本屋大賞とランキング〜なぜ、それを選ぶのか〜 | |
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投稿日: 2014/4/10 | カテゴリー: 営業力 |
今年も「本屋大賞」が発表されました!
2014年の「本屋大賞」が発表されましたね。
第11回目となる今回は和田竜(りょう)さんの
『村上海賊の娘』が大賞を受賞しました。
この発表を目にして、本屋さんに走ったり、
Amazonで「ポチッ」と購入ボタンを押された方が
多いのではないでしょうか?
きっと多くの方の頭の中に
「そんなにおもしろいのか!読んで見たい!」
「話題になっているな。自分も読まなくちゃ。」
「本屋大賞を獲っているなら、間違いないだろう」
などなど、受賞作品に対する
ポジティブな感情が浮かんでいることと思います。
でも、そもそも本屋さん大賞って、
どんな賞なのでしょうか?
本屋大賞って、どんなもの?
「本屋大賞」は、
新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く
書店員の投票で決定するものです。
過去一年の間、書店員自身が自分で読んで
「面白かった」
「お客様にも薦めたい」
「自分の店で売りたい」
と思った本を選び、投票します。
NPO法人 本屋大賞 実行委員会 事務局が運営するもので、
全国の書店員の投票のみによって選ばれる賞です。
つまり、私たちの頭の中には、
こういう図式が浮かんでいます。
書店員
=お客さん目線を持っているし、本にも詳しい人
=お客さん目線で一番おもしろい本がわかる人
その上で「ランキング」という形で
「選択肢」を提示してくれるので、
僕たちはつい、選んでしまいます。
この「ランキング」という形、
私はとても、おもしろいと思うのです。
選択肢は、多ければ多いほど良い?
世の中には情報が溢れています。
あまりにも選択肢が「多すぎて」、
「選ぶことが難しい」というのが正直なところ。
マーケティングの業界では、
そんな現状を示す、有名な実験が知られています。
その実験は2000年、コロンビア大学のSheena S. Iyengar教授と
スタンフォード大学のMark. R. Lepper教授が行ったもの。
その手順は、以下の通りです。
1.高級スーパーマーケットに、ジャムを陳列したテーブルを用意する
2.通りかかったお客さんに試食を薦める
3.試食の参加者にはジャムの1ドル割引クーポンを渡す
これを、次の2つのシチュエーションで行いました。
A.24種類のジャムが陳列してある
B.6種類のジャムが陳列してある
結果は、どうなったと思いますか?
24種類のジャムをテーブルに並べた場合、
60%近くのお客さんの目を引き、
試食に参加してもらうことができました。
でも、その中で実際にジャムを購入したのは
たったの3%だったと言います。
一方で、6種類のジャムをテーブルに並べた場合は、
40%のお客さんにしか、試食に参加してもらえませんでした。
でも、そのうちの30%がジャムを購入したと言います。
つまり、通りかかったお客さんの人数を100人とすると
実際にジャムを購入した人数は、
24種類を並べたテーブル:100 x 0.6 x 0.03 = 1.8 (約2人)
6種類を並べたテーブル:100 x 0.4 x 0.3 = 12 (12人)
となり、購入率には「6倍」もの差が出たことになります。
ちなみに、
品物を「ジャムからチョコレートに交換した場合」でも
同様の結果となったそう。
このように「差」が生じた原因は、
24種類では種類が多すぎて、
選ぶことができなかったからだと考えられます。
商品の数は「多ければ多いほど良い」
というものではないのです。
つまり、私たちはお客さんが
「選びやすいように」
商品の伝え方を考える必要があるのです。
お客さんにとっては、あなたが「専門家」
先日、お気に入りのアパレルショップに行くと、
ある商品にこんなポップが付いていました。
「当店スタッフのイチオシ!
スタッフ全員が色違いで持っています」
上手な打ち出し方です。
このコピーを読むときに、
私たちの頭の中では、こんな思考の流れが起きています。
お気に入りのお店
→スタッフ=オシャレ
+このブランドについて詳しい人
+消費者の目線も持っている人
⇒スタッフが買うもの=商品の中でも特に良いもの
お店のスタッフは、お客さんから見れば、
その商品の「専門家」です。
お客さんは、商品を購入する際、
ワクワクする気持ちと共に、
お金を使う恐怖心も持ちあわせているもの。
「専門家」のアドバイスは、優しく背中を押して、
購入の決断を助けてくれるものなのです。
それでは、
お店側の「オススメ」や「ランキング」を参考にして商品を選ぶとき、
私たちの思考は、どのように働くのでしょうか?
なぜ、ランキングを頼りにするのか
商品を選ぶ際、私たちは
口コミやランキングなどの
「判断基準」を求めます。
これは私たちの「損をしたくない」という
心理から来ています。
人間は「得られる」ことよりも、
「得られるはずだったものを失う」ことに、
大きな恐怖を感じる傾向にあるのです。
だから「損をしないように」という気持ちが働いた結果、
「他の購入者や、専門家の意見を参考にしたい!」と思うのです。
この場合、ランキングの「質」というものは
あまり問題ではありません。
お客さんが「信頼できて」
「選択肢が狭まれば」それで良いのです。
この方法は、様々な業態で応用出来ます。
“商品”を並べるのではなく、“信頼”を並べる
本屋大賞が良い例だと思いますが、ランキングには、
どれだけ「信頼性」を持たせられるかが重要です。
ただの「売上げランキングトップ3」よりは
「◯◯売り場 責任者の△△(名前)が選ぶ
□□(効果や商品)ランキング」
「カフェの女性スタッフが選ぶ、
このお店に来たら絶対食べて欲しいメニューランキング」
「味に妥協を許さない店長が選ぶ
おすすめメニューランキングTop3
(仕入れの状況で、今日はTop2まで…)」
などなど、お店側の人間=専門家という
視点を活かして表現すると、
お客さんの心を動かす表現になるかもしれません。
選択肢が多すぎて、選ぶことの出来ないお客さんに
気持よく選んでもらえるように、
ぜひランキングを、活用してみてください。
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黄塚 森(Shin Kozuka)について
「起業の学校」アントレプレナーアカデミー全体統括。社内外を問わずwebを中心としたマーケティングに携わる。読者1万5,000人のメルマガを執筆する他、記事作成などコンテンツ製作を得意とする。経営者向けセミナーの企画・運営も行っている。