徹底した顧客洞察がサービスを生み出す
SmartHR 宮田 昇始 「徹底した顧客洞察がサービスを生み出す」
初期の頃、作ったサービスが全然使われないことがありました。 製品が顧客の課題を解決できている状態をPMF(プロダクトマーケットフィット)と言いますが、 「世の中のスタートアップの75%は、PMF前に死んでしまう」と言われています。PMFに至る前に諦めてしまい、会社ごとたたんでしまうケースがすごく多いです。
僕らも、PMFまでが非常に苦労しました。当初は、自分たちが作っているものが受け入れられるはずだと考えていて、机上の空論で考えたアイデアに頼りきりでした。しかし、これじゃうまくいかないなと感じ、やり方をガラッと変えることにしました。
そこで、当時流行りはじめていた、リーンスタートアップのやり方を素直に踏襲してみることにしました。まず、「こういう属性の人たちはこういう困り事があるはずだ」と課題の仮説を立て、その人たちに実際はどうなのかをヒアリングを通して確認し、課題があれば開発。なさそうであれば、また違う領域の仮説を立てて試していきました。
つまり、顧客の課題が本当に存在するかどうかをヒアリングを通して仮説検証し、そこからプロダクトを作り上げていきました。机上の空論で、自分たちがやりたいことからプロダクト作りをしていたものを、やり方を変えたことでSmartHRのアイデアに行き着くことができました。
顧客の課題を発見することにすごく苦労しました。単に課題を発見するだけでなく、マーケットの大きさを考慮し、より深くて広い課題を見つける必要がありました。
そこで、社会保険や雇用保険の手続きの煩雑さに目を付け、企業の人事部の方にヒアリングを行ったところ、大きな課題を抱えていたことが明らかになりました。
ヒアリングの際は、「困っていますか?」という聞き方ではなく、「毎月入社されるのは何人ですか?」「書類は手書きですか?」「誰が担当していますか?」「役所には自分で持っていきますか?」「片道何分ですか?」「何時間待ちますか?」と、事実確認を行いました。
結果、「役所で2時間待ちます」「毎月100人入社します」「100枚手書きしています」と言われ、素人目に見てもとても大変そうだと感じました。なかには、事実確認のヒアリングを始めた瞬間に、「もう聞いてくださいよ!」と、怒り始める人もいたくらいです。これはもう明らかに深い課題があるのが見て取れました。
このような、顧客の課題を発見することにとても苦労しましたが、諦めずに課題発見のプロセスを繰り返すことで、SmartHRにつながる深くて広い課題を発見することができました。