新・棚からぼた餅の法則
有限会社ドラマティックステージ / 平野 秀典
きっかけは会社の業績悪化でした。私は当時仕事でも従来にない新しいことを表現するのが好きでした。営業トークの最新プログラムを取り入れ営業所の成績を上げたり、女性営業育成で数億円の実績を上げたりと。でもそれは、会社の保守派には面白くない行動なんですね(笑)みなさん「出る杭は打たれる」ってことわざご存知ですよね?私は見事に打たれました(笑)。でも「出過ぎた杭は打たれない」という名言を知り、もっと出てみたんです。そうしたらまた見事にに撃ち落されました(笑)「出過ぎた杭も出る角度によって打たれる」という貴重な学びでした。
そんなこんなでいろいろやらせてもらっていたので、恩返しの意味も込めて自分がこの会社を建て直せないかと考えたんです。建て直すのであれば、何か自分の得意なことでできないかと考えた時に出てきたのが、リアルタイムでやっていた芝居でした。
私は営業もやっていたので、役者が使う表現力を営業も磨いたら変わってくると思っていたんです。まず、近くの営業所から「ゲリラ活動」を始めました。営業所を回り、道場破りをしたんです。「私の説明を聞いてその商品を買いたくなったら、私の説明を学んでみませんか?」その結果本当に欲しくなったようで(笑)、勉強会が始まりました。
私が行った営業所の成績はどんどん上がっていきました。営業マンが「商品を表現する」ことを覚えたんです 。
‘商品説明‘で、商品の特徴を伝えるのではなく、‘使っているお客様のシーンを演じる‘というやり方を教えて回ったんです。「この商品良いですよ!」と言わなくても、自分が演じることによってお客様は商品を自分が使った時のハッピーエンドを勝手に想像できてしまうんです。役者ってセリフで伝えようとしていたら二流なんですよ。セリフを聞いたお客様にイメージしていただいて、初めて一流になれるんです。芝居とイメージはセットなんです。役者でいうと工夫がないセールスマンは三流くらいですね(笑) 例えで言えば、商品の方ばかり見てお客様にお尻を向けて喋っていることが多いんです。
私がしたことは、社員の皆さんが表現する喜びを知るきっかけになっただけですので、一人で立て直したわけではありません。話題になったというよりは、私の活動は社内的には非公式でしたので、会社は私の扱いにとても困ったようです。
そのころにたまたま行った大学の同窓会で出版関係の方と出会ったんです。その後その方の関連で出版社の社長とランチを一緒にしたときに、『本を出してみませんか?』という依頼を受け、企画書を書いてくださいと言われたんですね。 実は、その出会いの前から、自分のノウハウを本に書きたいなーと思っていたので・・・企画書はすでに書いてあったんですよ!だから翌日に送りました。それをきっかけに本を出版することができました。その後二冊目の依頼も来ましたが、その時まだ私は会社で働いていましたので、会社はますます私の扱いに困ってしまったんです(笑)。 ここで私の居場所はもうここではないと気が付いたんです。会社を辞め、独立起業することを自然と選ぶことができました。
ですね。人生はたくさんのシーンという点がたくさんあって、それが全部一つの線として繋がっているんですよ。全然関係ないことだと思っていてもどこかで繋がっているんです。
皆さん、起業すると大きな決意をして起業すると思うでしょうけれど、私を含めて周りにそうやって起業をした方はほとんどいらっしゃらないんです。 自分を運んでくれる‘流れ‘をキャッチできる人は、自然と起業するタイミングがやってくるんです。‘目に見えない流れ‘をキャッチするんです。 私は8月に会社を退職したのですが、9月にはもう会社を設立しました。スピーディーといえばスピーディーでしたが、その時スピードは全く感じませんでした。やるべきことを当たり前にやるという感覚でした。
人が生きてきた人生は、年齢に関係なく、それぞれオリジナルなんです。20代の今だと、今まで自分が何に興味を持ったのかということを振り返ってみてください。人生というステージは、オリジナルな小さなシーンの連続なんです。ずっと同じようなシーンの映画は面白くないですよね。全然関係なさそうなことが後で繋がってくるから映画は面白いんです。人生もそれと同じです。
11月末発売の新刊『1%の自分革命』(プレジデント社)にも書きましたが、人生は一筆書きのドラマです。いいことも良くないこともすべて未来の感動につながっていることを信じてください