この記事でわかること
・採用戦略とは、企業にとってどんな意味をもつか
・採用戦略が上手くいっていない場合、企業が考えるべきこと
・優秀な人材が、自社に必要な人材かどうかは別問題である
この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。今回のテーマは「採用戦略編」について(記事のアーカイブはこちら)。
経営=採用とも言えるほど、企業の経営において重要な「採用戦略」。採用戦略とはどういうことなのか、企業が重視すべきことは何なのか、徹底解説していきます。
登場人物プロフィール
【インタビュアー】MEGUMI
とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。
今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。
【専門家】嶋津良智先生
日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。
- 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
- リーダーズアカデミー 学長
- 早稲田大学エクステンションセンター講師
- 他、経歴・著書多数
人口が減り、働き方も多様化している今の世の中で、企業の採用戦略に悩まれている方は多いと思います。私もその1人です…。
採用戦略を考えるにあたって、まずは人が育つ5つの条件についてお話ししますね。
採用戦略は、人材育成の入口
人が育つ5つの条件ですか?
人が育つ、やる気を引き出す5つの条件です。
それは、採用・適正配置・リーダー・教育・評価。社員への仕事の任せ方については前回お話ししましたよね。
はい!社員が能力を発揮できる仕事を任せることや、任せた後も早い段階で方向性をチェックし、終了後は報告・検証・評価をするということを伺いました。
その通りです。そういった人材育成における、入口が採用なんです。
人材が入社する前から、育成は始まっているということですね…。ますます、人材採用の重要性を感じてきました。
たとえば今、MEGUMIさんの家に、自分とは全く相容れない人が玄関から入ってきて、一緒に住むようになったらどんなことが起こると思いますか?
生活が崩壊しますね。
そうですよね。生活がめちゃくちゃになってしまったり、今までは良好な関係だった家族ともギスギスしてしまったりするかもしれません。
でも、良い人が入ってくれば、逆にその人が良い機転になって新しい風を吹かせてくれたり、より一層家族が仲良くなるような元になったりなんていうことも出てくるわけです。
家に例えるとすごくわかりやすいですね。1人入るだけで、家全体の雰囲気が変わりますよね。
それが採用なんです。入口である採用の戦略をしっかり立てないということは、人を育てるとか、やる気を引き出すということに対しての、スタートを間違えているということですよね。だから採用戦略をしっかり立てる必要があります。
求める人材の人物像を明確化する
なるほど。採用戦略の重要性について、とても理解できました。採用戦略が上手くいっていない場合、求める人材が入っていないということだと思いますが、そういう時にまず着手すべきことは何でしょうか?
そもそも、求める人材像の明確化が出来ていない可能性が高いですね。
よく経営者や人事の方に、「求める人材とは?」「御社にとって良い人材とは」という質問をするのですが、ちゃんと答えられる会社は少ないんです。中小企業の社長だと、直感で採用を決めているケースも多い。もちろん経営者の直感も重要なのですが、戦略的に求める人材像を固めておかないと、良い人材を取れる確率は下がってしまいます。
職種に求めるスキルなどは設定しやすいですが、自社にとって「良い人材」を定義するというのは意外に難しいですね。どう考えたら良いでしょうか?
自社にとって必要な人材は、実は1つしかありません。どんな会社でも同じです。
それは、理念が共有できて、結果の出せる人。これ以上でも以下でもありません。会社というのは、この人材を採用しないといけないです。
人材を採用するための要件が、その企業や職種によって異なるだけで、根本的には「理念が共有できて、結果の出せる人」というのが共通事項としてあります。結果を出すために要件として必要がなければ、協調性があるとかないとか、明るいとか暗いとか、積極性があるとかないとか、競争心があるとかないとか、そんなのどうでも良いことなんですよね。
要するに、「理念が共有できて、結果の出せる人ってどういう人なのか?」ということを定義づける必要があるんです。
なるほど。自社の理念に共感できていなければ、どんなに優秀でも、どんなに積極性があっても、それこそ家を荒らされるような形になりかねませんよね。
優秀な人材が、「必要な人材」とは限らない
その通りです。今MEGUMIさんが言った通り、優秀な人材と必要な人材は違うんですよ。
例えば、飲食店で社員に求めているのが、美味しい料理を提供し、気持ちの良い接客をすることだった場合。指示されたことをきっちりコツコツやりたい人が力を発揮できる職場であり、ガツガツしたタイプの人にはあまり向かないということになります。
その飲食店では戦略の立案や業務改革・集客は経営者の仕事なので、もし大手企業出身の20代半ばの男性から応募があっても、採用には至りません。どんなに戦略立案に関して優秀でも、求める人材ではないからです。
確かにそうですね。
企業理念とビジョンを明確にし、現状を把握すれば、理想と現実とのギャップが見えてきます。このギャップを埋めるために、どういう能力を持った人が必要なのか、人物像を定義づける。それに合う人材かどうかを見極めるために、面接をするということになるわけです。
例えどんなに、MBAを持っているような優秀な人材だろうが、このギャップを埋めるための能力としてMBAが必要なければ、その人材は優秀だけど、自社には必要がないということになるわけですよね。
この章のポイント
・人が育つ条件は採用・適正配置・リーダー・教育・評価
・人材育成における、一番入口が採用戦略
・必要なのは、理念が共有できて、結果の出せる人
・優秀な人ではなく、自社に必要な人を採用する
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