チームでしかできないこと
麻布トラスト会計事務所 / 左:青島 信吾右:坂本・亮
青島さん 私たちは公認会計士という仕事を通じて様々な会社を見て来たのですが、会社も実際に作ってみないと、作り方や運営はわからない部分が多々あります。 私自身、自分たちの会社を設立し、運営してみることで、本当の難しさや本質を理解することができました。
坂本さん 私たちの時代はある程度満たされているものの、高度成長も終わりあまり成長もしない時代ですよね。 昔は経済も右肩あがりでしたからその波に乗って、「とにかく働け」ということを言っていたイメージです。ですから極端に言ってしまうと、その時代は何もビジョンを持たずに働いていても日本経済全体がビジョンだったのかなと思うんです。 個々がビジョンを持つ理由が無かったのかもしれませんね。今は景気も悪くて、その共通のビジョンがなく自分達で新しいビジョンを模索している時です。 ですから、ビジョンや先行きがわからなくなっているだけで、今の若者も昔とそれほど変わってないと思います。
青島さん クリエイティブな仕事をされている方でも、実は経験の上にその新しい発想というものがあって、これまでの経験を基にしてでしか、人は新しいものを創りだせないものだと思います。 ですから自分の生き方というのを模索して色々な体験をすることは非常に大事ですし、その経験がまた新しい生き方や、やりたい事を見つけるきっかけになるのだと感じます。
青島さん・坂本さん
全てと言えば全てですね(笑)
坂本さん
とにかく全てを自分たちでやらないといけませんので、忙しくて時間に追われてしまうという点は、一つ大変な点ではありますよね。
手紙一枚を出すにしても、自分で切手を買ってきて、書いて、自分でださなければいけない。組織にいたころは事務の人がやってくれていたことが、今は全て自分でやらなくてはいけないので時間に追われる苦労があります。
青島さん
サラリーマンだと定額で給料が入ってきますが、独立したら自分達のお客さんから報酬をもらえなければ収入がない。
もちろん自分たちは常に努力しているのですが、努力と報酬や利益の関係が見えにくく、よくわからないという不安はありました。
そして、今月は収入があっても、来月どうなるかわからない不安もあります。自分の裁量で決定できる一方、責任も自分で負うという、表裏の楽しさや苦労がありますね。
坂本さん
なんでも自分のやりたいようにできるというのが一番ですね。そこは大きいと思います。
青島さん
お客さんがはじめて私たち個人を評価してくれたのは、サラリーマンのときではなく起業してからなんですよね。
大きな会計事務所にいるころはその事務所のブランドを評価しているたけで、究極的には私たち個人を評価してくれていた訳ではありません。もちろん個人の評 価というのもあるのでしょうが。独立してからはゼロから何のブランド力もない状態からのスタートですので、私たち個人を評価してお客さんになってくれると いう実感があるので、それは何より嬉しい事です。
坂本さん
常に自分ができることの全力+αのサービスを提供できるように意識しています。
青島さん
士業は殿様商売と言われる部分もあって、「お客さんを客と思っていない」部分があると言われることがあります。そのような殿様商売的な意識をなくすという事は私たちの業務では徹底しています。
これは当然のことなのですが、後は対応のスピードですね。ご質問や照会を受けた際にはすぐに返答することは社会人としては当たり前のことではありますが、 私たちの事務所は土日や休日でも動き続けています。iphoneが普及して、極端な話ですが、365日いつでも仕事ができる環境ができました。
そういう意味では、仕事と生活の垣根がなくなって、私たちにとっては仕事も生活の一つのライフワークとなっているのです。常に迅速なレスポンスを行うことで、私たちの事務所は信頼関係を築いています。
青島さん
サラリーマン時代に残業するモチベーションは何だったかと考えると、究極的にはお金のためだったんですよね。
今はサラリーマン時代より経済的なリスクには直面していますが、自分の働くモチベーションの順位付けですと、お金というものは下位になっていることを実感 します。それと引き換えに今上位になっているのは、自分の資格を通じてお客さんにより良いサービスを提供したいですとか、公認会計士として社会に貢献した いということです。
坂本さん
もちろん最低限の収入は必要なのですが、それよりも私たちを必要としてくれるお客様のために何かしたいだとか、何かできないかと常に考えますよね。
青島さん
たぶん人間は元々、そのような考え方や能力を持っている存在なのでしょうね。困っている人を助けたいだとか、自分ができることで社会に何かしたいという 気持ちです。もちろんサラリーマンであってもそのような意識を強く持っておられる方々は多くいらっしゃるのですが、今独立をして感じるのは、お客さんと直 接会う機会が多く、お客さんの喜びをよりダイレクトに感じられるのはサラリーマンよりもずっと恵まれていると感じます。それが今の仕事をする上での原動力 です。
坂本さん
社会や会計制度の変化に対応し、新しいことに挑戦していくのが強みだと思っています。会計事務所は有資格者が一人で運営するケースも多いですが、その理由は一人でもできるからなんですよね。
ですが私達の強みは、敢えて1人で出来ることではなく、チームのメンバーが集まって、4人でしかできない仕事に挑戦しようとしている共通認識を持っていることだと思います。1人ではできない新しい事に挑戦しているのは、他の会計事務所にはない強みだと思っています。
青島さん
多少専門的になってしまいますが、会計の世界は今、制度が大きく変わろうとしています。
日本の会計基準が海外の会計基準に置き換わろうとしています。それは前代未聞の状況なので、どこの会計事務所も対応したことが無いサービスになります。そ ういう意味ではスタートラインに一列に並んだ状態だと思いますし、会計制度の変化に対応し、今までにはない新しいサービスに柔軟に対応できるかが問われて いると感じています。
坂本さん
今の会計制度の変化というのは、江戸時代から明治時代に変わる位のインパクトがあります。
まさに、黒船がやってきて和親条約を無理やり押し付けてきて、それを受け入れざるを得ない状態です。その黒船に1人で刀を切りつけても到底太刀うちできな いのですが、1人でできなかったら2人、3人と何人かで手を組めば、船を壊すことはできないかもしれませんが、黒船の中に忍び込んでなんとか対策を打つと いうこともできると思います。私たちは新しく来る波に、チームで取り組んでいこうと思っています。