正しい価値観を持っているから、成功する
株式会社 小宮コンサルタンツ / 小宮 一慶
そうですね、資質のない経営者の依頼は断ります。私は15社以上の顧問先は持たないようにしているんですよ。そしてもう1つの条件は5年以上の付き合いがある事です。そのぐらいの期間がないと見極められませんからね。企業の規模の大小は特に気にしませんが、世界一や日本一になれる芽がない企業の仕事は断ります。それは経営者の人間性でわかりますね。 またそれだけでは社員10人が食べていくのに十分ではないので、会員制のセミナーも行っています。現在300社近くの企業のオーナーや経営者に参加して頂いていますが、その中から将来私が顧問を担当する企業が出てくると思いますね。こちらから頭を下げて仕事を貰った事は一度もありません。コンサルティングは経営のコーチとして行う仕事なので、頭を下げてコーチをやる事は有り得ないんです。
大雑把に言うと「企業をこれからどうすればいいのか」という事が多いです。私は顧問先の上場企業2社と創業時の本当に小規模な頃からお付き合いしているんですが、日本で上場できる会社は1000社に1社で、その中でも創業から上場できるのは5000社に1社と言われています。その2社とお付き合いしている事は誇りに思っていますね。そして私自身の能力で1つだけ自信を持っている事は「経営者を見る目」です。多分10分も喋ればその人がどういう経営者なのかわかります。経営者に必要な資質は人間性、考え方、努力する姿勢です。それさえあれば立ち位置さえ間違えなければ成功するはずなんです。例えば砂漠に種を蒔いても芽が出るはずないじゃないですか、そういった立ち位置を間違えないように今まで多くの会社を見てきた経験を活かしてアドバイスしますね。
私の尊敬する経営コンサルタントである一倉定さんという方が「会社には良い悪いはなく、良い社長、悪い社長がいるだけである」という言葉を残しているんですが、正にその通りです。中小ベンチャー企業等は経営者で100%良し悪しが決まるんです。だからこそ人間性を高める必要があるんですよ。経営者に資質がなくともたまたま運が良くて儲ける事もありますが、長続きはせず道を踏み外して、刑務所行きになる事も多々ありますね。
基本的にマネジメントや統制はしていません。私自身も管理される事が嫌いなので社員にもしないんですよ。ただ「お客様第一」を徹底する事と、与えられた仕事をとことん行うという事は厳しく言っています。それ以外は何もしていませんね。管理しなければならない人は初めから採らないんです。
仕事も基本的に9時から18時までで残業はさせませんが、密度の高い仕事をするよう心掛けていますね。その中での一瞬のひらめきがお客様を救う事もあります。でもそのひらめきはダラダラ長時間仕事をしていて生まれるものではありません。普段から考えをめぐらせて経営のあらゆる知識を学び続けている状態からひらめきが生まれるんです。だから勉強し続けることが重要です。ひらめきは脳の中にあることの関連付けなのでインプットがあり普段から脳を動かしている状態でないと絶対に生まれません。
好きになる事です。仕事も勉強も嫌いだと続かないですしね。それに嫌いだと絶対に一流になれません。勉強や仕事って人より少し出来ると好きになるんです。その「少し出来る」状態になるまで努力できるかが鍵なんです。
とにかく勉強し続けて下さい。大学の教科書を書けるくらいの知識がないとコンサルタントは出来ません。大学の教科書って難しいものですが、学生のうちにそれを読みこなす訓練をしなくてはいけないんです。大人の世界はもっと難しいですからね。世の中って「理屈」の上に毎日変動する「現象」があるんです。その「現象」と「理屈」を組み合わせた者が勝つんですよ。「現象」の中にいて「理屈」をわかっていない人が多いから、大学で「理屈」を学ばなければならないんです。
一流になれない事はやらないというのが私の持論です。付き合いでゴルフをやる事がありますが一流になれない事がわかっているから練習は一切せず、その時間を家で勉強して仕事に繋げます。もちろん、もう少し時間的に余裕ができればゴルフの練習にも行きたいですが、今のところなかなかそういう時間がないのです。世の中が私に求めているのはゴルフが上達することではなく、経営のアドバイスですからね。経営のアドバイスはお客様が喜んでくれるので有意義ですからね。特に若い内は自分がなりたいと思うものに集中すれば必ずいっぱしになれるんです。今の時代、人と同じでは稼げませんが何か1つでも人より秀でたものがあれば必ず勝てます。
今回の取材では、特に小宮さんが経営者にとって必要だと思う資質について御話して頂きました。
「世の中は甘くもないが厳しくもない。甘く生きてきた人間には厳しい待遇、厳しく生きてきた人間には厚遇。」というご発言に、多くの人がモチベートされたのではないでしょうか。
ちなみに私は、小宮さんへの取材から中国古典に興味を持ち、陽明学の勉強会に参加するようになりました。
小宮さんの仰る「正しい価値観」を知る事は日々の取り組み方が全く異なるものに変化する事に通じると実感しています。
2010年11月16日 担当:三ツ橋