『語れる人生』であれ
株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者/牧野 正幸
1963 年、神戸市生まれ。大手建設会社、IT コンサルタントを経て、1996 年にワークスアプリケーションズを設立。日本で初めて大手企業向けビジネスアプリケーションの開発に成功するなど、業界の常識を覆すイノベーションを起こし続け、市場シェアNo.1として不動の地位を築く。また、イノベーションの源泉となる優秀な人材に着目し、学生20万名超が応募する人気No.1インターンシップを実施するなど、独自の施策を展開。メディアから高い注目を集め、個人の成長を最大化する働き方が可能なグローバル企業として、「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work Institute, 2015)ではアジア8カ国900社以上の中から「ベストカンパニー賞」を受賞している。
我々の会社は、大手企業や官公庁に対し、事業活動に不可欠なITインフラを提供しています。大手ITベンダーでさえ実現できない世界唯一のビジネスモデルで、おかげさまで国内ではトップシェアを誇り、商品の調達や生産・販売、資金管理や財務会計、ヒューマンリソース、また皆さんが利用する著名なオンラインショッピングにも、我々の製品が利用されています。また、我々は海外市場の開拓・確保にも取り組み、現在拠点のあるアメリカとアジアだけでなく全世界への進出を計画しています。我々が目指すのは、世界トップクラスのテクノロジーカンパニーとして、世の中の経済を牽引する技術革新を続けています。私個人としては、政府の委員会に所属したり、若手の起業家支援を目的に講演会を行ったり、次世代リーダーの育成に努めています。
起業家を目指す人が増えるのは良い事ですが、ただ数を増やせば良いというわけではないと思います。起業家は氷山の一角でしかなく、社会貢献と自己成長の実現を求め、主体性を持って働く人の上位層が、結果として起業するに過ぎません。重要なのはその主体性を持って働く人の母数を増やすことです。例えばアメリカに起業家が多いのは、その層が多いからだけであって、いくら起業しやすい環境が出来たところであまり意味がありません。まず大切なのは、自分で考え行動できる人を増やすことです。
これは、日本の高度成長期時代に築かれた教育制度に要因があると思います。あらかじめ答えが用意されており、暗記し応用することが勉学の基本で、自ら考える事は求められません。ましてや高校時代から受験に追われ、自分の将来を考える時間も取れませんし、良い大学へ入学出来ても、海外のように自分の主張や意見を問われる授業もありません。そのため就職活動も同じで、日本の学生は自分の将来について、自分の能力や将来どうなりたいのかなど本質的な部分を何も考えられないまま、手持ちの情報や思い込みで業界や職種を絞って就職先を決めてしまっています。働き始めてようやく考えるようでは、ミスマッチが起きるのは当たり前です。当社は海外でも採用活動を行っていますから、世界中の「スマートクリエイティブ」と呼ばれる優秀な人材をみています。その中で国内外の学生を比べた際に、思考回路でいうと海外の大学生と日本の社会人3~4年生が同じ位置づけで、5年以上の力の差が生まれています。私はそれにとても危機感を抱いています。しかしながら、そういう状況を悲観し嘆くのではなく、自ら行動していってほしいと思います。