自らの「専門性」を意識
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役 / 斉藤 徹
自らの「専門性」を意識
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役 / 斉藤 徹
非常に個性的な社員が多いですね(笑)。現代は透明性の時代です。企業実態とかけ離れた厚化粧のブランディングはマイナスになります。社員自らが企業のエバンジェリストとなり、その魅力の発信者となる「社員ブランディング」はこれから注目される手法でしょう。当社は、もともと社員ひとりひとりの「好きこそものの上手なれ」を実現する場所になることをビションとして掲げており、それぞれの専門分野でオンリーワンの存在になることが社員の目標となっています。その意識が共有されているため、個々の社員のユニークな活動に繋がっているんだと思います。また、透明性と同様に、シンプルさも追求しています。まあ、はっきり言ってしまえば、意味ないことがとても嫌いなんです(笑)。
クリエイティブな発想って、有意義かつゆとりある時間の中でこそ生まれるものだと思っています。だから、無駄なものは徹底的に排除したい、シンプル志向なんです。企業経営の上で、最初にやるべきことのひとつとして、物事を効率化するシステム作りがあげられると思います。財務的に言えば、当社の特徴は販管費と一般管理費が少ないことです。当社からは営業をしない。原則としてコンペに参加しない。管理部門を担当するのは一人の女性ですが、残業知らずで年に2回は長い海外旅行に旅立ちます(笑) 営業と管理をシンプルにしている分、社員の総力をお客様の事前期待を上回るアクションに割くことができる。そんな組織づくりを心がけています。ループスという会社の仕組みをシンプルにあらわすと次のような表であらわせます。
1. 社員が自身の専門分野を定め、情報発信し、ソーシャルメディアで交流する
2. そこから信頼の絆が生まれ、自然な流れで顧客や求職者、パートナーとなる
3. 社員は好きなことにかける情熱で、顧客の事前期待を上回る努力をする
4. 経営システムは、徹底的にオープンかつシンプルにする。
5. 成果主義を一切とらない。ハッピーで自由なワークスタイルを推進する。
この基軸にあるのは本田宗一郎さんに通じる「好きこそものの上手なれ」の考え方です。そこから社員の幸せが生まれ、お客様への貢献につながり、結果的に売上や利益が上がり、株主もハッピーになる。というポジティブ・スパイラルの仕組みがループスの経営の基礎となっています。これは29才で独立して以来、僕と福田が共有している経営の理想像です。そして、そんな変わった考え方を受け入れてくれる社員のみんなに囲まれて仕事をできることは僕や福田の一番の誇りであり、人生の充実と感謝を感じています。
そうですね。自分の判断で仕事をできる、創れることは大きいと思います。言い換えれば、自分自身の美学を徹底的に追求できることこそ、起業の魅力だと思います。実際、コーポレート・カルチャーには社長の美学がそのまま現れることが多いですよね。反面、起業のために犠牲にしたものも多くありました。そこには気をつけてほしい。起業の良い面だけを一面的に捉えるのではなく、多角的に捉えた上で、起業に踏み切ってほしいと思います。
それ自体は、とても良いことだと思います。大いに頑張ってほしいです。しかしながら、今の時代を冷静に分析すると「アプリバブル」ではないでしょうか。ベンチャーバブルって、だいたい5年おきぐらいの周期で訪れるんです。1995年、2000年、2005年、そして今ですね。もちろん、それぞれ性質は異なりますが、成功者はほんの一握り。バブルが弾けたときの悲惨さは共通したものがあります。私も、それを実際に肌身で感じてきているので、現状のアプリバブルに一石を投じたい思いがあります。
今は起業コストが下がっていますが、それは世界的な現象です。特に英語圏の開発コスト低減は劇的です。そして市場がグローバルするということは、今まで以上に競争が厳しくなるということです。良い企業に就職すれば「安定」を手に入れることができます。「安定」を問題視する声もありますが、「安定」の大切さは、家庭ができて、子供ができてから痛感するものです。子供の教育コストは想像以上に高く、例えば私立の幼稚園から大学に入れる場合で1人あたり約2000万円以上かかると言われています。自分の子供に、自分と同じ教育を受けさせてあげるってことは、本当に大変なことなんです。今、生きていけるから起業しようという考えは安易です。長期的に考えた上で、腹をくくった上で起業してほしいです。私は、このことを自分自身のバブル経験で痛いほど実感しました。ぜひ、若い人たちにも、このことには留意してほしいです。
起業での失敗を下げる方法を話すのは、それだけで一日かかってしまうことですね(笑) ただ、起業して、仮に失敗しても次に繋げるという意味では、ぜひ自らの「専門性」をどこにおくかを意識した仕事をしてほしいと思います。起業しながら、技術を磨いてほしいわけです。プログラミングやシステム開発、ウェブデザイン、あるいは英語でも構わないと思います。特に関連性の強い二つを組み合わせると価値は大幅に向上します。人生設計をすれば、必然的に専門性を高めることの重要性がわかると思います。その辺の現実性も考えながら、起業してほしいです。
と言いながらも、若くて優秀な人には大いに挑戦してほしいです。私は、一定の期間での失敗の数、そしてそれを反省材料として成長することが、なにより大切なことだと思っています。人生の密度が全く違ってくるからです。それも、数倍も、数十倍もです。企業に勤めていたら、失敗はなかなかしません。しかし、経営をしていると毎日が意思決定の連続です。その失敗から真摯に学ぶ姿勢こそ、人間的成長に繋がる最も大切なことです。若い方々には、しっかりと自らの専門性を磨きながら、チャレンジしていってほしいと思います。