この記事でわかること
・就職・転職活動時に「傾聴力」があると感じさせるためには
・取材や面談で相手の言葉を上手く引き出すための質問力
・クライアントが話し下手の場合にやるべきこと
・リーダーとして傾聴力を発揮する時に気をつけること

この記事は、ネットで言われている「一般論」に対して、組織マネジメントの専門家はどう考えるのか?をインタビューし、私たちがより実践しやすい具体的なアクションを聞き出す企画です。今回は「傾聴力」の最終回となります(記事のアーカイブはこちら)。 

傾聴力をスキルとして身につけるためには、自分が聞き出したいことを上手く話してもらうための質問力や、真摯に聞いていることを伝える視線・体勢が重要であることを学んできました。最終回となる今回は、就職活動時に傾聴力があることをアピールする場合や、取材時に相手の話を引き出すために傾聴力を発揮したい場合など、シーン別の傾聴力について深掘りしていきます。

登場人物プロフィール

【インタビュアー】MEGUMI

とある女性向けのサービスを行なっている経営者。それなりの社員を抱える規模でビジネスをしているが、組織の人間関係のトラブルや、離職率の上昇など、組織マネジメントにはまだまだ課題のある状況。

今まで感覚的に行なっていたけれど、改めて、しっかりと学んだ方がいいのかも…と考えていた矢先に、この記事の企画をいただき、インタビュアーとして参加させていただきながら、組織マネジメントを学ばせていただくことになりました。

【専門家】嶋津良智先生

日本唯一の『上司学』コンサルタント。「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、中小企業のための、人づくり、組織づくりに特化をした、スクール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。

  • 一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事
  • リーダーズアカデミー 学長
  • 早稲田大学エクステンションセンター講師
  • 他、経歴・著書多数

<プロフィールはこちら>

傾聴力はすぐには身につかないと伺いましたが、逆に身につけることができれば大きな武器と言えそうです。就職活動や転職活動時に「傾聴力」をアピールするためには、どうしたら良いのでしょうか。嶋津さんは、面接時に「この人は傾聴力があるな」と感じる瞬間はありますか?

すぐに返事をしない、ということでしょうか。

就活・転職活動で傾聴力をアピールするには?

返事だけはしっかりする、なんて言われることもありますが、すぐ返事をするのは良くないのでしょうか?

もちろん、返事をすることは重要です。ただ思いつきで返事をしてしまうのが見えてしまうと、傾聴力があるとは言えません。「こういうことについてどう考えますか?」と質問した時に、間髪入れずに「それはですね…」と話し始めたらどうでしょうか。

質問に対する答えを事前に用意しているか、適当に話しているか。どちらにせよ、今自分が質問したことに対しての返答とは言えなさそうです。

そうですよね。質問を受けたら、それを一旦受け止めて、自分の中で考えたり、消化しようとしている態度をとる。それから自分の答えを話し始める。傾聴している態度というのは質問に対する返答に現れるように思います。

なるほど。面接では緊張してしまって、「とにかく返事をしないと!」と先走ってしまうことも多いでしょうが、そこでしっかりと傾聴しているかどうかが分かるわけですね。

もし質問されたことに対して不明な部分があった時に、ちゃんと話を聞いていなかったと思われたくないからと想像で返事をしてしまうのも危険です。

そういう時に限って、質問に対してチグハグな答えになってしまうものですよね。

はい。正直に「今のご質問なのですが、こういう解釈をしてこう返答すれば良いと理解したのですが、合っていますでしょうか?」と言ってくれた方が、傾聴力のある人だなと感じると思います。

自分の質問に対して、真摯に向き合ってくれたことが伝わってきます。

あとは、面接官の言動に対して反応するということですね。場を和ませるために面接官が笑顔で話しているのに、無表情だったりおっかない表情をしていたりするよりも、笑顔で返してくれたり、頷いてくれたりした方が傾聴力を感じます。逆に、こちらが真剣に話しているのに、ヘラヘラ笑いながら返答されたら、気分は良くないでしょう。

「ちゃんと聞いてた?」と聞きたくなってしまいますね。

取材や面接で聞きたいことを引き出す。質問力を磨く方法は?

