『サイバーエージェント子会社社長の告白』
【第13弾】
AWA 小野社長
「折り合いのつかないものを抱える」
〜大きなリングに立つために、目の前のリングに全力を出す〜
『サイバーエージェントのグループ会社の社長インタビュー連載企画:第13弾』
AWA株式会社 小野 哲太郎
名古屋大学に通っていました。
大学3年生までは、勉強はそこそこに、バイトをし、サークルに行き…という、一般的な学生で、それほど活動的になれずにいました。
ですが大学3年生の時に、慶應や東大に通っている高校の同級生と、久しぶりに会った時に、「自分は、取り返せないぐらい遅れている」と感じました。
例えば、友達は、インターンをがんがんやって社会人のように仕事をしていたり、海外留学をしたり、自分で学生団体をやっていたり、起業している友達もいました。
一方、当時の自分は、社会人になったら本気を出せばいいやくらいの気持ちでのらりくらり過ごしていて、全力で動いていた友達を見て、強烈な焦りを感じたのを覚えています。
誰もが知る大企業を数社受けていた自分でしたが、ひょんなことからサイバーエージェントを知り、説明会で当時まだ32歳の藤田の話を聞きました。
その中で藤田は「大企業にいる人がすごいのではなく、大企業を創り、育て上げた人がすごい。自分たちは21世紀を代表する会社を創る」と、壮大なことを淡々とした口調で話していたのを覚えています。
大きな目標を掲げつつも、足元のことをしっかりやりきるという、藤田や会社自体が持っている性格みたいなものに惹かれていきました。”ドリーマーにしてリアリスト”といった感じでしょうか。
2006年は確かサイバーエージェントが名古屋で初めて説明会を開いた年なので、とてもラッキーでした。
もう一つは、今思えばというところではありますが、それまでの”社会的な尺度ばかり気にする人生”みたいなものを振り払いたかったというのもあったと思います。
それまでの私の考え方は、自分が行ける学校の中で一番偏差値の良いところに行こうとか、周囲から見て一番良いとされているものを選ぼう、というような”社会的な尺度”が自分の選択基準の大部分を占めていて、
「ただやりたいことだから」というように、シンプルに心が惹かれたからという理由で選択をしてきませんでした。
みんなが知っているような人気の大企業に行けたらいいなと思っていた自分にとって、サイバーエージェントはシンプルに心が惹かれた存在でした。
育ての親である藤田社長は当然ですが、エイベックス株式会社の代表取締役会長CEOの松浦さんを尊敬しています。
松浦さんは、エイベックスのタグライン(企業理念)“Really!Mad+Pure”をそのまま体現しているような方です。
“Really!Mad+Pure”とは、
“ともすれば今は非常識で、他人から「おかしいんじゃないの?(Mad)」と思われることも真摯(Pure)に追い求め、世の中にマジで!?(Really!)を届け続ける“ということです。
松浦さんは、常識の枠にとらわれず、誰にどんなことを言われようと、信じたことを実現しようとされる大胆不敵な方だと感じます。
一方で、目を皿のようにして課題を探し、小さな問題でも逃さないような緻密な方だとも思います。AWAの立ち上げの際に、サービス開発を担当していた自分は、毎日のように松浦さんから指摘を頂いていたのですがもう逃げたいと思うほどでした(笑)。でも自分の甘さをとても感じる経験になりました。
そういった2面性を持っているからこそ、みんなの心に火をつけるエンターテインメントを生み出せるのだと思います。
クリエイターとしても、経営者としても尊敬しています。
松浦さんと話した中で印象に残っているのが、
「仕事を進めるうえで、どういうことに気をつけているのですか?」というたぐいの質問をした時、
一言「譲ること」とおっしゃっていたことです。
経営者は、「我が道を、何と言われようとも突き進む」という力強さと同時に「過剰に自分の利益を追い求めすぎず、他者に譲ることも大切」という姿勢を学びました。
実際に「AWA」で、松浦さんの近くで一緒にお仕事をさせていただいて、「他者に花を持たせる」精神がすごく強い方だと感じます。
藤田と松浦さんの関係も、自分から見るとそのように感じることが多く、
そうやって、相手に譲ることを意識しているからこそ、信頼関係を築くことができるのだと思います。