ベースアップ(ベア)は社員のモチベーションを上げるのか | |
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投稿日: 2014/3/19 | カテゴリー: マネジメント |
ベースアップ(ベア)回答が多数!
春闘の集中回答日を迎えて、自動車や電機などの大手企業では基本給を引き上げる
ベースアップ(ベア)の回答が相次ぎました。
景気の良い話題は、やはり嬉しいものですね。
この話題に対しては…
「企業全体から見ると、ベアを実施した会社はわずかである」
「“好景気ムード”をつくりたいという思惑が見え隠れ…」
などなど、様々な切り口がありますが、
本日は「給与と社員のモチベーション」について考えてみます。
よくよく考えていくと「ベア」という手段は、
社員のモチベーションや生産性を高めるという点では、
あまり有効ではないのかもしれません。
では、どうすれば良いのでしょうか?
それを知るためにも、
まずは、会社と社員の関係について考えてみましょう。
何が人を仕事に駆り立てるのか
会社が社員に与えられるものは「2つ」あると言われています。
それは…
① 経済的な幸せ … 金銭的な豊かさ
② 働く幸せ … 「仕事」を通して「自己実現」する喜び
①が、まさに「給与」。
社員の日々の生活を支え、人が働く大きな理由の1つです。
一方で最新の研究によると、「金銭だけ」では、
人がモチベーションを保ち続けるのは難しいということがわかっています。
つまり、社員にモチベーション高く、
働き続けてもらうためには②の「働く幸せ」が重要となります。
では、どうすれば働く幸せを感じることができるのでしょうか?
人は「好子(こうし)」と「嫌子(けんし)」で動く
人が「仕事で幸せを感じる」仕組みを知るために、
まずは人の行動を「分析」してみましょう。
心理学を発展させた「行動分析学」という学問をご存知ですか?
そこで言われていることを、半ば無理やりに
ひとことで言い表すと、次の言葉に集約されます。
「人は“うまくいったこと”を繰り返す」
人は、何か行動をして「嬉しいこと」や「得したこと」(好子)があると、
次に同じ場面が訪れたときに、同じ行動を「する確立」が高くなります。
逆に、何か行動をして「うまくいかないこと」や「損したこと」(嫌子)があると、
次に同じ場面が訪れたときに、同じ行動を「しない確立」が高くなります。
その繰り返しで、私たちの行動パターンは決まっているのです。
仕事に夢中な人は、どういう状態なのか?
それでは、仕事に働きがいを感じるためにはどうしたら良いのでしょうか。
人は次のような場面で「働きがい」を感じると言われています。
「他の人に頼られている」
「他の人に喜ばれている」
つまり、お客様や同僚からの「評価」が
「働きがい」を育むのです。
ただし、ただ褒めれば良いというものではありません。
次の3つのポイントが重要となります。
① 「頑張った分だけ」評価されるようにする
② 「どの行動を褒めているのか?」を明確にする
③ 「行動」から「評価」までの間隔をなるべく短くする
この3つが守られていない場合、
褒められた側は「何が良かったのか」が判らず、
行動が変化しないので注意しましょう。
「自分の仕事」が「評価」と結びつくと、
人は次のような好循環サイクルに入ります。
① 働く → ② 喜ばれる
↑ ↓
④ 成長する ← ③ 働きがいを感じる
仕事に夢中な人は、この循環に入っているので、
仕事を楽しみながら成長していくことができるのです。
「そうは言っても、どうやって評価すれば良いのかわからない」
そんな声が聞こえて来そうです。
しかし、評価の方法はそんなに難しいものではありません。
人を動かすのは「小さな喜び」
昇給やボーナスも、評価を伝える上で有効な手段ではありますが、
それよりもオススメなのは、社内に「小さな喜び」を増やすことです。
社内で仕事のやりとりがあった場合は必ず「ありがとう」と伝えましょう。
前回に比べて、何か努力したポイントがあった場合、
上司の方は「そのポイントを」しっかりと褒めましょう。
お客様から感謝の言葉や、嬉しい声をいただいたときは、
「誰が何をした結果かを明確にして」社内の全員でシェアしましょう。
社内で表彰制度をつくるのも良いかもしれません。
大げさなことでなくても良いのです。
「行動と評価が結びついていること」
「継続的に行われること」
この2点が重要です。
ぜひ、社内で試してみてくださいね。
さて、ここで改めて「ベア」という手段を振り返ってみましょう。
ここまでの話を総合すると「ベア」という手段は
モチベーションアップという観点からは、
あまり有効でないように思いませんか?
「ベア」がモチベーションを上げない3つの理由
人を評価する上では、次の3点が重要だとお伝えしました。
① 「頑張った分だけ」評価されるようにする
② 「どの行動を褒めているのか?」を明確にする
③ 「行動」と「評価」の間隔をなるべく短くする
「ベア」というものは、上記の全てに当てはまらないのです。
まず「一律の賃上げ」であるため、評価が努力量に比例しません。
また、同じ理由から「どの行動が評価されたのか」がわかりません。
さらに、春闘は年に一度のものですから、
「行動」と「評価」の間隔が開きすぎてしまいます。
仮に、社員が「自分の1年の頑張り」を「ベア」と結びつけ
モチベーションを上げた場合でも、「継続性」の面で問題があります。
毎年、継続的に賃金を上げ続けなければ、効果が続かないのです。
今の市場の状況では、それを保証することも、実現することも難しい。
もちろん、給与はとても大事なものですし、
昇給やボーナスが必要ないということではありません。
しかし、モチベーション維持という観点から見ると、
見直すべき点は、別のところにあるのかもしれません。
社員の「働きがい」と「評価」について、
ぜひ考えてみてください。
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黄塚 森(Shin Kozuka)について
「起業の学校」アントレプレナーアカデミー全体統括。社内外を問わずwebを中心としたマーケティングに携わる。読者1万5,000人のメルマガを執筆する他、記事作成などコンテンツ製作を得意とする。経営者向けセミナーの企画・運営も行っている。