番組制作業界に革新を起こす起業家
株式会社さんばん代表取締役/ 柴田 紀之
我々はモノを作るということに魅力を感じていて、「テレビ番組を作る」というテレビマンとしての「誇り」や「喜び」を原動力として仕事をしています。
私の場合、起業家になりたくてこの会社を立ち上げたわけではなく、テレビマンとしてモノを作り、伝えていきたいという想いがあってテレビ業界に入りました。そして自分たちがもっと働きやすい現場を作るためにどうすれば良いのかを考えた結果、起業という選択肢を選びました。
映像の持つ力を使って何かを伝えていく。政治や環境問題を発信していくことで世の中を良い方向へと変えていけるだけの力が映像にはあると考えています。
しかし昨今ではテレビ以外にもインターネットを使った映像配信も広がり、リアルタイムでテレビ番組を見ずとも、好きな時に見たい番組を見られる世の中に変わってきています。つまり、テレビが必要とされなくなる時代になりつつあるのです。電通や博報堂がCM枠を売るような現状のテレビ業界のビジネスモデルのままやっていけるのは2020年の東京オリンピックまでとも言われているのです。我々も現状のビジネスモデルから脱却した新たなビジネスの創出をしなければならないタイミングに来ているのを実感しています。
一制作会社の立場から言えば、アメリカのような「テレビ局は番組を流すだけで、制作は一切行わない」というビジネスモデルが理想的だと考えています。とはいえ、日本のテレビ業界の利益構造的に、アメリカのようなビジネスモデルになることはあり得ないので別の方法を考えないといけません。
私も別の方法については手探り状態です。(笑)
テレビのCMが売れなくなり、現状のテレビ業界のビジネスモデルが維持できなくなれば変わる可能性もあると思います。しかし、仮にアメリカ的なビジネスモデルになった場合は番組制作側には独自の資金力が必要になります。例えば、「火曜サスペンス」などの2時間ドラマをご存知ですか?
あのドラマを1本作ろうとしたら制作費は約5,000万円必要になります。去年話題となった「下町ロケット」などの連続ドラマであれば、1話あたり3,000万円ほどかかります。全12話と考えると最低でもおよそ3億6,000万円が必要になるのです。アメリカ的なビジネスモデルになるとスポンサーからの番組制作費用は貰えないため、テレビ局の子会社でもなければ番組制作は実質的に不可能なのです。我々のような独立系の番組制作会社は出せても2,000万~3,000万くらいが限界でしょう。今の我々がオリジナルの番組コンテンツを作り出せないのは、資金的な問題も大きいのです。
しかし、我々はそれでもいずれは世界を顧客対象とした番組制作を行なう必要があると感じています。現状の日本のドラマは海外では売れない傾向が強いですし、今後は日本のドラマも多言語化したものを作り、積極的に世界を意識した制作物を作っていかないと、どちらにしても日本の制作会社は将来的には生き残っていけないと考えているからです。
現状の受注産業型の番組制作会社を「自分たちが企画して作った番組を売り込むスタイル」に変えていくことで、日本の既得権益に捉われずに利益を上げることが可能になります。そのためにも今後は日本向けの番組制作ではなく、初めからハリウッドに売り込んでいくことを意識した番組制作を行なう必要も出てくると思います。