最終的には「折れない心」「諦めないこと」
株式会社gumi 代表取締役社長 / 國光宏尚
いわゆるニワトリと卵の問題です。IT系のビジネス、特にコミュニティー系サービスには必ずついて回る問題なのですが、人が多いとおもしろい、しかし、人が多くないとおもしろくない、だから人が来ないという悪循環があります。そこを乗り越えるのが非常に難しい。そこを乗り越えるために欠かせないのが、アーリーアダプターの存在です。つまりはコアなファンです。それなのに、我々はアーリーアダプターを確保することができなかったんです。
乗り越えたという表現が適切かどうかわかりませんが、Facebookがオープンしはじめたころに、モバイル版Facebookに切り替えることにしました。世界初のモバイル版ソーシャルプラットフォームです。技術的に難しい部分もあったり、海外のメディアにも取り上げられたりもしたので、発表したら世界が湧き上がると確信を持っていました。
そして満を持して、オープン。すると…シーンと波を打ったような静けさでした。だから、仕方ないので自分たちでアプリを作り、コンテンツを充実させていきました。要は、うまくいかなかったんです。
先ほど述べた原因もあると思いますが、そこに付け加えて、「特徴」と「資金」の2つのキーワードを挙げたいと思います。 プラットフォーム自体は、特徴ではありません。その上で何ができるかが特徴です。その特徴をうまく打ち出しきれませんでした。Pixivはイラストの投稿・閲覧、クックパッドはレシピの投稿・閲覧という特徴のある切り口で成功しています。 一方で、資金もありませんでした。GREEやDeNAは、豊富な資金があります。だからこそ、優良なコンテンツに付け加えて、パワープレイでもユーザー数を獲得することができています。それは、圧倒的な強みです。 私たちには、その資金も体力もなかった。そして、それを補うだけの特徴もなかった。これらが要因だと思います。
先ほど話したように、自分たちでアプリを開発していました。その頃mixiがオープンし、流行り初めてもいたので、mixiに開発していたコンテンツを売却したんです。先行利益もあって、そこでグッと伸びることに成功しました。 まとめると、はじめはプラットフォームを目指していたが、そこはうまくいかなかった。そこで作っていたコンテンツが良かったので、そこに投資したら、大幅に利益があがった。こういうことになります。そうして今は世界一を目指して、完全にソーシャルゲームの分野で勝負しています。
そこも明確にあります。元々、Twitterを倒して世界一になるという思いを持って創業しました。それがFacebookを倒して、プラットフォームで世界一になるに変わりました。基本的にやるからには、世界一をとることを目標にしています。今は、勝負する分野がソーシャルゲームに変わったので、Zyngaを倒して、世界一になることが目標です。ですので、私の中では大きな変化はないんです。
高校卒業後、単身中国に渡り、その後世界各国を訪れました。その期間は10年にも渡ります。そういった海外経験が長いという背景があるので、世界に目を向けることは、特別なことだとは感じません。 しかしながら、「世界一」は非常に重要だと思っています。海外での日本人の評価は圧倒的に下がっています。これは紛れも無い事実です。
だから、私は多くの方に海外に行ってほしいとも思っています。 日本時代というものは、ほぼほぼ終わりかけています。失われた10年と言われていたのが、気づいたらもう20年になっています。そうかと思ったら、昨年は東日本大震災が起きました。 もはや国としての定義をなしていないように思えます。会社で置き換えたら、倒産寸前と言っていいでしょう。本格的に沈みかけているのです。
みんな勘違いしているのは、「永遠に続いた国はない」ということです。ローマ帝国も、中国王朝も、江戸幕府も滅びました。国はいつか滅びる時が来るのです。このままでは、日本は本当に滅びてしまうかもしれない。そういう危機感を感じざるを得ません。
中国をはじめとしたアジア諸国と日本が決定的に違うのは、「資源」がないことです。このルールは変わりません。石油がない、鉄がない、食料も少ないという環境下の日本は当然買わなくてはいけません。 日本は、誰かが外国にモノを売って、稼がなくてはいけません。強い輸出産業が必要不可欠なわけです。これまでは、車や電気製品がそれにあたりました。しかし今となっては、製造業のマージンが海外に移ってしまっています。もう一つ稼ぐエンジンが必要です。そこでITが、登場してくるのです。
今までは、タイムマシン経営でした。アメリカで流行ったものを日本に持ってくる手法です。しかし、それで世界を獲れるわけがありません。
NTTでしょうか…。
それか…Yahoo!『JAPAN』です。もはやジョークかと思いますよね。 今までは、情報格差があったから、それでも良かったかもしれません。しかし現実として勝てなくなってきています。 しかし今回は、偶然にもチャンスが訪れています。
初めて、逆タイムマシンができるかもしれません。ソーシャルゲームという分野で、Zyngaがすごいと言われていても、それはPCの領域に限られています。モバイルの領域では、日本が技術もノウハウも圧倒的に進んでいます。ゲームのコンテンツ自体にも、強みを持っています。
「日本発世界」が徹底的に必要な理由は、資源がない分、外国で稼がなくてはいけないからです。その時に大切なことは、誰かが最初にやることだと思っています。野球では野茂が、サッカーでは中田が先駆者として、それを成し遂げました。すると、それに続いて、多くの日本人が海外に挑戦するようになりました。結果、現在野球もサッカーも今や世界の強豪の一角を担っています。
ビジネスの分野で、gumiがそれを成し遂げたいと思っています。gumiが行けるなら、おれらも行こうって気持ちになってほしいんです。みんなで切磋琢磨して、日本を元気にしたい。