「世間をあっと言わせるビジネスを創る」
株式会社オークファン 代表取締役 /武永修一
そうですね。しかも私の場合は商品を仕入れる際にそのままの売値で買うことはしませんでした。必ずディスカウントしようとしていましたね。先ほどのコムデギャルソンのスーツに関しても、売値は8,000円でしたが、私はお金が無いふりをして7,000円で購入させてもらうなど、自分なりに安く仕入れる工夫をしていました。そして安く購入したモノは当然高く販売したいですよね。出品した際の商品紹介の文章内容や、画像加工、商品自体の品質管理も徹底して行いました。
ちなみに、このような努力の結果、7,000円で仕入れたコムデギャルソンのスーツを50,000円で売ることができました。
最初の1年ほどは私一人で行っていたのですが、そのうちネットオークションで稼いでいる姿を見た大学の友人の中には、「一緒にやろう」と声をかけてくる人も現れるようになりました。そうして作業を分担し、私が商品の目利きに専念してネットオークションを行っていたら、2、3年のうちに年商が2億くらいになっていましたね。
結果、2年間で目標にしていた貯金額700万を超えて、1,000万を貯めることができていました。
もともとはロースクールに通うための資金集めだったのですが、ネットオークションビジネスでかなり成功してしまったこともあり、結局ロースクールに入らずにビジネスの世界に飛び込むことになりました。
24歳までは個人事業主として活動していましたが、その頃から「オークファン(当時はオークファンの前身となるサイト名)」を口コミで耳にするようになっていました。今でこそ私がオークファンとして引き継いで事業運営していますが、率直に言って当時は「すごくイヤなものが出てきた」と思っていました。
なぜならオークファンを見れば、ネットオークションの新規参入者でも簡単に商品の目利きができてしまうからです。実際オークファンが登場してからは、それまでは見たことのないような業者と仕入れでバッティングするようになりました。私はイタリアのかなりローカルな場所に仕入れに行くこともあったのですが、海外のローカルな場所でも日本の仕入れ業者とバッティングするようになったのです。一般観光客の振りをして業者から話を聞くと、「オークファンを見て仕入れの参考にしている」と言うんです。
全く目利きに詳しくない人が簡単に業者になれてしまう現場を目の当たりにして、とてつもない危機感を感じましたね。
終いにはいつも取引させてもらっていた仕入先から「もう他の業者に商品を全て売ってしまったよ。」と言われるようにもなりました。これには本当にショックを受けました。それまでは、私が地道に時間をかけてエクセルに作り込んだ目利きリストがあったからこそ、他の人たちよりも上手く稼げていたわけです。しかしオークファンの登場により、誰でも目利きリストを利用できるようになってしまったんです。これでは商売上がったりです。このままネットオークションの転売バイヤーを続けていくことに限界を感じるようになりましたし、その原因を作ったオークファンは本当に憎たらしい存在でしたね。
当時はオークファンの運営者に苦情のメールを送ったこともあります。(笑)
学生時代はずっと大阪や名古屋を中心とした関西方面で活動していたのですが、次第に東京にも行くようになったのです。そんな時、東京のビジネス交流会に参加する機会がありました。そこで偶然出会ったのがDeNAのインターン生でした。実はオークファンはDeNAの社員が個人的に運営していたものなのですが、DeNAのインターン生を通して当時のオークファン運営者に会える機会をもらえたのです。
いえ、もうその時はオークファンを止めろなんて言うつもりは全く起きませんでしたね。むしろ一緒に何かビジネスをやらせてもらえないかと考えていました。当時僕のネットオークションビジネスも売り上げが2億円程で頭打ちになっていましたから、今後は「どうにかしてインターネット事業に参入したい」とずっと考えていたところだったのです。そして実際に会わせてもらったところ、話が思わぬ展開になったのです。オークファンを作ったDeNAの社員は「モバゲー」を作った人と同一人物ですが、当時はちょうどモバゲーを作ることにコミットしていたため、オークファンを手放すことを検討していたのです。私は是が非でもオークファンを譲り受けたいと申し出ました。私は実際誰よりもオークファンについて詳しく知っている自信がありましたし、「オークファンをもっと良いサイトにしたい」という熱意もありました。実はオークファンを買いたいと言っている業者が他にもあったのですが、最後は私の熱意に負けてくださり、オークファンを売ってもらうことになりました。
前身の会社であるデファクトスタンダードでは「自分で買って、自分で売る」というリサイクル事業(転売バイヤー事業)をずっと行ってきていましたが、最終的には他社に売却するカタチになりました。
ちなみにデファクトスタンダードのリサイクル事業では、海外に行かずとも商品を仕入れることができるサービスとして「ブランドキング」を運営していたのですが、売却先では現在「ブランディア」として年間100億円を売り上げる事業に大成長していますね。