感謝される仕事
株式会社アルファ・テン / 大久保 史春
大学生活のほとんどがバイトとサークルでした。アルバイトはたくさんやりましたね。私の大学生活はバブルの末期でしたが、世の中まだ浮足立っているような感じで、将来のことを真剣に考える学生は、今より少なかったと思います。逆に今の学生は自分のスキルを磨く事が必要に迫られていますので、大変だと思いますが、羨ましくも思います。勉強は、好きな事は一生懸命やりますが、苦手な事はあまりやりませんでした。部活ばっかりやっていたような印象が強いですね。
当時の私は就職のこともあまり考えていませんでした。バブルの末期でしたが、世の中はまだ明るかったので自分の未来もそれに乗っていけばいいと考えていました。そんな中で、もともと音楽が好きだったことから音楽関係の仕事を考えていました。自分の中で決めていたのは高感度が求められる会社で働くということでした。音楽が無くても死ぬわけではないじゃないですか。そういう思いで音楽メーカーを受けて全部落ちましたね(笑)。おもちゃも私の考える「世の中に無くてもいいものであり、商品を作るのは感度が高くないといけないもの」じゃないですか。その繋がりで玩具メーカーに入社しました。
百貨店やおもちゃ屋さんに営業をしていましたね。 百貨店に行くと玩具のコーナーがありますよね。私が勤務していた会社は、お金をかけて造作を施しているんです。そうすると他のメーカーは、その場所に商品をおけなくなります。戦略として賢いです。 ですから、営業的には一定の売り上げが予測できるので、あとは不足分を補うコンサルティング営業に特化できました。 そこで「提案力」は体に染みつきましたね
玩具メーカーへ入社した時に、5年間はやろうと決めていました。その後の将来は5年後に改めて考えようと思っていました。実際5年間働いてから考えるとやっぱり音楽業界に行きたかったんです。なので、音楽業界へ行くことにしました。退社するまで、私は5年間で自分らしい仕事を3つしたんです。
1つは、どんなに小さい販売スペースでも売り上げを作れる店舗の設計です。たとえデパートからの割り当てが減ったとしても今までと同じくらいの売上を上げる方法を凄く考えましたね。売り上げ効率を徹底的に追及しました。
2つ目は、新しい業態を作りました。私が玩具メーカーにいる時、プリクラが大ブームだったんですよ。そこで、百貨店の売り場にプリクラを中心とした「ゲームコーナー」を作りました。流行は廃るものですが、そこを見据えて、初期投資の回収期間を2カ月と予測して売り場を作ったので、大盛況でした。
3つ目は、仙台駅でクリスマスイベントを開催しました。玩具の売上は12月はクリスマス効果で3倍になるんです。そういう時期は、売上をさらに上げるために売り場を広げたいじゃないですか。しかし百貨店は年末に売るものが多いのでなかなか難しいんですよ。そこで仙台駅でイベントを開催しました。
音楽が好きだったことと、玩具メーカーで働いているときに「流通って面白いな」と考えていたことが理由で入社しました。そこではスーパーバイザーといって、フランチャイズ店のオーナーの方に本部の施策を伝え、実行するように指導する仕事をしていました。今では当たり前となっていますが、その会社はITを駆使しマーケティングを行うという会社でした。それを通してデータベースマーケティングの強さというのを学びましたね。
私はもともと音楽をやりたかったじゃないですか。勤務していた会社で、商品の利益やマーケティングについて学んだので、自分でやってみたいなと考えるようになりました。そういうときは失敗など考えていなかったですね。ただ、CDショップは最初の仕入れでお金がかかるんですよね。融資を受け、世田谷に25坪ほどのお店を作りました。
はい。でも実際にやっている時はいい経験をしているという実感はありませんでしたね。お店を作ってから1、2年目の売上はとても好調だったんです。しかし、3年後には前年を下回るようになり、4年目で急激に落ち込んだんです。これはまずいと思っている時にipodが登場しました。実際に購入して使ってみた時に「パッケージ販売の時代は終わる!」と思いました。もともと私がCDショップを開業しようとしたときには、CDが無くなるといわれていたんです。音楽はもともと形のないものなので、インターネットに適しているんですよね。 しかし当時の私は全く逆に考えていました。昔、CDレンタルをやりたいと考える人が出てきたときに、「そんなことをされては音楽業界がつぶれる」と危惧し、音楽業界がレンタルショップを潰しにかかった事がありましたが結果的にはCDの売上は上がったんですよ。 それは、3000円のCDは買わないけれど、300円なら借りたいなと思うアーティストに手をのばしたということです。そういった人がCDを借りて、聞いていくうちにファンになり、CDを購入するという流れが生まれたからなんです。私はインターネットが普及するということは、音楽に接する機会が増えるので、業界は更に活性化すると思っていました。 私の大きなミスは「時間の価値」を見抜けなかったことです。 音楽を聞く1時間とネットで双方向のコミュニケーションができる1時間の価値を比べた場合、結果的には、後者を選択する人が圧倒的に多かったわけです。 結果として音楽を聞く機会は、以前より減ってしまっていたわけです。