成功体験を捨てていく
ミューズコー株式会社 代表取締役/久保裕丈
残念ながら、順風満帆とは行きませんでしたね。うまく利害の一致したビジネスモデルではあるのですが、ECサイトならではの問題も生じることに後になって気がつきました。
例えば、ロングテール型のECサイトになると商品数が何十万という数になるため、その中から自分にとって本当に価値のある商品を探し出すのは、なかなか難しいのです。
ファッションについて詳しく、かつ入念な商品選びに時間を費やすことができるなら、宝探しのような感覚でぴったりの物を見つけ出すこともきっと可能でしょう。しかし、現実にはそこまでの時間的余裕がない方が多いと思います。
また昨今では、ファッションにまつわる情報や商品の氾濫、ファストファッションの台頭によるブランドに対する価値観の多様化などによって、自分にとってベストな商品と出会うことが、難しくなってきています。
とにかく多くの商品を揃えようとするのではなく、
弊社が「この商品ならお客様が買いやすい」と判断した物を厳選して扱うことにしました。
そして厳選した商品一つ一つをトータルコーディネートした状態でモデルに着せることにより、提案型のECサイトを実現させました。お客様の効率的な洋服選びに貢献できるようになり、新たなファッション感覚の提案にも繋がると考えています。
今の女性は洋服を買うときに、あらかじめ「複数の雑誌」に目を通してから自分の買いたい洋服をイメージすることが多いですよね?その後、「イメージした洋服を扱っているお店はどこにあるのか」と考え始めます。そうして調べて辿り着いたお店で「洋服を購入する」という複数のステップを踏んでいます。
しかも、ただでさえ時間がかかる洋服選び以外にも、美容や健康、仕事など、以前よりも多くのタイムシェアを奪われるようになっています。
私たちは、MUSE & Co.を通して「ファッションの情報を得ることのできる場所」と「お買い物をする場所」を一体化させることで、お客様のオシャレな洋服選びを効率的に実現する仕組みを作りました。
すごく悩みましたね。
コンサルティング会社の社員としても十分にやりがいを感じていましたし、安定した将来を手に入れることが出来たかもしれません。ですが、私にはポリシーがあります。
それは、一定期間で「成功体験を捨てていく」というものです。
例えば、一定の分野で経験を積み続けることで、成功体験があるからこその「慣れ」も出てくると思います。私自身、コンサルティングの仕事を何年か続けていくうちに、仕事に対して無意識的に楽な道を選ぶ場面が出てきていました。
「自分が大きな成長をするためにも、今の成功体験を捨てて、新しいことにチャレンジをしたい」と自然に思いましたね。自分の成長が鈍化してしまうことの方が、起業する不安よりも強かったです。もちろん、成功体験を捨てることで新しい壁にぶつかることになりますが、そこから得られる学びはとても大きいモノとなります。
そのため、私は常に一定期間で「成功体験を捨てる」ということを意識しています。