いつも初心に返る
Four-heart-clover 伊藤 千枝 (左) 荻 尚子 (右)
萩:若いころは将来のことはあまり考えていませんでした。
大人になってから考えるようになりましたね。そういうふうに思っている女性も多いと思うんですけど、結婚くらいまでの人生設計しかなかったです。実際に結婚してみて、「あれ、ゴールじゃなかった」と思うようになりました。ただ、あるときに人生にかなり深く悩んだことがあったんですが、そこから立ち直るきっかけで、カウンセラーになろうと思ったんです。
結婚するまでは、特に人生設計とか深く考えたことはなくて、高校を出たら大学、大学を出たら就職と迷いなくきて、就職してからは結婚するんだと思っていました。結婚すると何もすることがなかったというか、次に向かうところがなくなったんです。その時にいろいろ悩むことがあって不眠症になってしまったときに、精神科のクリニックに行くことがあったのですが、そこの先生が優れた対応をしてくれたおかげで、その日のうちにかなりその不眠症が治ってしまい、「こんなこともあるんだ」って身をもって体験しました。ただ、今から精神科医をめざすことは出来ないと思って、カウンセラーになるのを目標にしました。
伊藤:人と接する仕事がすごく好きで、幼稚園の先生とか、秘書を経験して来ました。
心理学は学生の頃から好きで自分で勉強していたんですけど、幼稚園に勤めていたときも、保護者の方が抱えている悩みはとても大きく対応に追われていました。保護者のメンタルケアや、信頼関係を築くのはすごく難しかったので、保護者の方から見たら『若い女の子」である自分と『先生』という立場の自分との間においていろいろ感じることが多くありました。
その後、一般企業での人事関係や秘書の仕事でも、人の悩みを聞いたりすることが多かったんです。実際に鬱になる社員の子の相談なども受けていた時にもっとメンタルについても深めたいと思いました。
萩:まず心理学の基本的な勉強をして、それからカウンセリングの実践的な技法を学びました。それから研修で現場を見ていったのちに認定の資格をもらって卒業して、開業しました。ただ、そこでは勉強をすることだけが目的の人が多くて、そこで学んでいた人の1割ほどしか実際には開業しません。大体の人たちは身近な人にサポートして満足してしまったり、もともと開業を考えずに、ボランティアでやっている人もいます。それから、カウンセラーは就職先がほとんどないので、学校に行ってから行き詰る人は多いですね。
伊藤:あるいは、カウンセリングの仕事に携わることによって、
人の人生を背負ってしまうのが怖くなって途中でやめてしまうケースもあります。
萩:開業への一歩を踏み出すのは勇気がいることで、特にカウンセラーというのは、
自分で開業・起業するか、すごく狭い枠のなかでどこかに属するかしか選択肢はないんです。でも、その受け皿のほうはすごく小さいので、そこで自分で開業するまでの勇気は出ないという人がほとんどですね。