時代が変化しても変わらないこと。それは人として大切な2つのことだった。〜70代経営者が語る50年経営して見えたこと〜
ファーストフレームジャパン株式会社 代表取締役 松本 克幸
私が生まれた昭和21年の頃に比べたら、テレビや車などの多くの便利で具合のいい物が開発され、欲しいものは大抵家庭にある環境になっていますが、そういった面では裕福になったと言うことができます。
しかし人として幸せかどうかと考えた時に、非常に疑問に感じます。
昔は人を大切にする環境があり、どこの子供でも我が子と同じように接し教育するという環境でした。悪いことをしたら怒られましたし叩かれもしました。下手をすると親の躾が悪いと親も一緒に叱られることもあったほどです。「人を大切にする」というような考えを受け継ぎ、残していかないといけないと思っています。
また、時代が変わっても「人に迷惑をかけない」「人のお役に立つ」という2つの大切なことは変わらないと思っています。この2つのことを実行するためには、常に自分は「何のために」「誰のために」何をするのか、何をやればいいのかということを問うことが大切だと思います。ですが、それ以上に大切なことは「人として立派な人間」になること、「人としての道を外さない」ことだと思います。
その大切なことを教えるべき所が、家庭であり学校であり、社会であるべきなのですが、そこに重きを置いている環境が非常に少ないと思います。政治家であれ、医者であれ、先生であれ、芸能人であれ、まずは人としてちゃんとしているかどうかということではないでしょうか。
はい。私の会社は人間尊重、人を生かす経営という理念経営しています。
その理念に合わない考えを持っている人は私の会社で働いてもあまり意味がないと思っています。
理念というものは、会社が「何のために」、そして「誰のために」存在しているのか、それに加えて会社として進むべき方向を示しているからです。そのため、社員が持っている「何のために、誰のために働くのか」というような、自分が働く意義と一致していないと、遣り甲斐、生き甲斐、働き甲斐もなく、ただ毎日目の前の業務をこなすだけになるからです。それだと「この業務はつまらない」と思う日が来てしまう。
私は、どんな仕事でも「何のために、誰のために」を考えていれば、どんなに小さな仕事だったとしても、必ず何かの、誰かの役にたっていると思います。そう思うと「つまらない仕事」はありえないはずです。
人の命ほど重いものはないはずなのに、親が簡単に子供を捨てたり、逆に子供が親を殺したり、他人を平気で傷つけたりしている。人の命の重さがすごく軽んじられていると思っています。
生まれてきた子供は世界の宝だから、みんなで大きな心で、大事に育てていかないといけない。だから私は、人との強い繋がりがあって、信頼できる人がいつも傍にいてくれる環境であることが一番楽しいし嬉しいです。寂しがりやということも少なからずありますが(笑)
そういう環境でないと、血の通った人間関係を作ることが難しいと思っています。また、今の時代では、血の通った人間関係を作ることが難しい環境の1つが大企業だと思います。いつもノルマを課せられ、数字に追い詰められて。そこには、心を通じ合わせる、心の通った仕事にしていくことは難しいし、心が通っていないことが多い。大企業の中にも、世界でトップレベルの素晴らしい企業はあります。しかし、一部の経営者の中には、自分の保身のために、株主の方にしか目を向けない、血の通わない経営をする経営者がいて、企業が衰退していくのは非常に悲しいです。
ですが、ただ嘆いていては何も変わりません。日本の企業のうち、中小・小規模企業は99.7%を占めています。地域に根を下ろしている地元の中小企業の意識が変われば、地域も変わっていくのではないかと思うのです。また変えていかなければいけないと思います。中小企業が血の通った経営をするために、まず「人としてどうあるべきか」ということを問い続け、何処にでも通用する人材を育てていけば、少しずつでも変っていくのではないかと思っています。そのような可能性に人生をかけ、挑戦できる点が起業して良かったところです。
「何のために、誰のために」という問いかけを常に経営者だけではなく、社員共々大切にし、確認をしながら仕事に関わることです。私がどれだけ崇高なことを言ったとしても、現場で仕事をするのは社員の皆さんです。その社員の皆さんが「何のために、誰のために」という意識を持っていなければ、お客様からの信頼は得られないでしょう。ただ仕事をすればいいというわけではありません。
私の会社では、社員の技術はもちろん、何かあればすぐに対応するという、「誠意とスピードと笑顔」がモットーです。その3つを心掛けていれば、お客様がファンになってくださる確率が非常に高いです。お仕事をさせていただく場合、自分の携帯の番号をお客様にお知らせします。そのことは、いつ連絡を頂いてもお応えしますというシグナルです。そのことだけでも、お客様は弊社や担当者を信用していただけまし、お客様との繋がりが確実なものになっていきます。
お仕事させていただいてからは、殆どといっていいほど、弊社と担当者にご指名をいただけます。仕事が少なくなり、規模が小さくなっていく企業が多い中で、私どもの会社は成長させていただいております。
会社の一番の財産は「人」です。物でもお金でもありません。一番大切な「人」をどうすればもっともっと活すこと出来るのか、このことに着目していない経営は必ず行き詰まると思います。