若者はハイブリッド農業で稼げ!
株式会社グランパ 代表取締役社長/阿部隆昭
インターンの大学生が起業家へ取材する!起業家インタビューのthe Entrepreneur(アントレプレナー)
1943年青森県生まれ。日本大学経済学部卒業。1968年青森銀行入行。柳町通支店長、津軽支店長、東京国際部参与を経て、その後、金融派生商品を学ぶために欧米5か国に滞在。1995年同行退行。
2年間、公認会計士事務所に勤務したのち、実弟の経営する建設会社に勤務。2004年、神奈川県横浜市に株式会社グランパを設立し、代表取締役に就任。フードビジネス推進機構理事、神奈川県中小企業活性化推進審議会委員。
「株式会社グランパのホームページ」
弊社は「植物工場」を使って「農業で安定的に儲ける仕組みを作り出している企業」です。皆さんの中には「農業は儲からない」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。確かに農業は気候条件の変化によって大きく収入を左右される職業です。極端な話、収入がゼロになる可能性もありえます。
しかし、この自然環境による作物への影響を最小限に抑え、「安定した出荷」を実現したのが、弊社の扱っている「植物工場」なのです。弊社の植物工場は自然の力を最大限に利用する設計のため、気候条件の影響を完全には無くせませんが、露地農業とは比較にならないほど安定的に農作物を収穫することができるのです。
そして、私が若者にオススメする農業経営こそ、露地農業と植物工場を両方行う「ハイブリッド農業」です。
初めから植物工場のみで農業を行うと安定生産が見込めて収入も安定し易いですが、初期投資が大きく返済に時間がかかります。
一方で露地農業だけなら大きな資金を必要とせず、豊作時には大きな儲けを出すことも可能ですが、天候によるリスクを大きく抱えてしまいます。
植物工場と露地農業を同時に行うことで互いのデメリットを相殺できるため、ハイブリッド農業は非常にオススメです。
植物工場の外観。通称「ドーム」と呼ばれている。
農業起業に至った要因は大きく2つあります。
1つ目は、私が青森という農業に深い関わりをもつ場所で生まれ育ったことです。
2つ目は、銀行で融資課長を6年ほど担当していた時の事でした。不良債権となっている案件には1次産業がとても多かったのです。その事実を実感して、これはどうにかしなければならないし、何かやりがいのあるものに変えていけるのではないかと思ったのです。当時働いていた銀行からアメリカとヨーロッパに2年間留学させて頂き、海外の農業について学べた経験も起業への後押しとなりました。驚いた事に、なんと海外で農業を行っている人たちは皆しっかりと稼いでいたのです。
私は「農業を農協に頼らないカタチで行える仕組みを作ることができれば、日本でも稼げる農業を実現できる」という確信を持っていました。
これらの要因もあり、私は61歳のときに農業で起業することを決意しました。次の若い世代のために、農業で稼いでいけるようなヒントや足跡のようなものを残していきたいと思ったのです。
植物工場内の様子。
まずは日本の農業の現状から説明しますね。
日本で農業を行っている人たちの多くは年配者です。農業就業人口の平均年齢はなんと68歳を超えているのです。ということは、5年後に農業を行っている人は今よりも更に減少している可能性があります。
日本の農業の大きな問題点の一つは、農業人口が圧倒的に高齢化していることです。後を継いでくれる人がいなければ農業就業人口は減る一方です。当然このままでは国の食料自給率も下がる一方です。かつての日本の食料自給率のピークは昭和40年度であり、カロリーベースで73%もありましたが、現在の自給率は39%まで落ち込んでいます。
これほどまでに食料自給率が下がった原因は日本の高度経済成長時から始まりました。多くの稼ぎを生み出すことのできる2次・3次産業ばかりに労働力が集まってしまい、1次産業である農業に人が集まらないようになってしまったのです。
しかも国が農協を使って農業を守るようになったため、農業は完全に農協任せになってしまったのです。農業を取り仕切る団体は農協のみであり、日本の農業界から長らく競争環境が失われていました。
しかし、2014年から国は新たに農業改革を行うようになりました。有休農地の貸し出しや、それまで禁止されていた企業の農業運営の解禁。農業を農協だけに任せるのではなく、農協以外の企業組織が農業に参入できるようにしたのです。ついに日本の農業にも競争原理が働くようになり始めたのです。つまり「誰でも農業で稼ぐチャンス」が生まれたのです。
そうです、誰でも稼げる農業ができる時代になったのです。
農業は人間が生きていく上で必要不可欠な1次産業であるにも関わらず、他の産業に比べて遅れを取ってきました。このことは、裏を返せば農業はこれからどんどん成長していける余地があるという事です。2次、3次産業には今後の大きな成長は見込みづらいですが、農業にはこれから「大きく成長する可能性」があるのです。
収穫作業の様子。