0から物事を作り上げる喜び
イントリックス株式会社 / 気賀 崇
私は、慶応高校出身で卒業生は皆慶応大学に進学するのですが、周りが経済学部であるとか法学部を選択する中、遠く離れた湘南に新設された総合政策学部を選びました。私の代が第1期生だったので、大学自体、試行錯誤しているといった状態でした。色々と実績も何もない新設学部を選んで大丈夫かと心配してくれる人もいたのですが、創立時の先生方の熱意と好きなことをやりたいという思いからこの学部を選択しました。今、考えてみると、メジャーでない環境を選びたがる自分の原点がここにある気がします。そこでは、アウトドア系のサークルを立ち上げましたし、0から作り上げるという経験をすることができたのはよかったと思っています。また、総合政策学部は、大学の中で最も早くネットを本格的に導入していた学部だったのですが、そのおかげで1990年代初頭からITのパワーや可能性を真近で感じることができていました。大学では、理系的な部分と文系的なものを併せ持つファイナンスのゼミを選択していました。
大学卒業後は、米国プライベートバンクであるブラウン・ブラザーズ・ハリマンに入社し株の運用に携わっていました。ニューヨークの国際株式投資部門で日本とアジア株のアナリストをしていました。大学では、ファイナンスを勉強していたのですが、周りが日本の大手の証券会社などに就職する中、あえて外資系の会社に就職しました。しかし、アメリカに勤務している時にIT分野の急成長を体感しました。その時、これからはITの時代であると思いました。そこで、金融からITの世界に移ることにしました。起業の前に8年間勤めたサイエントではeビジネス戦略策定やグローバルウェブ再構築支援など大企業向けのWebコンサルティング業務を行っていました。大規模な企業サイト群の支援では、日本でも有数の経験を積んできたと自負しています。
私は元々、起業を自分のキャリアの中に明確に位置付けていた訳ではありません。しかし、前職で気づいたのは、大企業のWebサイトは何千何万と存在するのに、インターネットの特性を活かしきれているものがほとんどないということでした。また、グループ会社のサイトを企業全体としてどう活かすかということにまで考えが及んでいる会社はとても少ないということに気づきました。そこで、大企業のサイトを“連結”の視点で整備し提供するサービスは、グローバリゼーションのニーズと相まって大きく成長すると考えました。実際、お客様からは高い評価を頂きました。その経験から、自分たちで新たな事業を立ち上げることができたことに大変誇りをもつことができました。とは言え、多くのお客様は、連結視点でWebを考えるための体制も予算もお持ちではありません。まだまだ単体中心の視点なのです。ですから、サービス提供者側である我々は、忍耐強くその必要性を訴えていかなければなりません。短期的には自分たちの利益を横に置いてでも、この新たな視点のサービスをより多くの企業に利用していただきたい、この自分の信念を貫くためには起業をするのが最適であると判断し、起業することにしました。