” 歪み ” がチャンス ~誰もやっていない、誰にも負けないことを~
Zuva株式会社 代表取締役 菊池慶輔
<経歴>
Zuva株式会社 代表取締役 菊池慶輔
世界のエマージング企業(=スタートアップ)関連の情報提供、新規事業関連の支援サービスを提供するZuva株式会社の代表取締役。
早稲田大学法学部卒、東京工業大学大学院環境・社会理工学院技術経営専攻修了。2019年に独立系VCであるウエルインベストメント株式会社の投資部部長に就任し、産業・技術動向の調査分析から投資スキームの策定、投資先企業の事業開発支援まで広範に担当。日米のシード・アーリーステージ企業に多数投資を実行。2022年には、自ら共同創業した、ファンド投資先企業であるZuva株式会社の代表取締役に就任に現在に至る。
<企業情報>
Zuva株式会社
設立:2017年12月
AIアシスト型の世界のエマージング企業データベース「ZUVA PRO」をはじめ、アナリスト伴走型の調査サービス等を提供。
ZUVAでは、世界のエマージング企業に関する大量データを自ら収集・加工する他、海外の有力DB複数社からのデータ連携、シリコンバレー等のVCから提供を受けたデジタル化されていないウェットな情報を統合することで、エマージング企業DBとしては世界屈指の広範なデータカバレージを有することを特徴としている。何種類ものAIを多用して、それらのデータから抽出された”上澄み液”である、トレンドやインサイトを定期的に提供したり、Zuvaのアナリストが顧客企業の作業を必要に応じて分担することで、顧客企業の業務プロセス全体の効率化に貢献しようとしている。
日本を含めた世界のエマージング企業情報に強みを持つデータ・プラットフォームの運営等を行っています。企業が中長期的に成長し続けるために、オープンイノベーションや新規事業開発へのより一層のコミットが余儀なくされている現在の局面で、そもそも何をすればいいのかわからない、対象事業が絞り込めない、自社事業領域以外のナレッジがない、海外企業と連携できる適切な人材がいないなど、顧客企業が不足しているリソースに対して、各種プロダクトやサービスを用意しています。
少しイメージが湧きづらいところもあるかもしれないので具体例を挙げます。例えば、顧客企業が空気中からCO2を吸着する(以降DAC)ような新規材料の開発を行いたいとしましょう。自分たちではその領域の知見や技術的資本が十分にない場合、まず、その事業や技術に詳しい外部組織と連携を図ろうとしますよね。我々はそのようなニーズを抱える企業に対して、上流から下流までありとあらゆるサービスを提供しています。
我々が顧客から依頼を受けた時にまず最初にやることは、ロングリストを作ることです。顧客企業が探しているDACの装置や材料を開発している会社をZuvaが世界中から探してきて1枚のリストにまとめます。その一覧結果を顧客企業に比較評価して頂いて、もしリストに含まれる企業とコンタクトしたいということであれば、引き続きZuvaが窓口業務を担当し、顧客企業の代わりに現地の言葉で交渉して、提携や出資、M&Aなどの様々なタスクをZuvaが代行することができます。NDAの締結から、サンプル取り寄せ、簡易デューデリジェンス、PoCの設計から実行支援、M&A時の交渉まで、必要な部分のみスポットでプロフェッショナルサービスを提供しています。
これまで多くの企業は、こういった部分を外部の調査会社やコンサルタントにお願いしようとしても、実際には適切な方が少なくて見つからなかったり、見つかったとしても、結果が出るか不明にもかかわらず高額な報酬体系となっていてうまく活用できていなかったはずなんですよね。結果として、自分たちで試行錯誤してトライするものの成果が出にくかったり、依頼したコンサルタントの人的コネクションの範疇で外部企業を探してしまって重大な見落としに気づけなかったりと、「市場に”歪み”があって大きなビジネスになっていなかった」というのが我々の仮説です。Zuvaではその一連のプロセスを民主化して、ビッグデータとAIを活用することでリーズナブルな公正価格を保ちながらも、世界中から必要な情報や人・企業を引っ張ってきて、お客様がやりたいことの実現の支援をする、こんなことをやっています。
Zuvaができたのは2017年の12月なのですが、JSTという大学の研究室に資金を提供するエージェンシーから、起業前に3年間ファンディングを受けているのです。その時は京都大学の先生と一緒にグラントを獲得して、3年間で約1億円くらい頂いて事業化の準備を進めました。その時点からカウントすると、かれこれもう10年ぐらい関わっています。会社の登記も私が行いました。ただ、今とは立場が少し違います。今はZuvaの代表者も兼務していますが、創業当初は共同創業株主として関わっていました。
そうですね、当時はVCとして京大の技術を実用化するために、経営者候補や開発者をスカウトしたり、開発のパートナー企業を探したり、そこでいいパフォーマンスを出せるように内部に入ってプロマネをサポートしたり、伴走者として色々なサポートをしていました。Zuvaは当初、経営者を外部からお招きしていたのですが、良いところはありながらも、株主が期待するものと合わないところもあったんですよね。そこで一度、創業時から知っている我々VCが経営も担わせて頂くというプランを起案し、2022年4月に私が代表に就任しました。
私自身は、Zuvaを登記した前からお付き合いしていますし、色々なトライアンドエラーを見てきました。なので、顧客が何に困っているか、どのようなサービスを提供すれば売れるかに自信が深まっていたので、自分からも手を挙げて、事業計画を作り、株主の皆さんから許可をもらったという経緯があります。