リスクを取ってでも、信念の実現に
株式会社はてな 代表取締役社長 / 近藤淳也
若い人たちから変化が起きないといけないですよね。ぜひ、自分の目で確かめるという作業を身につけてほしいです。 サービスを作っている側としては、より便利に使ってほしいという単純な想いがあります。
それ自体はいいことですが、残念に感じる部分もあります。それは、日本人が、Facebookの実名制を受け入れたのは、「世界のスタンダード」だからです。自分たちの意思で決定したのかと言われると、疑問が残ります。
「海外で流行ってるから、やってみよう。」の考え方だと、一生日本から世界に向けてサービスを発信することは不可能です。国内では、新しいことをやっても、否定的な捉え方しかされず、前向きな議論がされないからです。
本当は、日本からモデルを提示したい。はてなでは、それを信念に持って、サービス展開をしています。
サービスを利用していると、いちユーザーとして疑問を抱く場面に出くわすことがあります。その疑問と真剣に向きあうと、自然と課題が見つかります。後は、それを解決するための方法を考え、動きます。
はてなブックマークの例がわかりやすいでしょう。はてなアンテナやRSSを使えば、お気に入りのブログを登録できるようになりました。しかし、自分が知らない人が書いているおもしろい記事は溢れるほどあります。しかも、その人が常に面白い記事を書いていないと、より見つけにくいです。「人はだれでも奇跡のいちエントリーを書くことができる」というのが私の持論です。そこで「人単位」→「記事単位」に可能にしたのがはてなブックマークです。
ブログに興味がなくても、人気の記事を読みたいという人々の課題を解決した例だと思います。
新しい仕組みを出せないのなら、やる意味がないと思っています。そもそも、はてなを創業したのは、そういう想いで始めたからです。
どこかで流行っているのを、早く真似することには興味を持っていません。ブームや流行を追うよりも、自分があって便利なものを作ることを心がけています。かつ、世界にインパクトを与えたいですね。
それ以上の人生の使い道ってないと思うんです。アイデア×工夫×技術力でモノをつくり、そのモノで世界が変わったら、世界中の人の生活が変わったら、それ以上の人生の使い道はないと。
ネットの世界だと、その可能性があります。かつ、それが一番エキサイティングです。これは、意識しているしてない以前に、そのためにやっています。
25で起業しました。当時は気負っていませんでしたね。単純に「人力検索はてな」を作りたかっただけですから。
けど、一切プログラミングができなかったんです。だから、仲間を募集しました。しかし、誰も集まってこなかったんです(笑)。だから、自分でやるしかないと思って、勉強しました。勉強し始めてから、3ヶ月ほどで、サービスをリリースしました。
好きか嫌いかだと思います。プログラミングなんて、できなくてもいいと思います。そこに、その人の目的があるかが大切です。その人の目的を達成するために、プログラミングが必要ならば、必死になって勉強すればいい。勉強のための勉強ってつまらないじゃないですか。
私もやりたいことの手段がプログラミングだったので、必死に勉強したまでですから。
苦労した点はたくさんあります。2001年に創業したので、当時はネットバブルが弾けたときでした。なので、資金調達ができませんでしたね。それで、創業から半年で、資本金が尽きてしまったんです。「もう終わりだな。」と思ったのですが、諦めずに続けてみようと思って、今まで避けてきた受託開発を始めることにしました。それで食いつなぎながら、出た利益と空いた時間を新しいサービスに費やすという日々を、3年間過ごしました。