リスクを取ってでも、信念の実現に
株式会社はてな 代表取締役社長 / 近藤淳也
やはり、はてなダイアリーのヒットですね。ヒットに伴い、ユーザー数を獲得することができました。「10万人」この数字が、サービス単独の事業でやっていけるかどうかのひとつの試金になると思います。
それに関しては、回り道をしていますね。会社勤めをした経験がないので、組織のマネジメントには非常に苦労しました。
モノ作りができる経営者なら、だれもが突き当たる壁だと思うのですが、それは「自分でやった方が楽」なんですね。モノ作りのプロセスとして、作っては壊し作っては壊しのトライアンドエラーが欠かせないので、他人に任せてしまうとそこの意思疎通が欠落します。
プログラミングと人を動かすことは、全く異なる仕事ですね。
「壁にあたって乗り越える」このプロセスしか人の成長はないと思います。諦めないのは「何をしたいか」の目的があるからです。それは、私にとっては「新しいモノをつくって、世界中の人の生活を変えたい」です。
この目的を達成するためには、ひとりではできません。しかし、多数ならできる。それならば、プログラミングを学んだ時のように、今回の経営力も諦めずに、身に付けたいと思っています。
Facebookのマーク・ザッカーバーグも、Googleのラリー・ページもですが、モノ作りが専門で、なんとか経営の力をつける事例が多くなっています。経営が難しいですが、最後はモノを作れる人が経営をやるのが一番強いと思います。
なぜならば、最後の最後は「財務」ではなく「おもしろいモノを出せるか」で決まるからです。お金の話をしているわけではなく、世界を変える話をしているのですから。
後から後悔したくないからです。迷ったときは、エイヤッとやってみます。
最初は小さくていいんです。小学生の頃に、父親と自転車で隣町まで行きました。それが原点です。結局は、そこです。それを長くしていくことです。当時の私からすれば、自転車で隣町まで行くことは大きな挑戦でした。しかし、一回成し遂げると、それは出来た過去のことになります。
だから、高2の夏休みは自転車で三重から東京を20日くらいで往復できるようになりました(笑)。
普通しませんよね。昼は図書館で夏休みの宿題をやって、朝と夜は自転車を漕ぎまくるという生活をしました。達成できるかという不安は常に拭いきれませんでした。
しかし、今までの領域を超えて挑戦している自分が輝いていると実感できました。居心地がいい所にいても、成長はありません。内心怖かったのですが、興奮していたのを今でも覚えています。
この旅で高2にして年齢とのギャップを手に入れました。そのギャップから逃げきりたい、むしろ広げたいんです。
年齢でいうと、ここからが真の頑張りどころだと思っています。今の規模はスタート地点です。現在のはてなは、個人+αでサービスを展開していた時期を経て、組織でサービスを作り、動ける会社になってきています。今後、さらに組織を大きくする基盤が整ったといえます。
プロダクトをつくる+経営を同時に行うには、たくさんの失敗をしないとできないと思います。失敗を重ねてきて、ようやくここからが挑戦だと思います。
生きている心地がする、だと思います。これが「生きる」なんだと実感できます。
高2の自転車旅行の後、授業中ぼーっとして、「こんなことしてていいのかなあ」と自己嫌悪になる日々が多々ありました。その日々の対極にあるものを考えた時に「未知の領域への挑戦」という答えにたどり着いたんです。
リスクを取ってでも、信念の実現に向けてチャレンジしている自分がイキイキして見えると。それは起業以外でも、構わないと思います。ただ、僕にとっては、起業が最も「自己表現」できるモノなんですね。
何年もかけて、そして何十年もかけて、信念を実現しようと挑戦しようとすることは、ある種最高の自己表現です。それ以上の方法は、他のどこを探しても見つからないと思います。
起業は「日本一周」みたいなものだと思います。走り出せばいい。走り出してみると、これができない、ということはない。100メートル走で10秒出せとかの話ではありません。この動きができない、という事柄はありません。僕の日常を追って、真似できない動きってのは、おそらくないでしょう。だから大切なことは
①走りだすこと
②走り続けること
この2つに尽きると思います。
もちろん、落とし穴はたくさんあるので、あったら役に立つスキルはたくさんあります。それがあることで、トラブルは防げます。事前に対策をすることで、成功確率を上げるのも一つの方法でしょう。ただ、試行錯誤を繰り返していくのも、また一つの方法でもあります。そこは人それぞれのバランスです。
しかし、その人にも共通して言えるのが「走りだす」ことです。ぜひ、多くの若い人たちに走りだしてほしいです。