徹底した顧客洞察がサービスを生み出す
SmartHR 宮田 昇始 「徹底した顧客洞察がサービスを生み出す」
SmartHR 取締役ファウンダー / Nstock 代表取締役CEO 宮田 昇始
2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に人事労務クラウド「SmartHR」を公開。2021年にはシリーズDラウンドで海外投資家などから156億円を調達、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。2022年1月にSmartHRの代表取締役CEOを退任、以降は取締役ファウンダーとして新規事業を担当する。2022年1月にNstock株式会社(SmartHR 100%子会社)を設立。
20代のころ、Facebook社(現 Meta社)の創業期を題材にした映画「ソーシャル・ネットワーク」を観たのがきっかけです。当時、IT業界に勤めていて、「この業界で働いているんだったら、いつか自分たちの代表作と呼べるプロダクトを作って勝負したい」という思いがありました。その時にこの映画を観て、映画の中で熱狂的なことをしている姿に憧れ、自分たちもいつかスタートアップをやりたいなと触発されました。 実際、一緒に映画を観に行ったうちの2人が、SmartHRの創業メンバーになりました。
また、20代中盤になると、起業する友人がちらほら出始めたのもきっかけの一つです。私の中で、「起業家はめちゃめちゃすごい人」のイメージがありましたが、身近な友人たちが起業し始めたことで、「自分でもできるのでは?」とハードルが一気に下がりました。
特に準備することはないかなと思っています。起業する気があれば、その日・その週のうちにしてもいいのではと思います。私の場合は見切り発車で、1人でも始めるぞという気持ちで、会社を辞めるところからスタートしました。
ただ、1人で始めるのは簡単なのですが、1人でやり続けることは容易ではありません。起業する前に、共同創業者を探すことはとてもオススメです。
スタートアップのどん底は「1人で耐えられる人はほとんどいない」と言われるほど苦しいものです。創業者同士が 「お互いを失望させるわけにはいかない」と考えることで、苦しい局面でもやり続ける強い理由になります。
新卒からずっとウェブディレクターをしており、ウェブサイトや、ソフトウェアを作ることは得意でした。それが、ソフトウェア事業で起業することに繋がりました。
また、 エンジニアやデザイナーの方と働く機会が多く、どのようなことを考えていて、どのようなことに気持ちが動くのかと理解していたので、その経験が、初期メンバーを集める時に活きたと感じています。
それはあまりなかったですね。 起業当初は今とは全然違うサービスをしていて、 他社を参考にすることは基本ありませんでした。
しかし、当時のビジネスはうまくいきませんでした。その後、何度かピボット(事業転換)を繰り返すことになります。SmartHRは世に出したもので言うと3つ目で、 世に出さずにボツにしたものも含めると、12個目でした。
SmartHRに関して言うと、ヒントになったものとして、当時自社で利用していたクラウドサービスがあります。例えば、請求書を発行するサービスや、webサイトやアプリケーションを作るときに使うBtoB用のサービスですね。それらは使っていて、とても便利だなと思っていました。
その経験から、こういうクラウドサービス、今でいうSaaSみたいなものを作るのは楽しそうだなと感じ、自分たちが事業化できるアイデアはないかなと探すように変化していきました。
既存サービスの使いにくいところを直そうという発想には、あまりなったことがないです。 というのも、スタートアップ業界では、「既存製品をコピーしても、3倍便利じゃないと使われない」という定説があります。 既存製品をコピーして、その使いにくいところを直したとしても、多分1.1倍ぐらいしか便利にできなくて、3倍便利にはならない。だから、基本的には、まだSaaSが入り込んでいないホワイトスペースに着目し、サービスがないが故に困っている人たちを探すところからスタートしました。