女性トップ営業ウーマン
株式会社プラウド 代表取締役 / 山本幸美
だいぶさかのぼるのですが、私は三歳のころからピアノを習っていて、高校二年までプロになりたくてどうしようもないくらいピアノしかやっていなかったんですね。ピアノって人と接するわけでもなく、ただひたすらピアノと自分のコラボレーションです。それに一日に七、八時間くらい練習していたので、人と話す機会もあまりなかった。
その上、本来の人見知りという性格もあり人と接するということに心底苦手意識があったんです。
そんな私が大きく変わるきっかけがありました。
当時、私はピアノで音楽大学に行くことしか考えていなかったので、ピアノの先生にそのことを相談してんです。そしたら、はっきり言われたんです。「音大には行けたとしても、一流のプロになるのは難しいかもしれない」と。それまでは人生賭けてましたからその時は本当にショックで、目の前が真っ暗になるほどの挫折を味わいました。それから数週間悩んだ末に、「これからは今まで自分が避けてきたことにどんどん挑戦していこう」となぜか素直にそう思えたんです。ピアノの道をきっぱりと諦め違う道に進むことに決めました。
今から振り返れば、「これまで真剣にピアノに打ち込んできたことに悔いがないと思えるぐらい、これからを一生懸命生きていこう」と自分に宣言するような晴れ晴れした気持ちがあったのを今でも鮮明に覚えています。
大学に入ってから、少しずつ様々なことに挑戦していくうちに、少しずつ人とのコミュニケーションの素晴らしさに気づいていきました。「もしかしたら…私も楽しく人と関わることが出来るようになるかも」という思いを抱きながら、営業という仕事を希望するようになりました。
その道はすぐには開けませんでした。まず、私は意気揚々と臨んだ就職活動の面接の時に、何人かの面接官から「君は営業に向いてない」と言われたり、運よく営業として入社した会社でも、お客さまからは「あなたは本当に営業なの?」と言われたり、散々な結果でした。それから契約できない日々が半年以上続き、営業という道を選んだことを後悔したこともありますし、数字に追われて辞めようとも思ったことも何度もありました。
しかし辞めることができない理由がありました。それは両親には、「ピアノの道は諦めて、違う道を行く」と言い切って実家を出ていたから。今更「営業を辞めて実家に戻ります」なんて言えなかったんです。
このように追いつめられていた私でしたが、「今までの時間を多く費やしてきたピアノの道を捨てる決断をしたんだから、もう一度がんばってみよう。そして自分らしくやってみよう」と思い直したんです。
とはいえ、それでもなかなか結果は出なかったんですけど、あるお客様との出会いが私の人生を大きく変えることになるのです。それまでの私はお客様を見ると、円マークにしか見えないわけですよ(笑)「どうやって契約してもらおうか?」という思いが完全に頭の中を支配していましたから。
そんな時にあるお客さまから「数字が欲しいのはわかるけど、返事を急かさないでくれる!」と言われたんです。そう言われて、今までの自分の数字中心の営業スタイルはきっぱりやめようと決意したんです。ずっと必死に数字ばかりを追いかけてきたけど、「いったん数字は横に置いておこう」。そう心に誓ったのです。
はい。数字数字と言っても、まったく達成出来てなかったので(笑)
営業としては失格かもしれませんが、その時の私はそう考えた事で救われました。
「お客様がなぜここに来てくださったのか?」「お客様の悩みは何なのか?」「どうなりたいのか?」をひたすら聞くことにしました。お客様も興味を持ってくださるのには、何か理由があるんですよね。
特に「なぜお客様はここに来てくださっているのか?」という根本は一見当たり前のことのように思えますが、実は非常に多くの営業の皆さんが素通りしまっているポイントなんです。 このスタイルに変えてから一人目のお客様とは二時間を共にしましたが、私は先程の質問をして、後は簡単な商品説明以外はずっと聞き役に徹していました。そして、契約をいただけたのです。
まず三つのことに焦点を当てます。
「なぜ当社に興味を持って下さったのか?」「何に悩んでいるのか?」そして「では将来どうなりたいのか?」です。
確かに数字を達成することは大切です。でも、その視点ではなく、お客様と同じ方向をまっすぐ見つめて、一緒に解決しようと努めれば数字は必ずついてきます。