新たな買い物体験を創造する 門奈氏が語る、真の起業家精神とは?
株式会社カウシェ / 代表取締役社長 門奈剣平
買い物はもっと楽しく、エンターテイメントになる!そんな未来を信じ、日本発の買い物アプリ「カウシェ」を運営する株式会社カウシェ代表取締役の門奈氏。デジタルネイティブ世代が求める、お得さと楽しさを融合した革新的なサービスは、リリースからわずか4年で300万ダウンロードを突破。急成長の裏には、学生時代から培ってきた不屈の起業家精神と、若き才能を信じ抜く独自の組織論があった。「人生はサイコロを振るようなもの」と語る同氏が、波乱万丈の起業ストーリーと、未来を担う若者への熱いメッセージを語る。本インタビューでは、カウシェの事業内容、門奈氏の起業のきっかけ、そして彼が大切にする起業家精神について深掘りし、新時代のリーダー像に迫る。
カウシェは、一言でいうと「ドン・キホーテとディズニーランドを掛け合わせたような」買い物アプリです。
毎日がセール状態で、食品から家電まで幅広い商品が15〜90%オフで買えるお得さと、買い物の過程でゲームを楽しむことができるエンタメ性を兼ね備えています。他のECサイトと大きく違うのは、この「お得」と「楽しい」を徹底的に追求している点です。例えば、「カウシェファーム」という機能では、ユーザーはアプリ内で野菜を育て、収穫すると実際に商品が届くという、ゲーミフィケーションを取り入れた仕組みを導入しています。これにより、「買い物をする」という行為自体が、まるでゲームをプレイするかのような楽しい体験へと変わるのです。ただ商品を安く売るだけでなく、買い物を通じてユーザーにワクワクやドキドキを感じてもらうこと、そして、その体験を友人や家族と共有したくなるような仕掛けを散りばめることで、ユーザーが何度も訪れたくなるようなサービスを目指しています。これは、現代の消費者が、単なるモノの購入だけでなく、「体験」や「共有」を重視するようになっているという、時代の変化を捉えた戦略でもあります。
「カウシェファーム」では、ユーザーは水やりや肥料を与えることで野菜を育てます。最初は小さな芽だった野菜が、ユーザーの日々の世話によって、徐々に成長していく様子は、まるでペットを育てるような感覚に近く、愛着が湧いてきます。肥料は、商品の購入やアプリの利用、友達の招待などで手に入れることができるので、ユーザーはゲームを楽しみながら、自然とカウシェの様々な商品に触れる機会が増えるのです。また、友達を招待して一緒に野菜を育てたりすることもできるので、SNS的な要素も楽しめます。ユーザー同士のゆるやかな繋がりが、カウシェのコミュニティを活性化させ、サービスの利用継続率を高める効果を生んでいます。私自身、日本と中国のハーフとして、両国の文化や社会システムを見てきた経験がありますが、特に中国では、「拼多多(Pinduoduo)」のように、ソーシャルコマースが非常に発達しています。これは、友人や知人との「つながり」を重視する中国の文化を反映したものだと考えています。カウシェでは、このような海外の先進事例も参考にしつつ、日本のユーザーの嗜好や行動パターンに合わせて、独自の「楽しい買い物体験」を追求しています。
以前は、複数人で商品を購入することで割引が適用される「シェア買い」をメインにサービスを展開していました。
これは、当時の中国市場におけるトレンドを取り入れたもので、特に「拼多多」の成功事例に影響を受けた部分もありました。しかし、実際に日本でサービスを展開していく中で、いくつかの課題や気づきが見えてきました。まず、日本では、特に都市部では、必ずしも近しい人と共同購入をする文化が根付いていない、ということです。中国の農村部などでは、親戚や近隣住民との結びつきが強く、「シェア買い」のようなモデルが非常に機能しているのですが、日本の社会構造、特に核家族化が進んだ都市部では、必ずしもマッチしない部分がありました。また、ユーザーインタビューを重ねる中で、「シェアする相手を探すのが面倒」「シェアしたい人が見つからない」といった声も多く聞かれました。これらの経験から、サービスのローカライズの重要性を改めて認識しました。もちろん、「シェア買い」自体は、お得に買い物ができる有効な手段です。しかし、より多くのユーザーにカウシェを楽しんでもらうためには、1人でも気軽に利用できるモデルへの転換が必要だと考え、現在の形に至りました。この移行は、カウシェの成長において、非常に大きなターニングポイントだったと言えます。