『語れる人生』であれ
株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者/牧野 正幸
本来の起業家とは、社会をより良くするために、誰にも手を付けられていない事を自らの手で実現する事が使命です。起業の魅力というとよく「成功」をイメージされますが、現実は99%が失敗で成功しているのはごくごくわずか。むしろ世間でよくある「金儲け」や「誰からも命令されたくない」ということを目的とするならば、とてもリスクが高すぎてまったくお勧めできません。市場のビジネスチャンスを狙って起業する人も多いですが、それは他の誰がやっている事で、あなたがやる意味は全くありません。私がこの会社を興したのも、日本経済に対する影響度が非常に大きいにも関わらず、大手ITベンダーがいまだ実現できないほど極めて難度が高く、誰もやれなかったことだから。経済全体の生産性向上を図るためには、企業の生産性を高める必要があり、それには経営管理のあり方を抜本的に変える必要がありました。我々がいなければ今の上場企業の半分はなくなっていたかもしれません。それくらい私にとって人生を賭けた挑戦でした。起業することに関して別の見方をすれば、チャレンジして失敗を繰り返す事で、人は大きく成長します。そういう意味で「自己成長」を目的にするのであればやる意味はあります。ただ、ベンチャー企業で働くことが出来れば、個人リスクをとらずして同様の環境を手に入れられると思います。
私がITコンサルタントとして働いている時、報酬や会社の環境に不満はありませんでしたが、「私の仕事は、本当に社会の役に立てているのか」という釈然としない違和感を覚えていました。「自分は何のために生きているんだろう?」。誰もが1度は考えたことのある問いだと思いますが、多くの人はその結論を出さないまま、自分の信念を持たずして進んでしまいます。自分の意志や目的がなく刹那的な欲望で行動し、限られた選択肢から皆と同じ答えを選ぼうとするのでは、非常につまらない。せっかく生きてきたのなら、例えそれが失敗談だとしても、死ぬ時に誰かに話して「面白いですね」と言われるような『語れる人生』を歩みたいじゃないですか。でなければ、自分が生きてきた意味を誰にも証明できない。1番聞きたくないのは「人に言われたから」という話で、私にとって社会にないものを自分で考えて創り出すのは、難度が高くやりがいのあることでした。そんな思いから、今の状態にたどり着きました。多くの「起業家」と呼ばれる人達は話していてやはり面白いです。彼らは自ら考えて行動している分、感受性も高く、普通の人が気づきもしないような事に感動できます。だから、人生が豊かだし、そういう人の語る話はとても面白いのです。
学生である皆さんが、将来起業家として自立したキャリアを考えるなら、その前提条件にあるのは「自己成長」です。そして、その上で最も重要なのは、社会的に存在意義の高い会社で自分の能力を活かすことです。極端に言えば、社会のために力をつくすのか、上司の指示通りに仕事をこなすことに注力するのか、どちらが有意義かということです。それには、ベンチャー企業で働くことだと思います。海外でベンチャーと定義されるのは、社会に貢献するイノベーションを起こす企業のことです。決して、人数規模が小さいだけではありません。仮に起業家としての能力判断をしたいのなら、我々のインターンシップを受けてみてもいいと思います。スタートアップの企業で起こりうるあらゆる問題を模した内容になっていますから。そして繰り返しますが、何よりも自分のキャリアを真剣に考えてください。これは今すぐにでも出来る事です。