世の中にインパクトを与える
株式会社ロコンド / 田中裕輔
株式会社ロコンド 代表取締役。
2003年、一橋大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンに入社。
07年、26歳で同社史上最年少マネージャーに就任。
09年、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院にてMBA取得。
同年、DeNA Globalにおいてマーケテイング・製品担当上級副社長を経て、11年、株式会社ロコンドを共同創業し、現在に至る。
著書に、ベストセラー『なぜマッキンゼーの人は年棒1億円でも辞めるのか?』、『ガンガン行こうぜ!人生のイシューを解く「インパクト志向」』がある。
Twitter: @Yusuke_Tanaka
ロコンドは一言で言えば「買ってから選ぶ。」ファッション通販サイトです。今までのファション通販サイトだと、試着ができないため、なかなか買いにくいという方が多かったと思います。そんなお客様の不安を払拭するため、ロコンドは「送料無料、99日間返品無料(返送料も無料)」というサービスを日本で初めて開始しました。また、それ以外にもロコンドの「おもてなし」サービスとして、何でも相談できるコンシェルジュや無料の翌日お届け便などを提供しており、全てのお客様に「安心して楽しくお買い物ができる」ことを心掛けています。
現在は靴を中心にやっていますが、鞄も徐々に増えていて、売上の15%を占める程になりました。アパレルに関しても試験的に今年の9月から始めましたが、来年には更に拡大する予定です。
大学を卒業してから、選択したのがマッキンゼーという経営コンサルティング会社です。マッキンゼーに入社したのが2003年ですが、そこから4年ほど、小売や消費財を中心に経営コンサルタントをやりました。その後、2007年にマネージャーという職位になり、その翌月にMBA取得のためUCバークレーに行きました。シリコンバレーに近い場所だったのですが、アメリカに行く前は、あまり起業は意識していませんでした。しかし、知り合う起業家達がすごく熱いものを持っていて、お金を稼ぐだけではなくて、本当にアメリカや世界に「インパクト」を与えようという強い志をもっていました。それに感銘を受け、僕の考え方も徐々に変わっていったんです。
そんな経験を経て、僕自身、一度、アメリカで起業をしました。ソーシャル・アプリを作って、数十万人の会員を集めたのですが、その中で起業の難しさと、一方で楽しさというものを経験でき、モノを世に出していくという楽しさを味わいました。ただやはり、一番の難しさは「資金繰り」にあると感じました。
お金の問題もあって、卒業後は一旦、マッキンゼーに帰るつもりでしたが、当時はリーマンショックの影響もあり、あまりマッキンゼーにも仕事があるような状況ではありませんでした。そのため、MBA1年生の時からインターンシップをしていた「DeNA Global」というDeNAのアメリカ支社に頼み込んで、マッキンゼーに所属しながら、半年間限定の「レンタル移籍」の正社員という形で雇っていただきました。その後、マッキンゼーのコンサルタントとして復帰してから1年後、改めて起業の道に進みたいと思っている時に出会ったのが「ロケット・インターネット」というドイツのベンチャーキャピタルです。一緒にやらないかという話があって、当時の創業メンバーと一緒にロコンドを始めたという感じです。
強みでいくと、まず1つ目が最高の「おもてなし」サービスでしょう。ロコンドのおもてなしを通じて、全てのお客様に「ほっこり」して欲しい。この真の「お客様志向」が会社全体に根付いており、マニュアルやルールに頼ることなく、全社員がお客様の目線で考え、実行していることがロコンドの強みだと思います。
二つ目は、これをやろうという時の「スピード感」は、他社と比べても圧倒的に早いと思います。「最高のおもてなしを通じてお客様に『ほっこり』して頂く」。この価値観が基盤にあるからこそ、判断に迷うことなくスピーディーに物事を決めて実行できるわけです。
三つ目は、お客様だけでなく、ブランド様やメーカー様、卸問屋様とも「誠意のあるコミュニケーション」を心掛けてきたからこそ、特に、靴の品揃えは「日本最大級」と言える程、かなり充実して来ました。ロコンドの倉庫には現在、約15万個の靴とバッグが入庫されていますので、10代から60代まで幅広いお客様の需要に応えられる品揃えになっていると自負しています。
一方で、今後の改善点で言えば、まだまだ知名度を上げていかなければなりません。当初はテレビCMなども実施しましたが、基本的には僕たちのビジネスモデルは「広告費用を最小に抑え、その浮いた費用を「買ってから選ぶ。」送料無料・99日間返品無料サービスや、何でも相談できるコンシェルジュなどの『サービス』に充て、口コミでファンを増やしていく」形なので、他社と比較すると知名度はまだまだです。ですが、無理に焦ることなく、僕たちは僕たちのやり方で地道にお客様のファンを作っていければと思います。