アイカンパニーであれ
株式会社リンクアンドモチベーション / 小笹芳央
そうですね。私は会社の1年後がどうなっているかを占いたければ、その会社の「営業力」を見ろと言います。同じように5年後を占いたければ、「商品開発力」に目を向けろと言います。開発が機能して、良い商品をリリースしていれば、5年後もその会社は生き残れますからね。
では、その会社の10年後を占いたければどうするか。その会社の「新卒採用のレベル」に目を向けるべきです。良い人材が採れている会社は、10年後も繁栄します。裏を返せば、会社の10年後を支えるのは新卒採用だと言う事ですね。
弊社は、2000年に会社を立ち上げたのですが、2001年にもう新卒採用をスタートしています。創業の翌年からスタートしているのは、非常に珍しいケースだと思いますが、新卒採用が会社を支えるという考え方からきています。その当時に採用した1期生が今はもう幹部ですから、自分の決断は間違いではなかったと、身をもって確信しています。
採用部門から営業部門を経て、新しい部署を立ち上げていました。そこで、給与や評価の仕組みといった制度作りなどを一手に請け負う専門家集団として、多くの企業経営者にお会いしていました。
その時、どの企業経営者も「如何にして社員のやる気を高めるか」という事に四苦八苦している現状を目の当たりにしたのです。そうして、「人事制度も人材育成も、全ては『モチベーション』を高める為の手段にすぎない」ということに気づいたのです。
昔と違って、単にお金とポストだけを振りかざせば社員がそれに食い付いて頑張るという、高度成長期のような公式が成り立たないようになってきていた時代背景でした。一方で、このモチベーションの問題は普遍的で、企業経営者にとっても非常に重要なテーマだと多くの経営者との出会いで確信しました。しかし、世の中を見渡した時、まだ誰もやっている人がいなかった。それであれば自分が「モチベーションに特化したコンサルティング会社」として旗揚げする必要があると考え、起業に至りました。
当然ありました。しかし「モチベーションというのは企業経営にとって一番大事である」という事を社会に発信したいという想いのほうが勝っていましたね。自分が人事部時代から、もっと言えば学生時代の団体の代表の時から、やっぱり組織というのは人の活力が大事である感じていたんですね。その為には、やっぱりモチベーションが基本だという確信が自分の中にありました。
だから、その想いを社会に発信したかったんですね。そういうメッセージを発信する為の発信基地として会社が必要だった。私の場合、起業はメッセージを発信する手段に過ぎませんでした。
最初はどの企業も同じだと思うのですが、「キャッシュフロー」ですね。これを何とか乗り越えたのち、次に直面したのは、規模の拡大を確実のものにする為の「商品の標準化」です。
我々の場合、自分たち創業メンバーの持っているノウハウを、これから採用する人達に移管していくという意味で、企業を診断する為の診断商品を開発しました。「EMS(エンプロイーモチベーションサーベイ)」という名称の商品なのですが、その開発に半年ぐらいかかりましたね。非常に苦労しました。
熟練されたコンサルタントではなくても、そのツールを持ってすれば企業へ営業、提案することが可能になります。また、口頭でノウハウを伝えていくのには、5年10年かかりますから、我々のメッセージを世の中に発信するという意味で、「商品の標準化」は時間の短縮にも繋がりました。
ベンチャー企業というのは、創業者の人脈やアイデア、スキルなどを糧に起業するケースがほとんどだと思いますが、軌道に乗った後、拡大していく為には、新しく迎え入れた人達がきちんと活動できるようなメニューの標準化は必須です。これがないと、創業者を中心とした10人、20人の集団で終わってしまいますからね。