一度きりの人生を全力で生きる
弁護士ドットコム株式会社/元榮 太一郎
私は自分の「気持ちの高まり」に従うようにしています。気持ちの高まりが際立った時は目標の優先設定において、常に高い位置でその目標を達成するために没頭できます。要は、設定した目標を確信しているかどうか。目指すことの意味や自分の人生においての重要性が確固たるものになればなるほどブレないので、わくわく感が高い時はその思いを信用して飛び込むようにしています。司法試験を受けた時も同様です。弁護士ドットコムを思いついた時は、大学2年生で弁護士に憧れたとき以来、久しぶりに気持ちの高まりを感じました。私の人生経験上、そのくらい気持ちが高まった時は絶対にあきらめないので、うまくいきます。その思いに従っただけなので、不安はまるでありませんでした。
「人生を丁寧に生きなければいけない」と初めて気づいたのは、大学受験の時でした。ずっとサッカーをやっていて、冬の選手権目指していたので、浪人するつもりでいました。しかし、県ベスト16で負けてしまい、全国代表にはなれませんでしたので、3年生の10月中旬に急に道を失い、そこから塾に通い始めたのです。ところが、初めて塾の自習室に座ってみると本当につまらなくて、「これをあと1年もやっていたら自分はダメになってしまう、何としても現役で合格しないと。」と危機感を感じました。そこで志望していた私文の受験科目をみたら3科目。残された時間は3ヶ月。「1ヶ月1科目で何とかする!」とスイッチを入れました。模試では1度も合格ラインを取ったことはなくて、再検討ラインでしたが、自分のなかでは確実に吸収していっている実感がありました。その感覚を信じ、何とか慶應義塾大学法学部に合格することができました。「自分を信じれば目標は達成できるんだ」という自信を得るとともに、「自分の人生は何かいただいているものがある」と感じたんです。そこで、「これは丁寧に生きないとまずいぞ」と感じました。その時ははっきりと言語化できていませんでしたが、「この人生は自分の為だけに生きちゃいけない」という使命感みたいなものを感じました。そこから丁寧に生きるということを意識するようになりました。その後の司法試験も短期集中で見事合格し、その思いは更に強くなりました。楽天の三木谷社長の阪神淡路大震災で親戚が亡くなったのをきっかけに「一度きりの人生やるべきことをやろう」と楽天をスタートした、という創業ストーリーを読んだりするうちに、「一度きりの人生」という考え方がより強まったんです。
「弁護士とユーザーを繋げる場所としてのプラットフォームが絶対に必要になる、それに社会貢献度も高い」ということは確信していました。また、実際にサービスを始めてみると、収益化はできていないまでもユーザーから感謝の声が数多く届きました。「社会の役に立っているサービスであれば、とにかく継続させることが優先であり、収益を考えるのは後だ。」と考えていました。弁護士の皆さんにも、徹底的なご理解を得るまでは経済的なハードルは設けてはいけないと考え、最大の受益者である弁護士の皆さんからも一切料金をいただかなかった中での赤字ですから、どこかのタイミングで何らかのかたちでお金をいただくことができたら利益化を模索できるだろう、という思いで乗り越えたんです。孫正義さんの言葉にもある「読んで、仕掛けて、待つ」を実践し、業界の熱が高まるまで徹底的に待ちました。
今は下りのエスカレーターに乗っているような状況だと思います。全力で駆け上がらないと、今より上には行けない。「まさか潰れるわけない」と思っていた大企業ですら潰れる時代です。起業して、周りの経営者の話を見たり、聞いたりしていると、「現状維持は衰退の始まり。常に変化していくこと。」を大事にしている方が多いと思います。現状維持こそが最大のリスクではないかと思います。