自分でレールを敷く人生
株式会社レアジョブ 代表取締役会長/ 加藤智久
実際にインターナショナルセンターに行ってみると付近に警備員がいたので「ここは何をしている施設なのか」と尋ねてみました。 すると警備員が「ここは留学生の寮だ」と答えてくれました。
私はフィリピン人の先生を探しに来たのに、フィリピンへの留学生が集まっている場所に来てしまったのです。最初は「ここには用が無さそうだな」と思ってしまいましたが、せっかく教えてもらった場所ですし、とりあえず施設内を歩き回ってみました。
すると、「English tutor wanted」すなわち「英語講師募集」の張り紙がしてあったのです。私をその張り紙を見て、「同じことをすれば先生が集まるかもしれない」と考えました。
そこで目の前を通りかかった人に、「どうしたらここに張り紙をさせて貰えるのか」を訊くと、「学務課でハンコをもらえれば貼って大丈夫」と教えてくれました。
その後無事に貼り紙を貼ることができたのですが、全部で4、5人の応募があり、そのうち会えたのが1人だけでしたね。でも、その会えた1人がとても素晴らしい方でした。フィリピン大学の女子大生だったのですが、その子のお母様は起業家であり、幼い頃から仕事の手伝いをしていたと言うのです。そのため起業にも関心が強くビジネスパートナーとして手伝ってもらえることになりました。その後は彼女の友だちを中心に講師が集まり、私は彼女に送金をすることで講師たちに給料を払ってもらえるようになりました。そうして最初のオンライン英会話の事業化が進んでいきましたね。
偶然が重なった結果の講師集めだったので、もう一度やれと言われても同じようにできるかは分かりませんね。(笑)
早くオンライン英会話で起業したかったからです。この「やりたい」という気持ちが私を突き動かしていました。シンプルな理由ですが、起業にはとても重要となる気持ちです。
高校時代の私はクラスメイトと馴染めず、いつもクラスの端っこに座っているようなタイプでした。私は進学校に通っていたのですが、クラスメイト達がどうしてあんなに勉強してまで良い大学に行きたいのか、理解することができなかったのです。
漫然とした日々に勉強意欲も徐々に無くなっていたのですが、当時から私は本を読むことには意欲的でした。
そして私の人生に大きな影響を与えてくれたのが、大前研一さんの本だったのです。本を読んで以来、大前研一さんの大ファンになり、「直接話を聴いていみたい」と思うようになりました。
そんな想いを抱いているところに、大前研一さんが「一新塾」という私塾を開いていることを知りました。そこに行けば直接話が聴けると分かり、私は一新塾の生徒になったのです。一新塾には、大前研一さんを始め、政治家や経済学者、アーティストなど様々な人のお話を週替わりで聴く機会がありました。
毎週いろんな業界の第一線で活躍されている方々の話を聞いているうちに、私は「人生には2通りある」と感じるようになったのです。1つが「良い大学に入り、良い会社に入社する」という敷かれたレールの上を歩く人生です。もう一つは、一新塾に講師として来ているような「自分で道を切り拓いていく人生」でした。
私の親は努力して良い大学へと進学し、その後銀行マンとなり出世街道を歩んでいました。
立身出世を叶えた素晴らしい親だと思います。しかし、私は自分の親のような生き方をしたいという思いよりも、「自分で道を切り拓く人生しかない」と考えるようになりました。