トライ&エラーで自分が形成される
株式会社アトコレCEO / 成田修造
2011年2月頃です。友人が今の組織を退職するということで、一緒に起業しようという話を持ちかけてくれて、気持ちが一気に高まりました。壮大なプランを朝まで語り明かしたり、ビジネスモデルをつくったりしました。
「自分が起業する」ということが現実に近づいていけばいくほど、自分の会社に注いでいた情熱が薄れていくのを感じてしまったので、会社に辞職をお伝えして、準備に徐々に入り出そうとしていました。が、急にその友人から起業の話を白紙に戻してくれと言われました。念のため言っておきますと、今でもその友人とは仲がいいし、ちょうど3.11の地震があり、色々と状況が変わっていたりしたので、仕方のないことでした。もちろん驚きましたし、色々考えましたが、私はその時既に辞職を伝えてしまったので、あとに引けない感じで。これで別会社に行ったり、そのまま「やっぱ残らせてください」というのもださいので、残された道は起業しかなかった(笑)。自分でイメージした王道の起業ストーリーとは違う、ひょんなきっかけでした。
そうですね。ただ、1人の期間は少なかったです。会社を辞めたのが3月末頃だったんですが、3月の上旬に今のアトコレの共同創業者の石田に出会い、そこから1,2週間で一緒に起業することが決まりました。
あの出会いは忘れもしない、新宿南口のスタバです。本当にたまたま、自分がプランが白紙になったので「どうしよっかなー」と考えて散歩しつつ、スタバにふらっと入りました。そうしたら、石田がいて、まああいつとは元々大学1年の頃からの友人で、年に数回は会うくらいの仲だったんですが、「久しぶり、最近どうなん?」みたいな話になったときに、退職・起業の話をもちかけました。そうしたら「え?まじ?ちょっと詳しく聞かせて」ということになり、そこから具体的な話になっていきました。
これも偶然で、実は当時、石田は歴史学の研究を独自に進め活躍をしていたのですが、それと平行してITベンチャーで正社員で働いていたりして、ビジネスにも興味をもっていたのです。そういう偶然が重なって、じゃあ一緒にやろうよ、ということで、共にプランを固めるようになっていきました。
それ以来、事業アイデアを色々と考えるようになったのですが、苦戦の連続でした。プランを出しては潰れの繰り返しで、5ヶ月ほどかかり、ようやく会社ができたのはこの前の9月。起業を決めてから半年以上経ってしまいました。その過程で、大体50前後のプランを潰したと思います。色んな人に相談しては否定の連続で・・・結局自分達でプランをどんどん潰してしまっていましたね。今思えば、他人の言うことなんて気にせずどんどんやってみればよかったのかも、とは思っていますが。
そうですね。自分でも興味があった領域で、出資者も応援してくれて、チャレンジしてみる価値はあるかなと思いました。事業的な課題は色々あるとは思うのですが、まずはスタートを切ってみる、そっから柔軟に対応していくというやり方が効率的かなと。実際、サービスを決めたことで、色々なことがどんどん進んでいったと思います。これはサービスを持つ前は感じることができなかったもので、色んな学びがありました。
そうだと思いますね。というのも、サービスを通して自己表現ができますから、見えてくるものも変わってきますよね。やっぱりアイデアよりアクションが大事で、実際自分はサービスを持ち、会社を作ってみたことで、色んな人からアドバイスをもらい、学びを得ました。会社の経営方針なども、それによって少しずつ進化していってると思っています。
会社としてのゴールをある程度明確に決め、逆算していくこと、それから「どこで戦うか」という市場選定を大切にして、状況変化に応じて柔軟に会社方針を変化させていく事を学んできていると思います。現状、アトコレは、アート作品の解説まとめサイトとしてアート好きの方に楽しんでいただいていますが、どれくらい事業的にスケールするのかは、まだわかりません。なんとなく楽しいというレベルではなく、常に市場性とユーザー動向をチェックし、必要とあらば転換をしていく必要があります。また、事業としてどこにゴールがあるのか、1年後、3年後、最終的にどうなることが理想なのかも常に考えなければいけない。その目標から逆算して、会社全体の方針を決めていかないといけないと思います。この市場や事業スケールに対する意識、逆算思考は、よく言われていることではありますが、実際動いてみて初めて理解できることも多いと思います。
そうですね。今後は状況変化の中で、アトコレ以外のチャレンジもしていきたいと思っています。もちろん分散のしすぎはよくないですが、事業のスケーラビリティがない中でもがいて成長までに時間がかかりすぎるケースは実は多く、それであれば、少し時間をかけてある程度複数のチャレンジをする中で、勝負の軸足を決めていくというのも正しいやり方なのではないかと思っています。アトコレは、一番最初のサービスで哲学も乗ってますし、「愛着」はありますが、「こだわり」はありません。今はアトコレの他、新しい領域のスマホアプリの開発も進めていて、この事業の予測から次の会社方針を固めていっています。