ることが、表面的な魅力で魅了するよりも重要なことです。
意思決定の際には、すべての可能性を吟味し、時間をかけて考えることが必要です。実際には、すべての原因と結果を考慮にいれて考えることなど、それにかかる時間を考えると不可能なことかもしれません。それでも、行動を起こす前に、十分に思慮をめぐらせることは替えがたい価値があるのです。
3.先陣を切れ
リーダーは常に先陣を切るリスクを負うべきです。兵士であれば、塹壕(ざんごう)から最初に飛び出して攻撃の先陣を切り、戦場を駆け抜けるようなリーダーに、人はついて来ます。リーダーのあるべき姿とは、自ら先陣をきることはもちろんですが、先陣を切っているという事実を「他人が理解できるようにする」ことも含まれています。いくらリスクを取り、先陣を切っていても、仲間たちがそれを把握できなければ、後塵を拝しているのと同じです。
一方で「先陣を切るリーダーシップ」とは、注目を浴びる行動だけを指すのではありません。リーダーとして特別な扱いを受けるのではなく、皆がやりたがらないような面倒なことも、皆とともにするということです。リーダーは先陣を切りはするものの、仲間との間には“上下関係”をつくるべきではありません。
それでもリーダーには、一人で意思決定をし、行動しなければならないときがあります。その行動には説明責任が伴います。自分が意思決定をしたのなら、結果責任も自らが負う。たとえそれが失敗に終わっても、責めを負うべきは自分なのです。
行動の結果として、組織と対峙しなければならないときがあるかもしれません。このとき、リーダーが問うべきことは「自分のとった行動が真に活動のためだったかどうか」です。
先陣を切るリーダーシップとは、時に、自らが犯した過ちを認めることでもあります。長い間、手をつけられずにいた問題に気がついたとき、やるべきことは一つ。過去の過ちを認めてやり直すこと、ただそれだけです。
4.背後から指揮をとれ
リーダーはある種の「象徴」にすぎません。自分一人が常に最前線に立ち続けることは不可能です。他者に権限移譲をしていかない限り、大きなゴールにはたどり着けません。偉業を成し遂げるためにはチームが必要です。
チームの一人ひとりが持っている能力を最大限に引き出すためには、皆が「ゲームに参加している」と感じることが必要です。そのためにはチームメンバー全員に「自分たちがリーダーの意思決定に影響を与えているのだ」という当事者意識を持たせることが重要となります。助けを求められると人間は「自分が尊重されている」と嬉しく感じるものです。リーダーは心からチームを“頼ること”を心がけましょう。そのお返しに、チームメンバーは尊重してくれたリーダーへの忠誠心を高めるのです。
リーダーシップの要諦(ようてい)は、あるゴールに向かって人を動かすこと。具体的には、人々の考え方や行動の方向性を変えることです。すなわち、リーダーには、先陣を切って人を導くことだけではなく、人々の話に耳を傾けること、そして、人々の合意形成の助けとなることが求められます。
リーダーのあるべき姿とは、自説をとうとうと述べたり、自分の意見を人に押し付けたりする姿ではありません。他人の意見をよく聞き、要点をつかみ、人々をある方向に向かわせることです。例えば、会議を開く際に重要なことは「意見があれば誰でも発言できること」。他の者がリーダーに対して面と向かって批判を口にできるのが健全な状態です。
リーダーは参加者の意見を十分に聞いた後で、ようやく自分の意見を口にすることができます。議論を鎮めるためには辛抱強く反対意見に耳を傾けることが肝心で、しっかり聞く必要があるのです。他人の意見をよく聞き、要点をつかみ、人々をある方向に向かわせることこそがリーダーの仕事なのです。
5.原理原則と戦術を区別せよ
原理原則とは「絶対」のもの。一度決めたものは変えることはありません。それに対して戦術・戦略とは「相対」のもの。状況に応じて臨機応変に変えていくものです。革命を推し進めるリーダーたるもの、信念と原理原則を語るべきであり、世論や細かい戦術などについては語るべきではありません。緻密な戦略はもちろん必要ですが、それを「表に出さない」努力が必要となります。
ゴールへの到達こそが、求めるものです。その他のことは二次的な要素にすぎません。ゴールにたどり着くことができるのであれば、妥協も、譲歩も、戦略転換も厭わない気持ちを持ちましょう。状況が変われば、とるべき戦略も、思考法も変えていく必要があります。それは信念のブレではなく、現実主義敵思考というものです。
6.相手の良い面を見い出せ
「悪い人間である」ことを証明する出来事が起こらない限り、すべての人間は良い人間です。人間の悪い面だけを見てはいけません。この世には完全な悪人も完全な善人も存在しないからです。だから、他人についての批判は口にしないようにしましょう。
人間性に欠けているように見える人物は、生まれながらにしてそうなっているわけではありません。それは、育った過程、周りの環境、受ける教育などによって植え付けられたもの。状況がそうさせているに過ぎないのです。ネガティブな面には注目せず、常に物事の良い面を見ようとし、建設的な学びを得ようとしましょう。
マンデラは、次のように言っています。
たしかに私は人のよい面を見すぎているかもしれない。しかし、そのような批判を私は甘んじて受け入れる。なぜならば、私は、他人の良い面を見ることは有益だと確信しているからだ。相手を誠実で信用できる人物であると考え、その前提で自分も相手に対して誠実に行動するべきだと考えている。なぜなら、人の誠実さというものは、誠実な人間にこそ引き出せるものだからだ。
「良い人間だ」と信じて期待をかければかけるほど、人は本当により良いものになっていきます。時に批判を受け、裏切りにあうかもしれません。それでも人を信じ、良い面を見て、期待をかけることを忘れないようにしましょう。
7.しかるべきときにしかるべく「ノー」と言え