前回、自分が相手に話してほしいことと、相手が話したいことを一致させるためには質問力が重要だと伺いました。取材や面接など、質問力が問われるシーンもビジネスでは多いですが、質問力を磨くにはどうしたら良いでしょうか。

まずはたくさん質問するということですね。たくさん質問するということは、たくさん質問を作るということ。様々な視点を持つことができますし、たくさん質問していく中で、「こういう質問は適切じゃない」と実践の中で学んでいくことが多いのではないでしょうか。

やはり実践が重要ですね。まずは数、ですね。

はい。ただ何でもかんでも質問すればいいわけではありません。目的を持って質問する、ということを意識してみてください。

質問する目的は何かを考えるということでしょうか。

はい。自分が目的を持って質問すると、それに対する回答が、的確な回答か、そうではない回答かが分かります。的確な回答が返ってこなかった場合は、質問の仕方を変えてみます。

なるほど。目的を持つことで、答えが正解かどうかが分かるので、よりPDCAを回して質問の質を上げていくことができるのですね。

また、相手に話してもらうためには、自分の言いたいことを質問に変えるのもおすすめです。「それは◯◯ということ?」と聞いてみたり、「こう思ったけど合ってる?」と聞いてみたり。

こちらが喋りたいことを質問にするということですね。

そうです。

答えるのが苦手な部下やクライアントがいた場合は

たくさん質問をしても、一問一答のような、答えが膨らまない時はどうしたら良いでしょうか。

そういう方もいますよね。その相手が部下の場合は、私なら直接伝えます。「もっとたくさん話してくれた方が、僕は君のことを理解できるし、君もいっぱい話した方が伝えられるよね」といった具合に、一緒に話の目的に向かって行けるように話しますね。

時には正直に伝える方が、同じ方向を向けますね。直接は言いにくいクライアントの場合はどうでしょうか。

沈黙を作らせないように、どんどん質問します。通常は沈黙もコミュニケーションの上では大切ですが、話すのが苦手な人は沈黙ができるとより居心地が悪くなり、萎縮して話しにくくなってしまいます。一問一答でもどんどん答えてもらうことで、自分が喋ってもいい、喋っていて心地よいと思わせることが重要です。

確かに、話すのが苦手な人は、沈黙ができるとどんどん気まずい空気が生まれていってしまいます。そうさせないために、どんどん質問する。それはくだらない質問でも良いのでしょうか?

最初に話す空気を作る際は、くだらない質問でも良いです。どこに住んでいるのかとか、休日何をやっているのかとか。そこから質問を紐付けて膨らませていくのがコツです。相手が神奈川県に住んでいると答えたら、「僕も小さい頃に神奈川に住んでいたんです。神奈川のどこですか?」とか、「東京に住もうとは思われないんですか?」とか、相手の答えから膨らませた質問をどんどん投げかけていきます。

なるほど!聞かれている側からすると、質問数は多くても一問一答には感じませんし、自然と深い内容を話していけそうです。傾聴に少し近づくヒントになった気がします。

リーダーが傾聴時に気をつけるべきこと

傾聴する時の注意点はありますか?リーダー層はよく面談デーを作ってメンバーとの面談を1日に固めてしまったりしますが、今回のお話を通してそれは良くないなと感じました。

そうですね。全員にしっかりと傾聴できるなら良いですが、1日に何人も傾聴していたらかなり疲れるはずです。部下に対しては「同化しない」ということも重要です。

同化しないというのはどういうことでしょうか?

部下と向かい合って話すことは必要ですが、部下と同じ方向を向いてしまうと、例えばネガティブな悩みや不安に対して、自分も悩んだり不安になったりしてしまいます。それは傾聴というよりも同化です。あくまでリーダーと部下は立ち位置が異なるからこそ、リーダーが出来るアドバイスがあるし、俯瞰で見るからこそ部下の能力を引き出すことができます。同化せずに、傾聴する。これを意識してみてください。

今回教えていただいたことを1つずつ身につけながら、傾聴できるリーダーになりたいと思います。ありがとうございました!

この章のポイント
・質問に即答はNG。質問を受け止め、理解してから回答する
・面接官の言動に反応する
・目的を持って、たくさん質問し、実践の中で的確な回答を引き出す質問力を磨く
・沈黙が苦手な人にはとにかく質問を投げかける
・傾聴はしても、同化はしない

<この記事のシリーズをもっと見る>

嶋津式の組織マネジメントをもっと学びたい方へ

インタビューでは語りきれなかったより詳しい内容を網羅した、オンライン動画コンテンツを無料で提供しています。嶋津式の組織マネジメントをもっと学んでみたいという方は、ぜひ合わせてご覧ください。

<無料で視聴する>