当事者意識を持って学んでいるということが大切
株式会社プロノバ / 岡島悦子
私は、今の時代、リスクを取らないことはリスク、だと思うのです。リスクを恐れて自分自身で意思決定出来ないことこそが、リスクだと思うんですね。例えば、世の中の流れが分かっていて、変化が必要だと見えているのに、自分はただベルトコンベアーに乗っているだけの人生を過ごす事は、ものすごく大きなリスクです。現場の方々というのは本当に一生懸命に働いています。しかし、会社という大きな組織、大きな流れの中で、個人が変えられる事は本当に小さく、変えていくこと自体も難しいんですね。 何かを変えようとして、そこで起こる抵抗を凌駕して変革をもたらすことは本当に難しいんです。起業は、自分自身でリスクを伴いながら意思決定ができる、その自由を手に入れられるということが本当に大きいと思います。もちろん自由には責任が伴います。一人でビジネスをやっているならばいいのですが、従業員がいたり、取引先があったり、関係者がいれば責任を果たさなければなりません。しかし、そのことも含め、起業により得られる自由は本当に得難いものだと思います。
一番大切なのは、「これがやりたい」という強い想いです。例えば、子供の頃、自分や周囲に困難な体験があって、どうしてもその課題を解決したいという強い原体験があること、などが起業する上では大切です。人から格好いいと思われたいから、何となくブームだから社会起業家になりたい、と思うことと、自分の原体験に基づいた想いで起業することでは、雲泥の差があります。なにか強い原体験とストーリーがないと、結局人を共感させることが出来ないので、どんなにいいビジネスプランであっても、お金と人がついて来ないんですね。流行りものだけで起業しても、失速しやすいんです。なので、強い想いを持っていることが起業のスタートだと思います。
とにかく、勉強してください。経営には定石のような王道があるので、まず定石を学び、それを実践して、それから自分なりに工夫し、変えていくのはいいと思います。しかし、学生起業家の方々を見ていると、基礎を押さえずに聞きかじりの知識でビジネスを行っている方も
多いように思います。もちろん、行動を起こさない人よりは、自分で行動を起こしている学生起業家たちはすごいと思います。一方でもっと要領よくできる方法もあると思うんです。経営のフレームワークは、先人達がこれまでの失敗をもとに、こうすればある程度うまくいく、という方法を示したものなので、それらの過去の知識を使わないのは非常にもったいないです。例えば、経営者が財務三表を読めない、などは論外ですし、そういう最低限の筋トレは若いうちにやっておいたほうがいいと思います。
もうひとつは、起業をする上で良いメンターを持つことが重要です。起業は初めてやることばかりなので、自分が何を分かっていないのかが、分かっていないんですね。それが一番の問題だと思いますが、メンターをもつことで、無知の知、を教えてもらえるんです。また、成功し始めたとき、人間は傲慢になり易いんですね。そんな時に牽制してくれる鏡がすごく必要で、自分の姿を映し出す鏡になるのがメンターです。そういう人がいないと、裸の王様になってしまいます。なので、自分のサポーターを早いうちから集めておくことが大切です。成功している経営者などは、早い段階から、周りを巻き込んでいる人が多いと思います。自分たちも色んな人に助けられたと思っている方が多いので、合理的な理由があればメンターとなって相談に乗ってくれる人は沢山いると思います。
こういう人に教えを請いたいと思ったら、自分自身が相手に興味を持ってもらえるような面白い人間になるべく、準備しておくことが大切です。メンターになって欲しい人と会えたときに、相手にお土産感を感じてもらう事が大切なんです。私も時々、メンターになってくださいと言われます。しかし、私の持っている知識やネットワークが欲しいだけで頼んできているなと思えば、当然引き受けません。お金にもならないけれど、少し助けてあげようかな、と思わせることを言う、とても難しいですが、それが大切です。そのためにも、相手に興味を持ってもらえる、面白いと思ってもらえる原体験やストーリーは重要です。 あとは、「この人、何となく助けてあげたい」と思わせるチャーミングさは最大の武器かもしれませんね。
学生のうちは、選択肢が少ないんですね。子供に「何が食べたい?」と聞くと、大抵ハンバーグやカレーライスって言うじゃないですか。それは知っている選択肢が少ないから、自分のメニューに2品しかないから、その中から選ぶので範囲が狭いんです。学生も同じで、学生として知ることの出来る幅の範囲でしか、起業のメニューを選ぶことが出来ないんです。学生として出来る範囲から起業することも価値があると思いますが、それよりも、どうやって自分の中のメニューを増やせるかを考えながら生きていくことが大切だと思います。色んな選択肢がある中から、本当にそのうちの1つが良くて起業するのと、とりあえず目の前に見える選択肢がそれしかない中から起業したのでは、出来る世界が全く違うと思います。