耳当たりの良い適当な答えを出して、その場をごまかしてはいけません。すでに答えが「ノー」決まっているときは、そのまま「ノー」と伝えます。言うべきときに「ノー」と言わないことこそが、後々、相手にとって、かえって事態を悪化させることになるのです。
「ノー」を伝えるときは相手の感情に配慮し、出来る限り丁寧に伝える努力をしますが、すまなそうな態度は必要ありません。まどっろこしい言い訳もしない方が良い。言い訳は、不信感のもとになります。また、あいまいな「ノー」は、ストレートな「ノー」よりも人を傷つけるものです。
一方で言う必要のない「ノー」は言わないようにしましょう。例えば「山登りは好きですか?」と聞かれたら「嫌いではない」と応える。もし「嫌いだ(ノー)」と答えて、相手が山登り好きだったならば、相手は気まずい思いをするだけです。応える必要のない問いかけには、応える必要はありません。
ただし、自分が問題に向き合いたくないがために、意思決定を先延ばしにすることはやめましょう。その問題に向き合い、選択し、明らかにする。それが長期的に見れば、問題解決の近道となります。
8.長期的な視野を持て
早急な行動は誤った判断につながります。常に落ち着いて行動することが重要です。成果の報酬を受け取るためには、忍耐が必要となります。歴史というものは、多くの年月を積み重ねて作られてきたものであり、一朝一夕には変えられないものです。
現代の社会では、素早い行動を美徳とし、スピードを重視するあまり努力の結果をすぐに求めがちです。また、成果から得られる報酬をいち早く手にしようと焦るあまり、視野が短期的になる傾向がある。目の前のチャンスをとにかく早くつかもうとして、よく考えることもせずに、答えを出してしまうことは危険です。「見かけだけの緊急性に迫られて、適切なタイミングの前に意思決定をしていないか」常に考える必要があります。
もちろん、チャンスを掴むためには、スピードが大事な場合もあります。しかし、十分に時間をかけて行動し、機が熟すのを待つ方がより良い結果を得られることが多いのです。意思決定が早く、決断力のある人間だという印象を与えるためだけに、性急に行動することは慎みましょう。一見、遅鈍なように見えても慎重なほうが良いのです。
「決断力のある人物」というのは、意思決定のスピードが速い人という意味ではありません。本当の意味の決断力とは、十分な時間をかけて幅広い角度から分析し、必要とあらば自分の温めていた考えを曲げてでも、最善の判断をする力を指すのです。
私たちは、目の前の問題を解決することに追われてしまい、大局的な問題の存在を忘れてしまいがちです。常に長期的視野に立って、先にあるゴールを見つめることを忘れないようにしましょう。物事が進んでいくスピードよりも、物事がどこに向かっているのかという方向性が最も重要なのです。
9.「負けて勝つ」勇気を持て
意思決定が、目的にそぐわない結果を引き起こすとわかったときには、その決定を覆すことを厭わない。また自分の決断について議論を戦わせ、相手を説得しようとはしますが、いったん自分が決めたことが実現不可能であったり、賢明な選択でないとわかると、すぐさま考え方を変える。そんな思考の柔軟性が、リーダーには求められます。
あくまでも“目的地に着く”ことが重要であり、それ以外のことは重要ではありません。「自分の意見を通すことが目的とすり替わっていないか」を常に確認しましょう。
また、自分の考えを変えるときは“以前は異なる立場にいた素振り”などは微塵も見せないようにします。自分が新たに受け入れた考え方に歩み寄り、改宗者のような熱意でもって受け入れるのです。そして「いかに自分が熱心に反対意見を唱えていたか」を笑い飛ばすようなスタンスが必要です。
10.すべての角度からものを見よ
リーダーには矛盾を受け入れる器の大きさが必要です。矛盾には次の3種類があります。
[自己矛盾]
あまりにも多くのものを内包していると、自己矛盾がしばしば起こります。しかし、一貫性も、もしそれを貫くことだけが目的になってしまったら偽善となってしまうでしょう。
[他者に対する矛盾]
人間は複雑な生き物で、その行動の裏にはたくさんの動機と理由があります。そのため、必ずしも「矛盾が悪」とは言えないのです。
[世間に対する矛盾]
物事の裏側に隠された理由は「常に明確である」とは限りません。すべての問題には複数の大義があります。見方によっては、あらゆる説明が真実であるかもしれません。このように、複眼的な視点を持つことが重要です。物事には、完全なる善とか、完全なる悪というものはないのです。
「白か黒かをはっきりさせない」というのは簡単なことではありません。「白か黒かをはっきりさせる」ことは、シンプルで絶対的な印象を与え「自分は意志が強い人間だ」と感じられます。そのため、本当は物事があいまいなときですら「イエス」か「ノー」か、どちらかに決めてしまいたくなります。
そのため、ある人は“強い”印象を与えたいと考えて「イエス」か「ノー」かを言うのです。しかし、善と悪双方の視点で、いや、それ以上の複数の視点で物事を見る習慣をつければ、以前には考えもつかなかったような斬新な解決方法が見つかるかもしれません。
このような思考法を習慣化するためには、大変な努力が必要です。自分の意見にとらわれないようにする必要がありますし、反対意見を持つ相手の身になって物事を見ようとする意識が問われます。強い意志、そして、共感力と想像力が必要となります。ただし、この努力に対する報いは、まさに、「叡智」といえるほど大きなものとなるのです。
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黄塚 森(Shin Kozuka)について
「起業の学校」アントレプレナーアカデミー全体統括。社内外を問わずwebを中心としたマーケティングに携わる。読者1万5,000人のメルマガを執筆する他、記事作成などコンテンツ製作を得意とする。経営者向けセミナーの企画・運営も行っている。